ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「学習相談Q&A」

【質問35】

2007年6月15日 回答
受験生の皆さまの学習相談に、こぐま会室長がお応えします。

 10の構成がまだ暗算でできません。入試ではどのような形で出題されるのか、またそのためにどのような練習をすればよいのかアドバイスをお願いします。

 「10の構成」は、数の構成の中でも入試でよく出されるテーマです。私たちの授業では、ステップ1で「5の構成」が暗算でできるように学習しましたが、その後、さいころを使った「7の構成」や、数が大きくて暗算の難しい8や9の構成も指定校クラスで扱ってきました。暗算による「数の構成」の中で一番大きな数である「10の構成」が入試でよく出されるのには、いくつかの理由があります。

  1. 子どもの生活に身近な数であるということ
  2. 数の構造が「十進構造」であること
  3. 1年生の後半で学ぶ「繰り上がり」や「繰り下がり」の計算をすばやく行うためには、「10の構成」の理解が不可欠であること
などが考えられます。

 8や9よりも10のほうが生活に身近であることは、お金を考えてみれば理解できます。また、1が10集まって10。10が10集まって100。100が10集まって1000というように、数の構造が十進構造であることも、10の理解を求める理由ではないかと思います。また、10の構成が、小学校入学後の計算練習にどのようにつながるかという観点から考えてみると、繰り上がり、繰り下がりの計算のスピードを上げるために、10の理解がどうしても欠かせません。

 例えば「8+6」を考えて見ましょう。今の小学校では、次のように指導されるはずです。
 10に近い8にあといくつあげれば10になるかを考えます。そのために必要な2を6からとって「8+2」で10とします。2を貸してあげた6は、「6-2」で4となり、10と4をあわせて14となります。
 また、「14-8」の計算は、10から8をとって2 、その2と残りの4をあわせて6とします。このように、繰り上がり、繰り下がりの計算では、10の構成がすばやく暗算できれば、計算スピードが上がるということが良くわかると思います。

 では入試問題はどのような形で出されているのでしょうか。「あといくつで10になるか」「どんな組み合わせで10になるか」というように、2つの数で10を構成する問題が基本ですが、3つの数の構成も出されています。ある学校では、さいころを3つ使い、あわせて10になるように目を出させ、それができたら違う組み合わせで10を作るという問題が出ました。また、以前3×3方眼を使って、縦の部屋の数3つを合わせても、横の部屋の数を3つ合わせても、どこも10になるように空欄を埋める課題が出されています。形式はいろいろ考えられますが、2数の構成だけでなく3数の構成も暗算できるようにしておくことが大事です。
 5などと違って、数が大きいため、暗算で答えを出すには相当練習しなくてはなりませんが、年長の夏休み前のこの時期には8割以上の子どもたちが暗算で答えられるようになっています。ただ、5の構成とは違って、数の組み合わせによって難易度は相当違います。
 例えばイチゴを7個見せて「あといくつで10ですか」と聞く問題と、イチゴを3個見せて「あといくつで10ですか」と聞く問題では、後者のほうが答えが出るまでに時間がかかりますし、間違いも見られます。たぶん「数えたし」を行って答えを出そうとしているため、答える数が小さいほどやさしいということになります。10が7と3の組み合わせでできていることがわかっても、3を提示されて7と答えるほうが、7を提示されて3と答えるよりも難しいということです。しかし、この現象も練習の積み重ねによって数が内面化されれば、どちらから問われても、答えが出るまでの時間差はなくなっていきます。

 練習の方法はいろいろありますが、原則は絶対に指を使わないということです。10の場合、手の指の数が左右あわせて10ですので、10の構成には便利です。ですから暗算がまだ完成していない段階では、指を使ったほうが早く答えが出ますが、暗算が完成するようになると、指を使うことで時間がかかってしまいます。それだけでなく、話を聞きながら数の操作をしなくてはならないような場合、10に限らずほかの数でも指を使うことで、時間もかかるし間違いも出やすくなりますので、指は使わない癖をつけてください。入学後の計算練習のことを考えても、暗算能力を高めておくことが必要です。どうしても答えが出なければ、おはじきなどを使って考えさせ、わかるようになったらおはじきを取り去ってください。具体物操作によって、数がイメージできれば暗算能力は高まります。

 あといくつで10になるかを練習するためには、何か具体的なもの、例えばみかんでもキャラメルでも何でもかまいません。それを机の上に並べ、10あることを確認してから目隠しさせ、その間にいくつか隠してしまいます。そして、残った数を見せ「いくつ取ってしまいましたか」と質問します。その時、隠す数を少ないところからはじめ、だんだん多くしていきます。少し慣れたら、今度は具体物を取り去り、「ここにみかんが10個あるとします。お母さんが4個取ると残りはいくつですか」と、先ほど行ったことを、お話として聞かせ考えさせます。それができたら、今度は数あてゲームです。「これから数を言いますから、あといくつで10になるか考えてください」と言い、「8?」「3?」「4?」などと次から次に10の補数を言わせるのです。数の内面化は、こうした具体物操作を前提に、同じ場面を言葉でイメージさせる繰り返しの練習によって可能になるのです。個人差は当然ありますが、指導する手順はどの子に対しても変わりません。こうすることによって、少なくとも8月までには暗算は必ず完成します。時間がかかりますが、辛抱強く練習してください。そのことは、入試対策だけでなく、結果として1年生の重要な課題である「繰り上がり」「繰り下がり」の基礎を練習をしていることになるのですから、あきらめずがんばってください。

PAGE TOP