ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

一枚のペーパーを大事に

第145号 2008/04/04(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 4月に入り、今年秋に受験を控えた子どもたちも、年長クラスに進級しました。幼稚園や保育園では一番上のお兄さん、お姉さんになった意識から、自立心が高まり物事に積極的に取り組んでいくようになるはずです。特に年長の夏休みを経て、学習面でも大きく成長するはずです。

こぐま会の受験クラスは、この4月から「ステップ4」にはいります。この「ステップ4」は5月半ば過ぎまで続きますが、ここまでが基礎学習の段階で、入試問題の8割は、この「ステップ4」までの学習内容に絡んで出てきます。応用問題の基礎もこの「ステップ4」までの内容に関連していますので、ここまでを完璧に理解していれば、平均点は確実に取れるはずです。難しいことを学習するばかりが受験対策ではありませんから、この「ステップ4」までを繰り返し学習することが大事です。ただ、完璧にといった意味は、通り一遍の学習ではなく、どんな問われ方をしても答えていけるだけの柔軟な思考力が必要だということです。それはペーパー学習のみで身につくものではありません。具体物やカード教材を使って繰り返しトレーニングし、答えの根拠を自分の言葉で説明できるようになるまで思考力を高めておかなくてはなりません。

試験問題を作る学校側は、振り落とすための難問奇問を考えているわけではありません。難しい問題であっても、学校側は正当な理由があって問題を作成しています。その意味で、子どもたちにとっては大変なことですが、最近の問題は、よく練られた良質の問題だと思います。問題を作成する試験委員の想いは、「機械的なトレーニングによって解けてしまう問題は極力出さないようにしたい」ということです。そうして作られた問題は、子どもたちにとっては「初めての問題」に映りますが、関連した問題はその学校で過去においてたくさん出されています。ですから、指導者はその点を見抜き適切な指導をしなくてはなりません。

つまり、出された問題を解かせればよいのではなく、その問題を通して「どんな思考力が求められているのか」をつかみ、そうした考え方を育む授業を組まなくてはいけません。私が会員の皆さんにいつも強調していることがあります。「何千枚とペーパートレーニングを積んでも、同じ問題はまず出ないでしょう。しかし、形は違っても問われている思考力は共通していますから、その基礎をしっかり固め、どんな問われ方をしても対応していけるだけの力をつけておかなくてはなりません。そのためには、一枚のペーパーを大事にし、そこで求められている思考力を徹底してトレーニングすることです。答があっていればよいのではなく、考え方がしっかり身についているかどうかを確認しながら進めてください。」

事物教育をペーパー教育と比較し、簡単すぎると評価する人たちがいますが、とんでもないことです。子どもの認識能力は、物事に働きかけて、試行錯誤を繰り返すことによって身についていくものです。教え込みの典型であるペーパー主義の教育には限界があることは多くの学者たちによって証明されてきました。幼児期の子どもたちの特殊性を利用して、経験がなくても、たたきこめば身につくと錯覚している人たちがあまりにも多いのに驚きます。

これからの入試は、物事を論理立てて考える、柔軟な思考力を見る問題が必ず増えてくるはずです。そして、当分の間、言語領域に関する問題に大きな変化が出てくることが予想されます。国語の力を前面に押し出してきた新指導要領のもと、今学校の現場では、国語に関する教育内容が大きく変わろうとしています。独自の教科書等も準備されはじめています。この動きが、小学校入試に影響しないはずはありません。そうした動きによって作成される新しい傾向の問題が、合否のポイントになっていくと思います。

PAGE TOP