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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

シンガポールでの夏季講習会を終えて

第689号 2019年9月13日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 9月3日よりシンガポールに赴き、夏季講習会と講演会を行ってきました。シンガポールでは現在、駐在員の日本人を対象としたクラスと現地の方向けクラスを開校し、大勢の子どもたちがKUNOメソッドで学んでいます。今回は日本人向けクラスを常設している「学習塾 KOMABAシンガポール」で、年中児と年長児向けのクラスを4コマずつ、合計8コマの授業を行いました。またそれとは別に、セミナーを2回とKUNOメソッドに関する研修会を開催し、大勢の皆さまにご参加いただきました。

「シンガポール夏季講習会・講演会」
年中児向け講座
9月4日:第1回「聞く力を育てる」
9月5日:第2回「観点を変えてものを見る」
9月7日:第3回「図形感覚を育てる」
9月8日:第4回「日本語の理解・一音一文字・話の内容理解」
年長児向け講座
9月4日:第1回「入試によく出る数の問題」
9月5日:第2回「新傾向の図形問題」
9月7日:第3回「言語領域の問題」
9月8日:第4回「法則性の理解」
チャレンジテスト
9月8日:年少児対象「チャレンジテスト」
9月8日:年中児対象「チャレンジテスト」
講演会
9月7日:教育講演会(1)「考える力を伸ばす幼児教育 事物教育と対話教育の大切さ」
9月8日:教育講演会(2)「最新小学校受験情報 学校はどんな能力を求めているのか」
職員研修会
9月6日:KUNOメソッドの内容と方法

年中児・年長児向けの講座のうち、やはり皆さまが注目し大勢参加されたのは、言語領域に関する講座でした。年中クラスのテーマは「聞く力を育てる」と「日本語の理解・一音一文字・話の内容理解」、年長クラスは「言語領域の問題」として行いました。
海外に出て、幼稚園をどう選択するかという問題は深刻です。ローカル園にするか、インターナショナル・プリスクールか、もしくは日本人向け幼稚園か・・・日本にいる時よりも選択肢が多い分だけ、相当迷うようです。これは言語習得の問題とも関連していて、せっかく海外に来たのだから英語を習うチャンスと考え、インターに入れるご家庭も多いようです。また、ローカル園では英語だけでなく中国語も学ぶ機会があるようです。また、日本人として母国語中心でという考え方なら日本人向け幼稚園・・・そうしたさまざまな言語環境にいる子どもたちが一同に集まっての授業でしたから、問いかけの言葉遣いには相当気を使いました。子どもたちの反応もさまざまで、理解はしているけれども、言葉で説明する段になると口を閉ざしてしまう子も出てきます。

年中児向け シンガポール特別授業
第1回「聞く力を育てる」
1. 指示の聞き取り
丸、三角、四角、ひし形がお皿のように描いてある
  1. 丸の中に、青いおはじきを4個入れてください
  2. 三角の中に、赤いおはじき3個と黄色いおはじきを5個入れてください
2. 位置の聞き取り(生活空間における位置)
  1. 机の上に、赤いおはじきを置いてください
  2. 机とイスの間に、青いおはじきを置いてください
3. 話の聞き取り(話と違う絵を探す)
お話を聞いて、その絵にふさわしくないものに×をつける
4. 話の内容理解
お買い物に関するお話(登場人物・順序・数)
5. 詩の暗唱
分かりやすい詩を暗唱する

言語能力と思考力とは関係があるはずですが、今回の授業の様子を見てあらためて感じたのは、聞いて理解することよりも、理解して話す方が相当難しいということです。逆に考えて、日本にいて英語を学ぶ環境についても同じようなことが言えるはずです。とするとこれから始まる小学校での英語教育が、私たちが受けてきた読み・書き中心の受験英語からどう脱却していけるのか・・・ふと心配になりました。

年長児の授業では、小学校を受験する子どももいるということで、入試を前提に主な学習領域の理解度をチェックしました。その中でも、「新傾向の図形問題」や「法則性の理解」は難しかったようです。海外から受験するケースが毎年増えており、今年も数名いらっしゃいます。その受け皿として「エデュプレイ・インターナショナル」という支援組織を作りましたが、海外では、受験情報が少ない・教材が手に入らない・学習法が分からない・・・など準備が大変だという話をよく耳にしていました。今年もシンガポールから受験する子どもが、恵比寿本校の夏季講習会を受講しました。それならば私が出向いて可能な限り支援しようと、シンガポールで夏季講習会を実施しました。子ども対象の授業だけでなく、保護者対象の受験セミナーも開きました。ご両親で参加された方も多くみられました。

どんな子どもたちが参加してくれるかも分からないまま、1時間の内容を考え、教材も事前に用意して行った講座でしたが、ほとんど予定通りの授業ができました。どの国にいても子どもたちの発達には一定の原則があり、それを踏まえて行えば、言語環境が違っても日本と同じ教育ができることがよく分かりました。決して海外にいる子が遅れているということはありません。

また、今回も現地の方向けの教室で行われている授業を見学しました。私が開発した授業を「英語」で行っている様子を拝見し、一緒に見学したこぐま会のスタッフも感慨深げでした。日本での英語教育の方法として、こぐま会の授業をすべて英語で行うという構想を以前から持っています。大学の英語教育専門の先生にも薦められています。基本的な概念を身につける幼児教育と、日本における英語教育が結びついたら、また新しい授業が展開できるかもしれません。

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