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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

教え込みの学習では、論理は身につかない

第862号 2023年6月30日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 4月から始まった応用段階の授業(セブンステップスカリキュラム step5~6)もあと1週で終了し、夏休み前までにすべての単元学習が終了します。これまでの学習内容をご覧ください。

step5

5-1未測量5逆対応
5-2位置表象5四方からの観察(2)
5-3数510の構成、交換
5-4図形5展開図、線対称
5-5言語5言葉あそび、短文づくり
5-6生活 他5法則性の理解(2)(推理)

step6

6-1未測量6重さのつりあい
6-2位置表象6地図上の移動、飛び石移動
6-3数6数の増減、数のやりとり
6-4図形6重ね図形、回転図形
6-5言語6話の内容理解、お話づくり
6-6生活 他6社会的常識(常識)

どの単元も難しい内容ですし、入試問題の多くがここから出されています。この応用段階の学習の理解が進まない場合は、ステップ1~4までの基礎段階の学習内容をもう一度復習し、その理解の上に、ここに掲げた応用段階の課題に取り組んでください。子どもが物事を理解する道筋には必ず順序性があります。それを考えずに過去問ばかりに取り組んでも論理的思考力は身につきません。基礎と応用といった当たり前の順序を無視しては、新しい課題に対して挑戦できる応用力は身につかないのです。「過去問を10回繰り返して覚えこんでしまえば合格できる」というのは全くの間違いです。こうした発言は、子どもが物事を理解する道筋をわかっていない素人が、指導力のなさを隠ぺいする典型例です。子ども自身が自分で問題を解き、どんな質問がなされても、自分で考え、判断できる力を養わなければ合格はできません。そのためには、まず「教え込みの教育」をやめるべきです。子どもが自分で考え、答えに到達できるように、基礎から応用への順序性をしっかり守って学習することが大事です。

教え込みの指導でわかったつもりになることが一番厄介なことです。本当にわかっているかどうかを確かめる一番有効な方法は、「なぜそのような答えになったの?」「どう考えたのか説明して?」と問いかけることです。ここでしっかり自分の言葉で説明できるようであれば理解は本物です。教え込まれてわかったつもりになっている子は、この問いかけに何も答えることはできません。挙句の果てに「お母さんがそうやりなさいと教えてくれたから・・・」となるのです。最近こうした「説明できない子」が大変多くみられます。これを克服するためには、答えがあっていても間違えていても「どう考えたの?」と問いかけ、考えの道筋を言語化させることが大事です。どんな説明ができるか、その説明の仕方によって子どもの理解度は測れます。

もう一つ有効な方法があります。子どもに先生の役をしてもらい、保護者の皆さまが答える側に回ることです。「お母さんもやってみたいから問題を出してくれる?」と問いかけ、子ども自身にペーパーを見せて問題を作らせるのです。問題の意味が本当に分かっていれば、自分が解いた問題を参考に、類似の問題を作れるはずです。子どもは先生役が大好きです。私は、授業の中でも「先生もやってみたくなったので問題を作ってくれる?」と問いかけると大勢の子どもたちが挙手し、真剣に考えていい問題を作ってくれます。普段の一方通行の学習でマンネリ化してしまうようでしたら、こうした方法も取り入れてやってみてください。子どもの目の輝きが違ってくるはずです。

もう一つ大事なことをお伝えしましょう。「最近聞き取りミスが多く、聞く力が身についていないのではないかと心配です」という質問が多く寄せられています。1回の指示を正確に聞き取る力は、合否に絡む大事な観点です。本当に聞けていないのかどうかを確かめるために、問題を読み上げたら即座に「お母さんがやってみたいので、今の問題もう一度言ってみてくれる?」と問い返してください。そのときしっかり言えるかどうかで、質問の意図を聞けているかがわかるはずです。理解できていなければ「復唱」はできません。

以上、述べたように、子どもに一方的に質問を投げかけるだけでは理解力は深まりません。問題を復唱させたり、考える過程を説明させたり、先生役をさせたり、そうしたいろいろな視点から学習することによって本物の理解が身につくはずです。夏休みの時間を有効に使うために、学習方法を今一度振り返ってみてください。子どもの主体的な学びを育てるためには、ちょっとした工夫が必要かもしれません。


 こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

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