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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

学校が求めているものは何か

第111号 2007/07/20(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 夏季講習会が始まり、受験生はこれから3ヶ月あまり、実践的なトレーニングを積まなくてはなりません。今の時期は、受験で出される課題の基礎学習を終え、過去問をはじめとする難問トレーニングによって自信をつけていく大事な時期です。体と心の健康を常にチェックしながら、がんばってください。

 35年間も受験指導の現場にいると、学校側の問題の意図や、それを子どもがどのように解決していくか、といった動きも手に取るようにわかります。そして年々変化するそれぞれの学校の問題傾向や合否判定の仕方が、学内事情によって相当変化するということもわかってきました。予想問題を考える時、過去問の傾向を分析するだけでなく、その学校が目指すもの、その学校が今直面している問題等も考慮しなくては正確な予想は立てられません。
 少なくとも私がかかわった小学校入試は、35年間で次のように変化してきました。

  1. 知能テストの問題が入試問題の中心であった時代
  2. パターン化した知能テストでは差が出ないことがわかり、独自の問題をペーパー化し、大量のペーパーテストを課した時代
  3. 過熱したペーパー試験への反省から、個別テストが重視され、二次制のテストなどを導入し出来るだけきめ細かに評価しようとしていた時代
  4. 行動観察を重視し、ペーパーテストの点数だけでは合否が決まらなくなった時代
  5. 論理的思考力がどれだけ身についているかを見るため、パターン化した問題を排除し、「考えさせる」問題をいろいろ工夫して出題している現在

 学校によって差はありますが、現在の入試は「4.」「5.」の段階まで進んできています。こうした中で、学力がありながら合格できなかったケースもたくさん見てきました。そして、なぜこんな問題が入試問題になるのかと思われるほど、入試問題が多様化し、生活のあらゆる経験が入試問題の対象になる時代になってきました。

 なぜでしょう。学力だけを重視する入試ならば、もっとペーパーを増やし、難しい問題を課せばいいのです。そうでないところに、小学校入試独特の考え方があるのです。客観的な学力の点数で合否が決まらないとするならば、学校側が求めているものが何なのかをはっきりさせておかなくてはなりません。

 結論から言えば、年長11月時点の学力だけでは、入学後の成長を保証できないと学校側が考えているからです。学校側は、4月から始まる学校生活を支える「レディネス」が備わっているかどうかを、さまざま視点で、判断しようとしているのです。学力もその大事なひとつですが、それだけが備わっていれば良いと考えてはいません。
人の話をきちんと聞けるか
自分の考えていることや感じていることを言葉で伝えることができるか
最後まであきらめず、物事に取り組んでいく意欲があるか
集団活動のルールをしっかり守ることができるか
相手を思いやる気持ちが芽生えているか
親から自立し、身の回りの問題解決ができるか
 これはほんの一例ですが、こうした態度や姿勢が備わっているかどうかを問わない、学力だけの評価では、子どもの成長の土台を正確に判断できないと学校側は考えているのです。だからこそ、行動観察が重視され、面接が重視されているのです。

 このように考えれば、学力が相当高いのに合格できないケースが出てくるのは当然といえます。小学校受験の対策を「ペーパートレーニング」と考えている方がもしいらっしゃるとすれば、それは、20年以上も前の入試に有効であった対策だということです。学校側が求めている小学校生活の「レディネス」は、学力だけでなく、幅広い問題解決能力ですから、普段の生活の中で培うものが相当あるはずです。家庭ですべきことは家庭でしっかりと身につけ、他人任せ・教室任せにしないようにすることが、まず何よりも大切なことだと思います。

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