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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

合格カレンダー連続講座が始まりました

第377号 2013/2/22(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 正しい入試情報と家庭学習の進め方について、保護者の皆さんに伝える「合格カレンダー連続講座」が今年も始まりました。例年より少し遅めのスタートですが、これから月2回のペースで行っていく予定です。第1回目の講座は「聖心合格のためにこれからすべきこと」と題し、聖心女子学院初等科を第1志望とする保護者の皆さんに、次のような観点でお話ししました。

合格カレンダー連続講座 第1回
「聖心合格のために これからすべきこと」
1. 2013年度入試問題分析
A) 入試概要
B) ペーパー問題分析
C) 行動観察で何が問われたか
D) 願書・面接のポイント
2. 過去10年間の問題傾向
新しい校長になってから何が変化したのか
3. 合格に向けてこれからすべきこと
A) 入試に影響する学内事情
B) 一番難しい、工夫された問題が出される背景と対策
C) 残り8カ月の入試対策
D) 聖心を目指す保護者の勉強会のご案内

情報が公開されていない今の小学校入試において、間違った受験対策にならないようにするためには、正確な入試問題の分析と、幼児期の基礎教育の原則を踏まえた、正しい家庭学習の方法を具体的にお伝えすることだと考えています。この講座は例年人気があり、すでに予告してある3月末まではどの回も満席の状態で、入試情報の分析に対する関心の高さを示しています。正しい情報が伝わり、家庭での学習法が正しく伝われば、小学校入試は幼児期の基礎教育をすすめる最大の動機づけになると思います。それは、いろいろ変遷を繰り返してきた小学校入試が、「考える力」を求めるまともな問題を出すようになってきたからです。小学校入試のための準備教育が特別な教育ではなく、幼児期のまともな教育で解決できるようになっているとすれば、その事実を具体的な問題分析を通して伝えることは、私の使命だと考えています。

さて、第1回の講座では、聖心女子学院初等科の2013年度の入試問題をひとつひとつ詳しく分析しました。また、10年間の問題の変化を解説し、その中で、新しい校長になってから入試問題がどのように変化しているのか、またそれはどんな意味を持っているのかを伝えました。4・4・4制の指導体制を固め、中学校入試を行わず、第2ステージに入る前に「編入試験」を行うようになったこの学校で、唯一の入試となった小学校入試に込めた想いが、新しい問題作りにつながっている事実を伝えました。その中で、考える力を求める問題が、いろいろ工夫されて出題されている事実と、そのことが小学校入試の学力問題全体に与える意味を詳しく分析し、この学校で出される問題が、今後他校に波及すると思われる理由を示しました。それだけ良い問題作りを行っているということです。例えば、新しい指導体制になって間もない2011年度の入試で、次のような問題が出されました。

2011年度入試 聖心女子学院初等科 「言葉つなぎ」
 まず練習をしてみましょう。ここにかいてあるものの名前の最後から2番目の音ではじまる言葉を探しましょう。エンピツの最後から2番目は「ぴ」ですね。「ぴ」から始まる言葉はピアノなので、エンピツとピアノを線結びしてください。次にピアノの最後から2番目は「あ」なので、アヒルと線結び・・・というようにつなげていきます。
  • 右のお部屋にあるものを今練習したお約束で、できるだけ長くつないで、青で線結びしてください。はじまりはわかりません。使わないものもあります。

この問題は、日本語の基礎である「一音一文字」の考え方を応用した問題でした。従来は、「同頭音」「同尾音」の考え方をふまえた、「しりとり」が良く出されていましたが、これは、設問にあるように「下から2番目の音でつなぐ」言葉つなぎの問題です。子どもたちが「しりとり」と間違えないように、わざわざ練習問題までさせたのです。この問題が、次の年この学校で形を変えて出題されると予想していましたが、次のような問題に変化し他校で出題されました。ある学校で出された良い問題が、他校に波及することは良くあることですが、これまでの例でいえば、2~3年後の出題だったものが、今回は次の年に同じ趣旨の問題が他校で出されたということで、大変驚きました。

2012年度入試 Y校 「言葉つなぎ」
絵にかいてあるものの真ん中の音を使って、しりとりのように青い線でつないでください。
2012年度入試 K校 「言葉つなぎ」
 左上を見てください。2番目の音を使って、しりとりのように言葉をつなぎます。
練習してみましょう。「ウサギ」の2番目の音は「サ」なので、つながるものは「サ」ではじまります。そして下の「イルカ」は「イ」ではじまっているので、真ん中のに入るものは、「サ」ではじまって、2番目の音は「イ」です。何が入るでしょうか。そうですね。「サイコロ」なので、下のサイコロの絵にがついています。
  • では、横ののお部屋には何が入るでしょうか。同じように考えて、下の絵の中から選んでをつけてください。
右上を見てください。
  • 今度は言葉の真ん中の音でつなぎます。形がかいてあるお部屋には何が入ればよいですか。下から探して同じ形をつけてください。

こうした事実を考えると、この学校の新しい問題が、小学校入試の問題作りにおいてリーダー的役割を果たしていくことは間違いありません。子どもの学力を正当に評価する「考える力」を求める問題作りには、私たちも大いに期待したいと思います。ゆがんだ受験教育を正すには、まともな問題作りが不可欠だからです。こうした問題が今後増えていけば、小学校入試の対策そのものが、日本では遅れがちな「幼児期の基礎教育」の必要性を高める結果につながっていくと思います。

ところで、この学校で2012年度に出された「交換」の問題が、2013年度にどのように変化したのかを知っていただくために、次の問題を紹介します。かけ算の考え方の基礎となる「一対多対応」の応用問題ですが、こうした問題が出される背景には、教え込みの教育では将来の学力の基礎にならないという学校側のメッセージが読み取れます。自ら考える力を身につけてこそ、こうした新出の問題に対応できるのです。

2012年度入試 聖心女子学院初等科 「一対多対応の応用(交換・置き換え)」
左側の絵を見てください。
絵本1冊と、鉛筆2本、消しゴム4個は、同じ値段です。
花子さんは絵本を2冊買いました。
  • 絵本2冊と同じ値段で買えるものが入っているカバンを、下から探して青いをつけてください。

2013年度入試 聖心女子学院初等科 「一対多対応と交換」
上のお部屋を見てください。2個に換えられます。◎は2個に換えられます。
  • それぞれのお部屋にある印を全部に換えると、はいくつになりますか。その数だけ右のお部屋に青いをかいてください。

教え込みの受験指導は改めるべき時が来たということを、こうした問題の分析を通して、現場指導の方々に気づいてほしいものです。

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