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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

横浜たまプラーザ校が開校します

第661号 2019年2月15日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 2月11日(月・祝)に横浜たまプラーザ校において、開校記念セミナーを行いました。
神奈川県初となるこちらの教室は4月から開校しますが、それに先立ちこぐま会が提供する教育の内容と指導法を「幼児期における基礎教育と小学校受験」と題して、以下のようにお話しさせていただきました。

幼児期における基礎教育と小学校受験
  1. 幼児教育の重要性が認識され始めたヘックマンの主張
     ・・・OECDの保育政策の根拠となる
    1. 5歳までの教育が人間の一生を左右するかもしれない
    2. 認知能力だけでなく非認知能力も大事である
  2. 日本の幼児教育の現状と課題
    1. 遊び保育だけでいいのか
    2. 小学校入学時にすでに学力差がついている
    3. 幼稚園卒業までに身につけておきたい10の力 - しかし曖昧な抽象的な表現では現場は何も変わらない
    4. 幼児教育は大事だとわかっていても、何をどうすべきかの方法論が無い
  3. 考える力を伸ばす教育はどうあるべきか - KUNOメソッドによる指導法
    1. 3つの理念(教科前基礎教育・事物教育・対話教育)
    2. 事物教育がなぜ必要か
    3. 対話教育の重要性
    4. 3段階学習法とは
    5. 考える力10の課題
  4. 変化しつつある小学校受験
    1. 入試はどのように行われているのか
    2. 今何が問題になっているのか
  5. どんな能力が求められているか
    1. 入試問題の変遷
    2. 学力の基礎として考える力が求められている
    3. 行動観察では何を評価されるのか
  6. 面接試験重視の背景
  7. 間違った受験対策にならないように
    1. 子育ての総決算としての入試
    2. 幼児期の基礎教育としての準備教育
    3. 実力主義だが学力主義ではない
    4. ペーパーのみの学習では、考える芽を摘み取ってしまう
    5. 聞く力の育成/作業能力を高める/考える力を育てるために事物教育を徹底する

最初に現在の幼児教育ブームの背景をお伝えし、5歳までの教育が人間の一生を左右するかもしれないという、ジェームズ・ヘックマン氏の考え方を紹介しました。その上で、日本の幼児教育の問題点を明らかにし、平成30年4月から実施されている新しい幼稚園教育要領の中で示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」を解説しました。しかし、その抽象的で曖昧な表現では現場は何も変わらず、「幼児教育は大事だと分かっていても、何をどうすべきかの具体案が無い」現状をお伝えしました。そうした状況を踏まえ、「考える力を伸ばす教育」をどうすべきかについて、KUNOメソッドの内容と方法を説明しました。3つの教育理念を伝え、3段階学習法がなぜ大事か、そのうえで「考える力10の課題」について解説しました。

こうした基礎教育の実践を前提とした上で小学校受験の現状を分析しました。特に試験内容の変化について具体的な問題を使って解説し、そのうちの何問かは保護者の皆さまにも解いていただきました。初めて小学校受験を考えていらっしゃる保護者の皆さまにとっては、想像以上に「思考力」を要する問題であると感じられたはずです。そうした問題が、教え込みのペーパートレーニングだけで解けるはずのないことは十分理解していただけたと思いますし、だからこそ、事物教育や対話教育が必要であることも納得していただけたはずです。また、小学校受験の合否判定が学力主義ではないこと、一方で行動観察が重視されている現状をお伝えしました。

毎日50枚くらいペーパーをやらないと合格できない・・・といったような間違った情報がネット上を飛び交う現在、「間違った受験対策」が横行する最大の理由は、入試に対する情報が学校側から開示されていないことです。先日、校長・教頭・入試担当の先生方が集まる会にパネラーとして招かれた際に、「入試対策の混乱が子どもの将来にとって好ましくない教育を助長することになるので、ぜひ学校側から情報を出していただきたい」ということを、学校の先生方に強くお願いしました。幼児教育の重要さが認識され始めている現在、受験対策の教育が「特別なもの」ではなく、すべての子どもたちに必要な幼児期の基礎教育の中で取り組むべき課題であると考えていただきたいと思います。そうでないと、「入試対策」のための教育が、子どもたちの考える力を育てるどころか、成長の芽を摘み取ってしまう結果になりかねません。結果だけを求める安易な教え込み教育を1日も早く排除すべきです。そのためにも、学校側からのメッセージが必要なのです。

一方、世の中全体の幼児教育に対する期待もあり、「小学校受験はしないけれども、中学校受験や将来の学習の基礎をしっかり作るために教室に通いたい」というご希望をお持ちのご家庭も増えてきています。現在KUNOメソッドを提供している「サピックスキッズ」は、小学校受験はしないということを前提に代々木と豊洲で教室を展開していますが、大勢の子どもたちが通っていますし、代ゼミタワーで行う教育講演会には、いつも大勢の保護者の皆さまが参加されています。これまでは、小学校受験をしない方には関係ないと考えられてきた「系統的な幼児教育」に対する期待が高まっていることを実感します。横浜たまプラーザ校においては、そうした皆さまのご期待に沿えるようなクラスも展開していくつもりです。意図的な幼児教育が小学校受験のためだけでないという考えが広がっていくことを期待しています。

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