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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

合格のための室長教育講演会を終えて

第559号 2016年12月16日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 6月から始めた、年少・年中向け「合格のための室長教育講演会」の最終回を12月11日に行いました。7回連続の最終回である今回は、「聖心・雙葉に合格するために必要なこと」と題して行いました。すでに今年の入試はほとんど終了していますので、今年出題された聖心女子学院初等科・雙葉小学校2校の問題分析も踏まえ、来年秋の入試に向けた取り組みのあり方をお伝えしました。最終回にこのテーマを取り上げるのには理由があります。

  1. こぐま会からの受験者が一番多い学校である
  2. 小学校受験で出題される新しい問題・工夫された問題の多くが、この学校からはじまっている
  3. この学校で出された問題が他校に波及する傾向がみられる。その意味で受験問題づくりのリーダー的な役割を担っているため、この2校の問題を分析し何が問われているかを知って見ておくことは、仮にこの学校を受験しなくても、受験生にとって意味がある

こうした想いを持って最終回の講演を企画しました。70名定員の申し込みが受付開始1時間で満席になるほど、この学校に対する関心が強いことがうかがえます。講演会は以下のような内容で行いました。

合格のための室長教育講演会
「第7回 聖心・雙葉に合格するために必要なこと」
1. 今年の結果から見える、学校の方針転換
2. 聖心の問題に見る問題づくりの工夫
3. 雙葉の問題はなぜ難しいのか、どこが難しいのか
4. 女子校の代表として、この2校の問題傾向から何を学ぶべきか
5. 合格のために必要なこと

今年出題された問題を紹介し、そこでいったい何が問われているのかを1問1問分析し、それがまた今後どのように発展していくのかをお伝えしました。今年の聖心は問題数が増え、雙葉の問題は易しくなりました。雙葉の方は平均点がかなり上がったと見られます。最近の流れを踏襲し、満点主義に変わりつつあるのでしょうか。とすると、今後の新出問題づくりは、聖心が担っていくことになるでしょう。聖心は、今年は常識問題が増えた結果、枚数が増えました。昨年度の1.5倍の枚数になったということを考えると、何か変わる兆しが読み取れます。

聖心と雙葉の今年の問題を解説した後、過去問の中からこの学校の代表的な問題を紹介し、合格するためにどんな能力が必要なのかを具体的にお伝えしました。解説に使った過去問は以下の通りです。

【聖心女子学院初等科】
【雙葉小学校】

こうした優れた問題が他校に波及し、それが現在の新傾向の問題を形成しています。いろいろ工夫された問題の中で、今後も継続して出されていくであろう典型的な問題は、「すごろく移動」に代表される、作業を通して答えを導き出す問題です。常識問題のように知識を問う問題ではなく、指示をしっかり聞き、約束に基づいて手を動かして作業し、その結果回答を求めるような問題が増えています。これは、最近の中学校入試における図形問題にも顕著にみられる傾向のようです。自ら主体的に学ぶ経験を持っていない子どもには、相当大変な問題になるはずです。教え込みの指導が意味をなさないのは、こうした問題に対する子どもの反応を見ればよく理解できます。

合格するための大事な課題に「行動観察」があります。この2校においても毎年重視されている行動観察ですが、今年の問題を見ても、訓練された振る舞いが活用できる場面はどこにもありません。自分で考え、自分で行動でき、お友だちと一緒に問題解決に当たることができなければ、良い評価は得られません。教え込まれた型が、いかに子どもの自主的は判断を妨げているか・・・実際の教室での子どもの様子を見るにつけ、いつも痛感していることです。また、行動観察で求められているのは、決して子どもの様子だけではありません。子どもを通して見えてくる、家庭の子育てのあり方が問われているという意識を持たないといけません。他人任せの行動観察対策、しかも「型」を教え込む行動観察対策では、良い結果につながることはありません。行動観察こそ、「子育ての総決算としての入試」そのものであり、毎日の子育ての中で、解決していかなければならない課題だという意識を持っていただきたいと思います。

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