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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

私立小学校入試分析セミナーを終えて

第84号 2006/12/08(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 12月7日に新宿の「紀伊国屋サザンシアター」において、2007年度私立小学校入試分析セミナーを開催しました。来秋受験される皆さまを中心に、400名ほど参加されました。今年の入試がどのように行われたのか、その実態を明らかにするために、いくつかの観点から報告しました。今回で7回目になりますが、入試情報が学校側から開示されていない現状にあって、正確な情報をお伝えするのは受験指導に携わる私たちの大事な仕事だと考えているからです。

 受験した子どもたちの記憶に頼っていますので、多少の聞き漏らしがあるかもしれませんが、1校につき数名の受験生から聞き取りをし、資料を作成してきました。20年以上にわたり、こんな作業を続けてきましたが、これまで学校側からのクレームはひとつもなく、ほとんど間違いなく入試の実態を再現できていると確信しています。毎年4月ごろに出版する入試問題集を、今年はできるだけ早く公にしようと、雙葉・聖心・女学館・英和・白百合・豊明の6校については、今年出題されたペーパー問題を作成し、セミナー会場で販売しました。他校につきましては、準備ができしだい出版する予定です。

 今年の私立小学校の入試は、特に大きな変化はありませんでした。細かい点を見てみると、試験日程については、東洋英和が11月2日から1日に変更したこと、立教女学院が11月4日と6日(5日が日曜日だったため)に行われたことなどがありました。また、入試問題については、全体として思考力重視の難しい問題が増えた感じがします。特に、予想したとおり言語領域の問題が工夫され、話す力と聞く力に関する問題の中味が多様化してきています。ゆとり教育を反省した新指導要領において、文部科学省は国語を学習の基本に据え、言語を通して「論理的思考力」を向上させる方針を打ち出していますが、こうした教育方針の転換が、小学校の入試問題にまで反映してきているのです。特に、会話能力や説明能力が劣っている今の子どもたちに警鐘を鳴らす意味も含めて、言語的な自己表現力は今後も重視されていくはずです。

 今年の入試を踏まえ、これからどのような考え方で受験対策を進めたらいいのかも、お話させていただきました。長い間受験相談を担当していて感じることは、お母さんのあせる気持ちに子どもたちの意欲がついていけず、その結果受験対策における母と子の悪循環が始まるということです。学力があっても合格できなかった子どもたちのタイプのひとつに、「意欲や自主性に欠ける子どもたち」があげられます。そうした子どもたちの集団における様子には、自分から声掛けができない、声が小さい、聞かれてもすぐに答えが返ってこない・・・という共通した特徴があります。そうした子どもたちが何か行動を起こすとき、必ず両親や教師といった周りの大人に確認したり、また促されたりした後にしかできません。お母さんが、細かい一つ一つのことに口をはさみすぎると、言われたとおりにしか行動できない子どもになってしまいます。子どもを信じ、子どもなりの解決を見守るゆとりが必要です。

 正確な入試情報をもとに、学校選択や学習計画を立てる必要があります。来秋の受験に向けて、今すぐに過去問ができるはずはありません。子どもの理解の道筋に合わせて学習課題を設定してあげなければ、系統性を踏まえない、効率の悪い学習に陥ってしまいます。基礎が何で応用が何か。そして学校側が求めている能力は何かをしっかり踏まえた学習を心がけてください。もうすぐ開館する「こぐま会学習サポートセンター」では、どのような順序で、何を使って学習していけば良いのかなどのご相談に応じられる体制作りをめざしています。ぜひ、ご期待ください。

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