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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

4・4・4制について思うこと

第406号 2013/9/27(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 教育の在り方をめぐり、さまざまな議論が行われています。中でも、社会に人材を送り込む大学教育の在り方をめぐっての議論が一番多いように思います。入試制度のあり方を巡っては、9月新学期案や、東大・京大における推薦入試の試みなどが話題になっています。また、世界で活躍できる人材育成の一環として、英語による授業構想等も検討され、実際に行われている所もあると聞きます。「世界に通用する日本の大学教育」という視点からの改革案がたくさん出されています。また、一方で大学教育以外でも「変革」の必要性が議論され、例えば、義務教育の12年間の教育を効率よく実行するために、6・3・3制に変わり、4・4・4制も議論され始めました。先頃東京都が発表した、小中高一貫教育構想が4・4・4制を実行するということで、にわかに話題になっているようです。受験教育のプラス面とマイナス面を考慮しての、一貫教育および4・4・4制の導入ということだと思いますが、今回も制度面だけでなく、教育内容の議論まで発展するのかどうか、はなはだ疑問に思っています。

私が身近で知る限り、現在私立校で4・4・4制を敷いているのは、2校だけです。「4・4・4制」の考え方がまだ普及されておらず、風当たりが強いのも事実です。特に教育内容の編成においては、試行錯誤が続いているはずです。2校とも小学校受験を行っており、学校選択の要素に、4・4・4制を期待する声と、4・4・4制に対する不安や疑問、特に中学校入試を廃止した学校もあるため、5年生の段階で若干の人数を補充する試験があるとはいえ、外からの新しい風をどう吹き込むかという点で、懸念を表明されている方が多くいるのも事実です。その一方で中学校入試を行う学校もあり、その繋ぎ方には相当知恵を絞っていると思います。こうした学校の実践が評価され、都立小中高一貫校の実験が成功すれば、一気に6・3・3制に代わる教育制度として、受け入れられていくのではないかと思います。ただ最終目標が、先取り教育の結果として、最後の1年間を大学入試のための準備期間に置くという点が強調されすぎると、誤解を招くことも懸念されます。大学入試のためというより、そのことを含めて「社会に役立つ人材育成」という観点に立てば、新しい教育制度として注目を集めるかもしれません。

しかし、世界で通用する人材育成という観点で子どもの学力を懸念し、教育制度の見直しをするならば、なぜ一番大事な幼児教育を置き去りにしていくのでしょうか。一番の基礎となる幼児期の基礎教育の在り方に目をつぶって議論しても、砂上の楼閣になりかねません。土台をしっかり築かないところにどんな立派な内容を付け加えようと思っても、それは無理です。ですから私は、幼児教育の在り方をまず議論し、今2つの監督官庁に分かれている幼稚園と保育園の一元化を目指す意味でも、その教育内容をしっかり議論すべき時だと思います。5歳児就学案も出たり、消えたりしてきましたが、私は、教育内容の系統性を前面に出して考えれば、年中・年長を含めた「幼小一貫教育」が必要であり、誤解を恐れず言えば、「義務教育は4歳から始めるべきだ」と考えています。最初の4年間は、「年中・年長・小1・小2」の4年間にすべきであり、学習のみならず、集団活動の基本も、この時期にしっかり身につけさせるべきだと考えています。小1プロブレムと言われた問題もこの中で解決できるはずです。いじめの問題を含めた、人間と人間との関わり方を、集団活動が可能となる年中の時期からしっかりとした方針を持って学ばせるべきだと思います。義務教育に入るまでは自由に遊ばせておけば良いと考えてきた、これまでの日本の幼児教育。それが、いかに世界に後れをとっているか・・・、諸外国での教育事業を通して痛感しています。このままでは、「日本の子どもたちの学力が危ない!!」と叫ばざるを得ません。


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