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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

柔軟な思考を育てるために

第765号 2021年4月23日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 先日行われたKOGUMAひまわり会 室長特別講座の「志望校選択チェックテスト」において、ペーパー10枚の他に次のような問題を出しました。

1. 同じ広さの庭づくり
上の水色のお部屋を見てください。マスの中を緑色に塗ってお庭の形を作りました。この庭は真四角3つと三角2つでできています。
  • お日様のお部屋を見てください。同じように真四角3つと三角2つを使って、同じ広さで違う形のお庭を考えて緑色で塗ってください。1つできたら別の形を考えて、もう1つ空いているところにかいてください。 ※形のかき方に注意があります。右上の「だめな(れい)」のように、形をくっつけずに角と角をくっつけたり、形がずれたりしないようにしてください。また、見本の形が回転したり、ひっくり返っただけで、同じ形にならないように注意してください。
  • 今度は雲のお部屋に、三角は使わないで同じ広さのお庭を考えて緑色で塗ってください。1つできたら別の形を考えて、もう1つ空いているところにかいてください。形のかき方の注意は先ほどと同じです。

これは未測量における「個別単位」の考え方を問う問題で、真四角や三角を1単位と考え、同じ広さの庭を作るという問題です。左の問題の意図は以下の2つです。
  1. 何を1単位としてみるか
  2. 形の違う庭を2つ以上作ることができるか
これに加え、右の問題の意図は少し難しくなりますが以下の通りです。
  1. 三角2つを合わせて、真四角一つ分の広さと考えることができるかどうか

難しいのは3の観点ですが、わたしたちが注目しているのは2の観点であり、答えが一つでないような問題にどのように取り組むことができるかどうかです。選択肢の中から選ぶ問題ではなく、自ら考えて答えを導き出す課題であり、その上、違う考え方を求めています。
こうした問題にみられるように、「答えが複数ある問題を自ら考え、作業し表現する」ような能力が、これからの試験で求められてくるのではないかと考えています。それは幼児だけでなく、すべての学年においてそうだと思います。答えが一つしかない「ピクチャ―パズル型学力」ではなく、答えがない(答えが複数ある)「レゴ型学力」というのは、こうした問題だろうと思っています。そこで本当の学力が身ついているかどうかが問われます。先日の日曜日に行った講座『作業を通して「考える力」を伸ばす』では、次のような問題に挑戦してもらいました。

2. 組み合わせ(8の構成)
お祭りにはいろいろな遊びがあります。輪投げはチケット1枚でできます。ヨーヨー釣りは2枚、金魚すくいは3枚です。またボーリングは4枚でできます。
太郎君は8枚のチケットを持って、何をやろうか考えています。お父さんとの約束は、8枚のチケット全部使うことと、同じものをやってもいいけれど、全部で3回しかできないことでした。
  • 太郎君はいろいろ考えて、例のところにあるように、輪投げを1回と金魚すくいを1回とボーリングを1回やって、8枚全部使いました。他にまだ遊び方があるでしょうか。考えてください。そして遊ぶところに遊ぶ数だけ、青いをかいてください。
    他にも遊び方があれば、その下のお部屋にもかいてください。

この問題は、8の構成に関する問題で、自分で組み合わせを考える問題です。2つか3つの数を合わせて「8」にする課題を、お祭りの遊び方として子どもたちに考えさせる課題ですが、これも選択肢はありませんし、子どもたち自身で考えなくてはならない課題ですから、相当厄介な課題です。しかも、答えが複数あるという点で、視点を変えて考えることができるかどうかが問われます。予想した通り、全問正解した子どもは1人もいませんでした。こうした視点を変えて発想できる力は、ペーパーを使った学習よりも、おそらく生活や遊びの中で身についていくのだろうと思います。ですから問題の設定も、お祭りで使うチケットというような極めて具体的な生活を思い起こすようになっているのだと思います。抽象的な数の扱いとしての「8」ではなく、生活の中の「8」として数を扱っているのです。

テストにおいても講座においても、他のペーパーはほとんどできているのに、こうした問題が解決できない子どもが目立ちます。ペーパー学習を相当積み上げてきた子どもたちでも、こうした答えが複数ある課題を自分で考えることができないのです。果たしてこれで本当の学力が身についているといえるでしょうか。今、世の中全体で求められる「生きた学力」とは、こうした問題を解決できる本物の力です。そこには、視点を変えてものを見る思考法が求められています。これからの小学校入試でもこうした問題が増えていくはずです。 答えがひとつではない課題に対し、自分の考えを表明できる本物の力を身につけるために、ペーパー主義の学習を見直さなければなりません。

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「 幼児期に大切な10の思考法 」
2021年5月8日(土) 10:00~11:00 LIVE配信!(無料)
【講演内容】
1. 今なぜ幼児教育に関心が集まるのか
2. 幼児教育に新しい風を - こぐま会の実践 -
3. 生活や遊びを通して「考える力」を育てるために
※ご視聴にはお申し込みが必要です
※後日録画配信はありません

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