■ 第5回 「会話してコミュニケーションを図る」
第5回 2013/1/11(Fri)
こぐま会教務部長
廣瀬 亜利子
 お正月明けの初めてのクラス、今日から新しく数人加わって、14人全員元気に揃いました。
「あけましておめでとうございます!」と私が声をかけると、
私より一層大きな声で「あけましておめでとうございます!」とかえってきました。
皆きっととても良いお正月を過ごすことができたのでしょう。一人ひとり、どの子も幸せな気持ちに満ちあふれたとても良い表情をしていました。
「みんな元気でしたか?」 「は〜い!」
「どこか行ったの?何か楽しいことがあったの?」
「あのね、」と
全員が一斉にどこに行ったとか、誰と会ったとか、何をしたとか、夢中になって話し始めました。全員が人よりも大きな声で話して何とか私に聞いてほしいという気持ち満々で、教室中がものすごい大音量になりました。
「わかった。みんなの話ちゃんと聞きたいから、一人ずつお話してくれる?」と言って一人ずつ冬休みに楽しかったことなどを話してもらい、私の質問にもハキハキ答えてくれました。

はじめから堅苦しく一人ずつ受け答えさせるのではなく、意図的にまずは全員に向けて一斉に声がけすること、ちょっとしたことなのですが、実はこれが意思伝達力を高めるための、単純ながらとても効力のある方法です。
私から声をかけられた子どもたち一人ひとりにとっては、私の質問に答えたい、聞いてほしい、ところが他の子どもたちも隣で同時に答えているので、自分の声が他の子の声で消されそうになる、これでは先生に聞こえない、もっと大きい声で話さないと、というように、子どもたちの中で無意識のうちに何とかして相手に自分の話を伝えたいという強い気持ちが働くのです。このようにワンステップ踏むことで、普段あまり人前で話すことが得意でない子どもにとっても、自然にほかの子たちにつられて、不思議なぐらい普通に話せてしまうのです。

今週のテーマは「話す・聞く - 会話してコミュニケーションを図ること」でした。
「コミュニケーション」と言ってもまだ若干5歳の子どもたちですから、高度なものを要求しているわけではありません。‘communicate’ ということばの意味に従って、「自分の意思を伝達する力」「ことばを交わして理解し合う力」を少しずつ育てていきたいというのが私の思惑です。すでにできていることは更に伸ばし、欠けていることを何とか身につけさせたい、という強い気持ちが思惑の背景にあります。

このテーマにおいて、5歳ぐらいの子どもたちにとって毎年ほぼ確実に共通課題となる点が2つあります。ひとつは、「人に質問してみること」 — 一般的にこの年齢の子どもたちの多くが、誰かに、特に幼稚園、保育園の先生、周りの大人たちから聞かれたことには答えることはできるのですが、人に質問してみることは苦手なようです。そして、質問された相手が子どもの場合、答えることはできたとしてもなぜか目線は聞かれた相手ではなく、そばにいる大人である場合が多いのです。
もうひとつは、「人の話をしっかりと聞いてあげること」 — 人前で堂々と話すことができても、人の話に興味がないので聞いてない、というのもこの年齢の多くの子どもに見られる典型的な光景です。

相手がいてはじめて会話によるコミュニケーションが成り立つわけですが、そのような理屈を言っても通じる年齢の子どもたちではありません。クラスの前半、冬休み楽しかったことをひとりずつ話してもらったり、私の質問に答えてもらっている最中に、ざわざわと声が1〜2度聞こえてきたので、「自分の話を聞いてもらえると嬉しいでしょ?だからお友だちのお話もちゃんと聞いてあげるとお友だちもきっと嬉しいわよね?」とても素直な子どもたちなので、すぐに改善されました。そこですかさず登場させるのが、私が持っている最強の武器 - 「褒め攻撃」です。「お友だちの話をちゃんと聞いてあげることって、とてもむずかしくてあまり普通はできないことなのに、先生がちょっとお話したらすぐにできて、みんなお姉ちゃまになったわね〜!すごく素敵なお姉ちゃまよ、みんな!」皆、本当に穏やかなとても良い表情をしていました。この時を境に今後、人の話が少しずつ自然に耳に入ってくるようになるでしょう。人の話が自然に聞こえてくるということは、「人と関わろう」「人のことを知りたい」という、自分以外の人の存在を受け入れ始めた、あるいは興味を持ち始めたということの表れです。正にcommunicateしたいという意思が芽生えたということです。現に、クラスの後半に「じゃんけん列車」をした際に、ルールを少し変えて負けた人が勝った人に何か質問をすることにしたのですが、皆驚くほど上手に質問することができました。
これをきっかけに、会話だけにとどまらず、日常生活のあらゆる場面においてコミュニケーション能力が磨かれていくであろうと、大いに期待しています。
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