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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏に克服すべき新傾向の問題

第683号 2019年7月19日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 小学校入試で問われる学力は、ペーパー試験で行われることが多いものですが、ペーパー試験を行わない学校では、事物やカードを使った個別テストで行われています。ペーパーを使わないから易しいというわけではありません。ペーパーを使わない試験のほうが難しい場合もありますし、口頭で理由説明をしなければならない場合など、子どもにとっては難しい面も出てきます。ペーパー試験は、学校によって枚数は違いますが、大体6枚~8枚ぐらいが平均的な枚数のようです。多くても10枚前後で、昔のように大量のペーパーを使った試験を行う学校はありません。また、ペーパー試験の内容が、昔の知能テストを中心としたパターン化された問題ではなく、考える力・作業能力が問われる問題が多くなってきています。試験を行う学校側も、入試問題の作成に相当の力を注いでおり、他校との差別化を図っています。また一方で、ある学校で出された新しい問題が、他校に波及する例もたくさん見られます。もちろん同じ問題が出るわけではありませんが、同じ趣旨の問題が工夫されて出されるケースがよくみられます。

例えば、ある学校で出題された「ホットケーキの3等分」が、3年後にひもの3等分、色水の3等分になって別の学校で出されました。それまでは、2等分と4等分が主流でしたから、3等分は新しい問題として波及したのでしょう。しかし、波及するのに3年もかかっています。それに比べ最近の傾向を見ると、新しい問題がある学校で出されると、翌年には別の学校で同じ趣旨の問題が出されています。それくらいのスピードで波及しています。ということは、逆に考えれば入試担当の先生方は、他校でどのような問題が出されているか、相当研究しているということの現われです。どんな問題を出すのが子どもの理解度に合っているか、私のところに相談に見えた入試担当の先生もいらっしゃいました。こうした学校の動きが、入試全体の「新傾向」の問題として、各学校の問題づくりに影響してきています。最近よく出題されている「つみ木を使った四方観察」は、明らかに慶應義塾横浜初等部で開校初年度に出された問題が影響しているはずです。また、こぐま会から毎年大勢の子どもたちが合格していく聖心女子学院初等科で2011年度の入試で出された次の問題が、いろいろな形で各学校の問題づくりに影響しています。

聖心女子学院初等科 2011年度入試「言葉つなぎ」
左のお部屋を見てください。まず練習をしてみましょう。ここにかいてあるものの名前の最後から2番目の音ではじまる言葉を探しましょう。エンピツの最後から2番目は「ぴ」ですね。「ぴ」からはじまる言葉はピアノなので、エンピツとピアノを線結びしてください。次にピアノの最後から2番目は「あ」なので、アヒルと線結び・・・というようにつなげていきます。
  • 右のお部屋にあるものを今練習したお約束で、できるだけ長くつないで、青で線結びしてください。はじまりは分かりません。使わないものもあります。

40年以上の間、聖心女子学院初等科を受験する子どもたちの指導にあたってきましたが、これまで練習問題をつけて行ったケースはほとんどありません。しかし、この問題に練習問題がついていたのは、学校側が、子どもたちがこの問題を「しりとり」問題と間違えるかもしれないと考えたからにほかなりません。しりとりとは違うということを、練習問題を通して子どもたちに伝えたかったのでしょう。しかしそこまで練習しても、実際はほとんどの子どもが、後ろにいくにしたがってしりとりと間違えてしまい、できなかったのではないかと思います。そう考えたのには理由があります。聖心は新しい問題が出されると、大体2・3年は同じ趣旨の問題が続くという傾向が見られます。ですからこぐま会では、翌年受験する子どもたちに「上から2番目の音で始まる言葉でつなぐ」ことや「真ん中の音で始まる言葉でつないでいく」といった練習を徹底して行い、試験に送り出しました。しかし、翌年出されたのはしりとりの応用問題で、この「言葉つなぎ」の問題は出ませんでした。予想が外れた原因は、やはり問題の意図が伝わりにくく、子どもたちにとって難しい問題であったからにほかなりません。ところが驚いたことに、私が聖心向けに練習した問題が翌年他校で出されているのです。

A小学校 2012年度入試「言葉つなぎ」
  • 名前の真ん中の音が、次のもののはじめの音になるように、絵をしりとりのように線でつないでください。

B小学校 2012年度入試「言葉つなぎ」
左上を見てください。名前の2番目の音を使って、しりとりのように言葉をつなぎます。
練習してみましょう。「ウサギ」の2番目の音は「サ」なので、つながるものは「サ」ではじまります。そして下の「イルカ」は「イ」ではじまっているので、真ん中のに入るものは「サ」ではじまって、2番目の音は「イ」です。何が入るでしょうか。そうですね。「サイコロ」なので、下のサイコロの絵にがついています。
  • では、横ののお部屋には何が入るでしょうか。同じように考えて、下の絵の中から選んでをつけてください。
  • 右上を見てください。今度は言葉の真ん中の音でつなぎます。形がかいてあるお部屋には何が入ればよいですか。下から探して同じ形をつけてください。


明らかに聖心の問題が影響を与えているはずです。こうしてある学校で出された新しい問題が他校に波及することを通して、新傾向の問題として定着していくのです。こうした状況ですから、その学校の過去問だけをやっていたのでは、学校の対策にはなりません。入試において、今まで一度も出されなかった問題が出されるという背景には、こうした状況があるからです。そうした目で最近の入試問題を分析していくと、どうしてもやっておかなければならない新傾向の問題があり、それはどの学校を受験するとしても同じです。この夏休み、ぜひこの新傾向の問題に取り組んでいただきたいと思います。 新傾向の問題は、これからの入試で出題されやすい問題だと考えておくのがいいと思います。それをこぐま会の学習領域に即してまとめると次のようになります。

  1. 未測量:つりあい
  2. 位置表象:四方からの観察/飛び石移動
  3. 数:一場面を使った数の総合問題/交換
  4. 図形:対称図形/重ね図形/回転図形
  5. 言語:一音一文字の応用問題(言葉つなぎ・言葉づくり)
  6. 生活 他:回転推理/魔法の箱

以上の単元を繰り返し練習することが、新傾向の問題に強くなるためにどうしても必要です。そこで求められる能力は、「考える力」と「作業する力」の2つですので、ぜひ力を入れて学習してください。

こぐま会の夏季講習会では、こうした分析に基づいた「新傾向の問題講座」を開講します。

夏季講習会 年長児対象「女子難関校共通 新傾向の問題講座」
恵比寿本校にて開講します
・ Dクール 8月05日(月)~09日(金) 14:00~15:30
・ Eクール 8月12日(月)~16日(金) 14:00~15:30
・ Fクール 8月19日(月)~23日(金) 14:00~15:30

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