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週刊こぐま通信
「学習相談Q&A」

【質問10】

2007年2月16日 回答
受験生の皆さまの学習相談に、こぐま会室長がお応えします。

 うわさでは、「自分の背の高さぐらいまでペーパーを こなさないと合格できない」と言われていますが、本当でしょうか。ペーパーでの学習をどのように考え、実行したら良いのか教えてください。

 よくある質問です。「自分の背の高さぐらいやらないと・・・」という表現はきわめてわかりやすい表現ですし、そのくらいの量をこなさないと難関校への合格は難しいということだと思います。その点については、肯定も否定もしません。それぞれのやり方があるからです。しかし、問題は、「だから小学校入試の対策は、ペーパートレーニングさえやっておけば良い・・・」と受け取られてはまずいということです。

 小学校入試ではすべての学校ではありませんが、ペーパーテストが課せられます。たくさんあるテストの中では、客観的に点数が出るものです。中学入試や高校入試もほとんどがペーパーテストの点数で合否が決まるため、小学校入試も同じように・・・と考えるのは当然です。しかし、どう分析しても、ペーパーテストの点数だけで、合否が決まっていかないのが小学校入試なのです。ですから、私たちは最近の入試を総括して、「実力主義だけれど学力主義ではない」と言っているのです。

 ペーパーテストがあり、製作や運動を兼ねた行動観察があり、面接があり・・時には個別テストもあり・・・そうしたテストの総合で合否が決まっていくと考えるのが正しいと思います。そうした中で、ペーパーテストの枚数は、年々減る傾向にあります。行動観察が盛んになり始めたころ、私がある学校の校長先生に「なぜ、行動観察を重視するのですか」とたずねると、「年長の秋のペーパーテストで仮に満点をとっても、そのことが将来の学力の伸長を保障しない。ましてや、友達と遊べない子は入学してからも伸びない」と話されていました。つまり、評価のひとつの柱ではあるけれども、それがすべてではないということです。

 こうした入試の現状にあって、ペーパーさえトレーニングすれば合格できると考えるのは間違っています。それにもうひとつ大事なことは、ペーパーのみの学習では、本当の意味で「考える力」が身につかないということです。私たちは、事物教育を実践してきていますが、物事に働きかけ、試行錯誤する中で、子どもたちは物事の関係をつかみ、論理を育てていくのです。ですから、身につけたものの見方を確認し、より深めるためには、ペーパー教材は最適なものですが、ペーパートレーニングだけで、論理を育てるということは無理です。これからの小学校入試でも、「論理的なものの見方」がどれほど身についているかが問われてくるはずですから、ますます、ペーパーだけの機械的なトレーニングでは、実情に合わなくなってくるでしょう。

 「自分の背の高さぐらいまで・・・」という表現は、そうした原則に沿ってやる分には私も賛成ですし、私たちの教室では、それ以上のペーパー教材を用意しています。しかし、先ほど述べたような誤解を生みやすい表現でもありますので、その点は十分気をつけてください。

 私は、基本を理解したうえでペーパートレーニングによって応用力を身につけたり、理解度をチェックするためにペーパーで確認することを大いに勧めますが、「何枚やったから・・・」という発想はとらないほうが良いと思っています。10枚のペーパーを機械的にこなすより、1枚でも良いからじっくり取り組ませ、そこで求められている「ものの見方や考え方」を違う角度から問いかけたり、答えの根拠を言語化させるなどして本当に理解しているかどうかを確かめることが大事だと思います。特に、仕事を持っていて、家庭学習の時間を確保するのが難しい「働くお母さん」にとっては、そのような方法をとらないと、お母さん自身がパニックになってしまいます。そうした前提の上で、聞き取り練習などの側面もありますので、子どもの勉強ペースに合わせて、無理のないようペーパートレーニングにも力を入れてください。

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