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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

話の内容理解・昔話

第669号 2019年4月12日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 ステップ4の5回目は言語領域の学習です。言語領域は、国語科の4つの柱である「聞く力」「話す力」「読む力」「書く力」の4つの柱のうち、「聞く力」と「話す力」に力を入れた内容になっています。つまり、聞く力の代表として「話の内容理解」、話す力の代表として「お話づくり」、この2つに加えて「言葉の学習」もあります。今回は「話の内容理解」と「昔話」についての学習です。

step4-5 言語「話の内容理解、昔話」
1. やや長いお話を聞いて、善悪の判断をしたり、話の続きを考えたりする2. 昔話についての理解を深める
(1) 短文復唱
先生が短い文章を言ったあと、続けて復唱する。
例:「ウサギが ぴょんぴょん 跳ねています」
「よし子さんは 野原でタンポポを摘みました」
「森の中で 小鳥たちが 歌を歌っています」
(2) 聞きとり練習
  1. お話を聞いて、その内容にあうように1枚の絵を完成させる。
  2. お話の内容と絵の違いを発見する。
(3) 話の内容理解
  1. やや長いお話を聞いて、やさしかった人、親切だった人は誰かを考える。
  2. やや長いお話を聞いたあと、その続きがどうなるかを何枚かの絵の中から選ぶ。
(4) 昔話
テープで昔話の一場面を聞き、それが何の話であるかを考えて、いくつかの絵の中から選ぶ。また、どんなお話だったのかみんなで話し合う。
例:花咲かじいさん/一寸法師/白雪姫/赤ずきんちゃん

最初に行った「短文復唱」は、記憶問題として個別テストを行う学校でよく出される課題です。教師の読み上げた文章を復唱するもので、記憶力を見るテストのひとつです。難易度を決める要素は、第一に文章の長さですが、それ以上に子どもにとって厄介なのは、普段子どもたちがあまり使わない言葉で表現されている場合です。たとえば、ある学校で次のような文章が出されました。

「赤く色づいた柿をかじってみたら、渋くて吐き出した」

まず、「赤く色づく」という表現に子どもたちはあまりなじみがありませんし、「柿をかじって」みる経験もそれほどありません。その上、渋くてはきだすというくだりの「渋くて」・・・もあまり経験のないことだと思います。
自分で経験もなく意味の分からない文章は、音として聞こえても正しく復唱できません。その点を踏まえ、日常的な練習としては、きれいな日本語の文章や詩・俳句などを暗唱させることが良いかもしれません。

次に行った「聞き取り練習」ですが、今回はお話を聞いて未完成の絵を完成させる課題です。
「話の内容理解」は、一般的にはお話を聞いていくつかの質問に答えていくものが基本です。質問される内容は、「登場人物」「順序」「数」「登場人物の行為」の4つが基本ですが、最近はすべての領域の質問がなされると考えたほうがいいと思います。その他に質問の形式として、今回行ったように足りないところを描き足して一場面の絵にするとか、お話の続きを考えて絵を選択したり、絵を描いたりする課題も見受けられます。また、お話の内容と描かれた一場面の絵の違いを指摘したりする問題も出されています。今回は、そうしたやや特殊な質問の仕方の「話の内容理解」を練習をしました。

また、今回は昔話についての学習もしました。昔話は、入試では常識問題のひとつに数えられています。その理由は、そのお話を当然知っているという前提で問題が組まれているからです。そのため、質問の多くは登場人物に関するものが一番多くみられます。仲間はずれの形式で、そのお話に出てこなかったものを探させたり、違うお話で共通して登場するものを指摘したりするものです。そのため、ある程度の知識の整理は必要です。これは夏休みの課題にしていただいて十分間に合います。また、三者面接の際に昔話がテーマになることがあります。好きな昔話がどんなお話なのか、短くまとめてお話しできるように練習しておいてください。

さて、ここで入試問題をご紹介します。話の内容理解はどの学校でも必ず1題は出されると考えておいてください。ここでは新しい傾向の問題を紹介します。

話の内容理解
  • 次のお話を聞いて後の問題に答えてください。
お山の上に、1本の大きな木がありました。大きな木は「僕はひとりぼっちで寂しいな」と思っていました。
春になると、大きな木のところに小鳥がやって来ました。小鳥は「これから巣を作るんだけれど、枝を少し分けてくださいな」と言いました。大きな木は「この枝は、とても丈夫だよ。さあどうぞ」と言って、小鳥に枝を分けてあげました。青虫もやって来て「お腹がすいたから、葉っぱをちょうだい」と言うので、大きな木は「この葉っぱを食べて、元気になってね」と言って、青虫の近くに葉っぱを落としてあげました。
夏になると、大きな木は、緑の葉っぱでいっぱいになりました。クマのおじいさんがやって来ました。クマのおじいさんは「暑いから、木の陰でひと休みさせてもらうよ」と、大きな木に言いました。大きな木は「どうぞ休んでください」と言って、クマのおじいさんに涼しい風を当ててあげました。
秋になると、葉っぱは色づき、ドングリが落ちました。そこへ、ウサギとリスがやって来て、ドングリでネックレスやコマを作ると、大きな木の下で遊びました。
冬になると、また誰もいなくなって、大きな木は寂しく思いました。すると、土の中からモグラが顔を出しました。モグラは大きな木に「落ちてくる葉っぱのおかげで土の中が暖かいわ。どうもありがとう」と、にっこりしながら言いました。

【問1】
大きな木は、木にやって来たお友だちをどうやって助けましたか。青で線結びしてください。
お話には続きがあります。聞いてみましょう。

ウサギとリスは、ドングリでネックレスとコマを作ると、大きな木の下で遊びました。秋の虫たちが、リンリンリンと鳴いて、まるで音楽隊のようでした。
やがて冷たい風が吹いてきて、木はまたひとりぼっちになりました。でも、空を見上げると、小鳥が元気に飛んでいます。土の中からモグラも顔を出しました。それを見て、大きな木は「僕はひとりぼっちなんかじゃないんだ」と思いました。大きな木にはお友だちがいて、いつもみんなが集まってきてくれます。枝や葉っぱをあげたり、みんなの役に立てていることを思い出すと、大きな木は、温かい気持ちになりました。

【問2】
ここにかいてある絵の中で、お話の続きには出てこなかったものに青いをつけてください。
【問3】
女の子が温かい気持ちになるものに、青いをつけてください。

問3は、答えが話の中にあるのではなく、自分で状況を踏まえて判断する問題です。こうした問題が増えているところをみると、話の内容理解は記憶の問題ではなく、お話を理解する問題として受け止めるべきです。

昔話に関する問題も典型的な問題を紹介します。

昔話
  • それぞれの昔話で3番目になる絵はどれですか。をつけてください。

今回は4枚の絵カードをお話の順に並べ、3番目になる絵を探す問題です。昔話は常識問題のひとつでしたが、お話づくりの素材として使うのもよいかもしれません。

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