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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今年の入試から何を学ぶか(3) 入試問題の分析

第365号 2012/11/23(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 来年4月開校の慶応義塾横浜初等部の第1次試験の合格発表が行われ、23日から3日間、第2次試験が行われます。これで、関東圏の私立小学校の入試はほぼ終了することになります。関心の高かった横浜初等部の第1次試験は、予想通りペーパー試験でした。数・図形・話の内容理解を中心とした、基礎的な理解力を見るペーパーが6枚ほど出題されたようです。また、第1次試験で定員の約4倍に絞り込んだようです。第2次試験は、慶應義塾幼稚舎型の試験になると思いますが、合否判定がどのようになされるのか注目したいと思います。そのあり方次第では、いったん下火になりかけた小学校入試が再び注目され、受験者増につながる可能性は否定できません。これからは、国立附属小学校の入試に関心が移ります。筑波大学附属小学校等の抽選も終わり、抽選を通過した方は、これから短期間のうちに最後のまとめをしなければなりません。

さて、私立小学校の入試問題の分析を始めていますが、その結果を報告する「2013年度 学校別入試分析セミナー」が以下の日程で行われます。昨年・一昨年と目黒区中小企業センターホールにおいて報告会を行いましたが、20以上ある学校の入試問題を、1校6分程度の時間内に解説をせざるを得ず、十分な伝達ができなかったことを反省し、今年から時間を十分取って問題の分析をお伝えする予定です。1校45分程度確保すれば細かな点での分析もお伝えできるはずですので、ぜひ、第1志望校の分析についてはお聞きください。

「2013年度 学校別入試分析セミナー」日程・対象校
恵比寿本校:12月9日(日)
(1)
  • 聖心女子学院初等科
  • 田園調布雙葉小学校
10:00~11:30
(2)
  • 学習院初等科
  • 成蹊小学校
10:00~11:30
(3)
  • 雙葉小学校
  • 横浜雙葉小学校
13:00~14:30
(4)
  • 東洋英和女学院小学部
  • 立教女学院小学校
13:00~14:30
(5)
  • 東京女学館小学校
  • 日本女子大学附属豊明小学校
15:00~16:30
(6)
  • 白百合学園小学校
  • 光塩女子学院初等科
15:00~16:30
大森教室:12月16日(日)
(7)
  • 慶應義塾幼稚舎
  • 慶應義塾横浜初等部
  • 暁星小学校
  • 早稲田実業学校初等部
14:00~16:00

その中で詳しくお伝えすることになると思いますが、入試問題の傾向がかなり変化してきています。つまり、ペーパー中心の学習では対処できない問題が増えています。一言でいえば、「考える力」が求められる問題が増えていることです。機械的な詰め込みトレーニングでは解決しない問題が、特に図形領域を中心に増えています。パターン化しやすい数の問題を避け、図形や一音一文字の問題に象徴されるように、子どもたちがはじめて取り組む問題(新出問題)が増え続けているということです。今年の問題を見る限り、学校側が相当工夫している様子を感じとることができます。問題の意図を素早く理解し、作業しながら問題を解いていく形式は、数の領域の問題より、図形やルールのある言葉遊びなどの方がオリジナルな問題を作りやすいのかもしれません。ある学校で出された次のような問題は、「考える力」と「作業能力」が求められる典型的な問題であり、今後こうした問題が入試問題の主流になっていくと予想されます。教え込まれた知識でなく、柔軟に考え自分の力で解いていく能力が求められています。

「広さくらべ」 (2013年度入試より)
左のお手本を見てください。白いところと黒いところは広さが同じです。
では、右の形の中で白いところと黒いところの広さが同じものを探して、青いをつけてください。

面積を比較する問題が目新しいのではありません。これまでもいくつかの学校で出題されてきましたが、その場合単位となる形は、あらかじめ決められたもの、特に正方形を1単位と考え、その半分の直角三角形ぐらいが元になっての比較でした。難しいとすれば、「直角三角が2つ集まって正方形になる」という理解ぐらいだったはずですが、今回この問題に注目しているのは、基準となる形がそれぞれ変わっていて、その都度基本単位を考えなくてはならない点です。ここで求められている能力は、単に図形領域の学習を徹底してきたというだけでなく、遊びやパズルで培われた図形的センスが求められているということです。教えられたとおりにやるというより、自分の力で「考え抜く」ことが必要だということです。こうした傾向は、小学校受験のみならず、中学・高校・大学の入試まで共通して言える事のようです。「四角い頭を丸くする」というキャッチコピーが以前はやりましたが、本当に柔軟なものの見方ができないと、解けない問題の一つです。小学校入試がこうした傾向になっている現実をどうか踏まえ、通り一遍のペーパートレーニングでは、対応できない現実をしっかり見据えておいてください。

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