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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

新傾向問題の背景にあるもの

2005/06/16(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 小学校入試において、学力に関する新しい傾向の問題は、大きく二つに集約することができます。一つは「論理的思考力」が求められていること、もうひとつは、話す力・聞く力を統合した「言語力」がどれくらい身についているかが求められているということです。この二つに関する問題が最近良く出され、また内容も多様化しています。小学校入試が、知能検査の問題をベースに作られていた時代には決して出されなかった問題が、いまや主流になりつつあるのです。その点をしっかり踏まえた家庭学習をしなければ、有効な対策にはなりません。

 ところで、言語表現力に関する問題はどのような形をとって出されてくるのでしょうか。
 お話作りに代表される「話す力」のテストは、個別テストを実施している数校でしか出来ません。学習院や青山・成城などの学校では、昔から話す力・説明する力を重視し、それに関するテストを実施してきましたが、ペーパーテスト中心のその他の学校ではそれが出来ません。ですから一つの方法として、行動観察の中で相談させたり、発表させたりすることを通して、それぞれの子どもたちの「話す力」を見ようとしています。また「聞く力」に関しては、「話の内容理解」だけでなく、ペーパー設問の中では、普段の会話文とは違ったやや難しい言い回しをして、そうした表現が理解出来ているのかどうかを見ているのではないかと思われる質問が目立ってきました。そこには、出題者の次のような意図が見え隠れしています。

自分が使えないような言葉(表現)は、聞いても理解できるはずはない

 幼児期の言語生活に不安を持つ学校側が、「普段から、しっかり会話していますか」というメッセージを、子育てをする保護者の方々に送り続けていると解釈すべきです。聞き取りが出来ないのは、単に態度の問題ではなく理解力の問題であるわけですから、それがわかるかわからないかは、言語の問題ではなく論理の問題だと思います。このように考えてくると、最初に述べた2つの新しい出題傾向は、実はひとつの問題でありつながっているのです。つまり、言葉が本当に理解できるかどうかはそれを支える論理が身についているかどうかによって決まってくるのです。ですから、よくテスト結果を見て、お母さん方から「うちの子は聞きとりが弱いんですが・・・」という相談を受けますが、「それは、態度の問題ではなく、理解力の問題です」とお答えしているのは、以上の理由によるものです。「言語と論理」・・・この問題は昔から研究のテーマになってきたことですが、基礎学力を考える上でどうしても避けて通れない問題であるのです。それが、入試問題にまで影響しているということは、出題する学校側も、この問題に真剣に取り組んでいる証拠にほかなりません。

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