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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

受験における父親の役割

第90号 2007/01/26(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 先日ある雑誌の取材を受け、家庭学習における父親と母親の役割分担についてお話しました。「できるだけ具体的に」という事前に受け取ったメールを前に、これまでの指導経験を思い起こしながら、考えをめぐらしていました。しかしどう考えても、算数はお父さん、国語はお母さん、理科はお父さん・・・というように機械的な割り振りは、あまり意味がないという結論しか出てきません。記者の方の質問につながっていかないのです。算数をどちらが教え担当するかは、それぞれのご家庭の事情によって決めれば良いし、お父さんのほうが論理的だから算数は父親が・・・と考える必要は全くないわけです。お母さんだって算数が得意な家庭はあるはずですから・・・。
 取材当日もそうしたことを伝え、記者の方も理解してくれました。その上で、父親と母親の家庭学習における役割は何かを、自分の経験を踏まえてお話しました。

 女性の社会進出に伴い、育児も子育ても父親が参加しなくては家庭生活が成り立たない時代になってきました。私は団塊の世代の一人ですが、結婚当初から共働きでしたから、男が家事を手伝うのは当然だと考えていましたし、子育てにおいても役割を担うのは当然だと考え実行してきました。私の授業でも、買い物ごっこをするような場合、毎年「お母さんが病気でごはんを作ることができないときはみんなどうするの」と子どもたちに聞いてみます。すると、最近ではおばあちゃんがきて作ってくれるという答え以上に、「お父さんが作ってくれる」と答える子が増えています。6~7年前とはだいぶ違って、家事を手伝うお父さんの姿が、そうした子どもたちの答えからも想像できます。とても良いことだと思います。

 では、家庭学習における父親の役割とは何でしょうか。特に、受験を控えた家庭学習の中で、父親の果たす役割とは何でしょうか。私たちは、合格に向けた受験対策の中で、父親の果たす役割の重要さに気づき、10年以上前から「父親セミナー」を開いたり、昨年は「女子校合格フェア」のテーマに「合格のキーパーソンは父親です」を掲げ、いろいろな催し物を企画しました。父親の果たす役割について、私たちは次のように考えています。

  1. まず受験そのもの、あるいは学校選択において十分話し合い、父親と母親の意見を一致させておくこと
  2. 受験に関する正確な情報を持つこと
  3. 子どもの日々の生活を、しっかり把握しておくこと
  4. うわさに惑わされやすい母親を十分サポートすること
  5. ペーパー学習も定期的に担当すること
  6. 子どもの間違いの原因を冷静に分析してあげること

 まだまだ細かい点ではたくさんありますが、私はお父さんが受験対策に協力することで一番効果が出るのは、お母さんの精神状態が安定し、ゆとりを持って良好な母子関係が築くことができることだと思っています。子どもの側からみて父親と学習することの良さは、そのこと自体がとても新鮮に映り、母との関係だけよりも気分を変えて学習に取り組むことができる点です。

 父親が何を教えるかが問題ではなく、父親が参加することに大きな意味があるのです。つまり、父と子・父と母・母と子・そして父と母と子の三者の関係が出来上がることによって、相乗効果が生まれるのです。特に、さまざまな噂に足元をすくわれそうになったり、また時には「いじめ」すらも起こりがちな厳しい環境の中で、相当のプレッシャーにさらされ、ゆとりをなくしがちな母親の立場を考えると、父親の一言が支えになり、お母さんが、「これでいいんだ」という自信とゆとりを持って受験対策に望むことができるはずです。実際2007年度の結果を見ても、お父さんが積極的に参加されたご家庭は、第1志望校に合格された方が多いように思います。やはり「キーパーソンは父親である」と確信しています。

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