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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

集団活動の教育的意味

2005/05/13(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 先日、指定校雙葉クラスで「紙芝居作り」を行いました。これは、雙葉小学校の2日目の試験に行動観察として課せられる「相談する」経験をつむための活動です。紙芝居作りが実際の試験に出たわけではありませんが、子どもが集中して楽しく取り組めることと、活動を通して、さまざまな力がついていくと考え、数年前から実施しています。

 長いお話を聞かせ、その話に基づいて、4~5人のグループでひとつの紙芝居を完成させるというものです。紙芝居ですから、1グループの人数をもう少し多くしたほうが、場面が増えていいのですが、子供同士が意見を出し合って相談し、ものごとを決めていくのは4~5人ぐらいが一番いいと考え、その人数で実行して来ました。1クラスに、グループが3つほど出来ることになりますが、グループ間でも切磋琢磨できるように雰囲気作りをして取り組ませました。

 この紙芝居作りは、相談をしてひとつのものを完成させることに目標をおいた活動ですが、具体的な活動を細かく見ていくと、完成させるまでの活動の中に小学校入試で求められる、さまざまな能力が必要になってきます。

  1. 長い話の内容や場面の転換を正確に理解する
  2. 話の場面を絵で表現する(絵画化)
  3. 順番を決めたり、描く場面の調整をしたりと、常にグループの一員として他との調整をしなくてはならない
  4. 登場人物が身につけているものなどの同一性や、場面の一貫性を考えざるを得ない

 実際の活動では、意見のぶつかり合いや、さまざまなトラブルに遭遇します。描く順番はジャンケンなどで決めても、どの場面を描くかまで話し合いが出来ず、場面に偏りが出てしまったり、登場人物を人間と考える子と、動物を擬人化して捕らえる子が出てきてしまったり、また登場人物が身につけているものに同一性がなかったり・・・という具合です。しかし、さすがに年長になると、そうしたちぐはぐさに気づき、登場人物を動物にするか人間にするかの話し合いを途中でしたり、登場人物の身につけているものが違うと紙芝居としてはおかしいことに気づきみんなで相談して直したり、各場面の割り振りをしなおしたりと・・・紙芝居作りの過程で自分が果たすべき役割と他者との調整を考えていくようになっていくのです。こうした経験は、集団活動でこそ可能な経験であり、雙葉小学校が2日目の入試で行っている「相談する」ことの教育的意味はとても大きいように思います。

 今塾業界では「個別指導」が花盛りです。確かに、能力に応じた指導はとても大切ですが、だからと言って、集団授業の意味がなくなったわけではありません。特に、幼児期の場合、真似たり、相談したりする教育的意味は大きいと思います。今回の「紙芝居作り」で見られた子供同士の意見のぶつかり合いはとても大事です。それを解決していく過程で、生きた学力が形成されていくのではないかと思います。教育がすべて個別化へと収斂していくとしたら、「学びあう」教育のダイナミズムが失われてしまいます。

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