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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

上海での講演会

第642号 2018年9月21日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 9月15日(土)の夕方、2コマの授業を終えた後、羽田から上海に向かいました。16日(日)の午後から「Mo Study 未来教育中心」にて、「AI時代、子どもをどのように教育すべきか」というテーマで講演を行いました。中国での新しい提携先(東方小熊)と昨年9月に南京教室を開校しましたが、今度は上海に東方小熊としての初めての教室を開くことになり、その開校に合わせた記念講演会でした。この「未来教育中心」という施設は不動産会社が作った施設で、19の教室を持つ、いわば民間の「少年宮」のようなところです。さまざまなおけいこ事を1カ所で行うことができます。その中の3つの教室を借り、こぐま会の教育を上海の幼児たちに提供しようというのです。だいたい日本でも行われているおけいこ事が全部そろっているようです。英語・ダンス・運動・ピアノ・お絵描き・習字・囲碁・化学実験・思考訓練・表現力を高める教室・バスケット教室・テコンドー・・・といったもので、1階が学習系、2階が運動・芸術系となっていて、いわば子どものカルチャースクールのような場所です。日本でも、預かり保育を行うところが同じ施設でおけいこ事を行うことは多くあるようですが、施設の規模が違いますし、システム作りが今の中国を象徴しているように思います。10月に第2番目、12月に第3番目の施設が、上海の他の地区にもっと大きな規模で作られるようです。それに合わせて「東方小熊」も教室を展開していきますので、年内に3つの教室が上海にできることになります。一人っ子政策を解除した中国では、世界各国からさまざまなプログラムが導入され、幼児教育ビジネスはいわば戦国時代の様相を呈しています。何が生き残るか、結局最後は質の高い幼児教育が求められていくはずですから、思考訓練の盛んな中国では「こぐま会」の教育は必ず受け入れられ、生き残っていくはずですし、その自信はあります。理念のない教育は生き残ることができないということは、過去の事例で証明済みです。明確な教育理念、系統だったカリキュラム、学習内容に沿った教具・教材、家庭用学習手引き・・・こぐま会には、すべてがオリジナルなものとしてそろっています。支持されない理由はありません。その証拠として、以前もお話しした通り「ひとりでとっくん365日」の海賊版が10社ほどから出されている事実を見れば明らかです。この海賊版を撲滅するために、このたび上海の大手出版社から、保護者向けの学習手引き書も付けた、新しい「ひとりでとっくん365日」を出版します。そのうえで、こうした海賊版を排除していくしかありません。

セミナーでは「AI時代、子どもをどのように教育すべきか」と題し、将来を見据えた幼児教育のあり方について、以下のような内容でお話しさせていただきました。

AI時代、子どもをどのように教育すべきか
  1. KUNOメソッドの教育理念
  2. 6領域の具体的内容
  3. 教育方法としての事物教育・対話教育
  4. 3段階学習法とは何か
  5. 家庭における子育て法

過熱気味の中国の幼児教育においても、思考訓練とされる講座はワークブックを使った教え込み教育がほとんどです。最初は人気があっても、内実が分かってくると保護者の方々も冷静に考えるようになり、教え込みの訓練では考える力は育たず、効果もないことが分かると離れていってしまいます。ですから、事物教育や対話教育を中心に据えたKUNOメソッドは、相当新鮮に映ったはずです。子どもたちの認識能力を高めるために、物事への働きかけを大事にするメソッドは、必ず根付いていくはずです。講演会の最後に、質疑応答の時間を設けました。予想した通り、たくさんの質問をいただきました。そのうちのいくつかをご紹介します。

  1. 「日本のメソッドも中国に入っているが、どれも形を教え込む教育のように思え、参加しようかどうか迷っていたが、KUNOメソッドはそうしたものとどこが違いますか?」
  2. 「生後6カ月ごろから幼児教育を受けさせてきたが、何も効果が見られません。何が間違っていたのでしょうか?」
  3. 「家庭での教育では、どんなことに注意したらよいのでしょうか?」
  4. 「うちの子どもは人の前で話すのが大変苦手だが、自信を持たせるために何か良い方法はありますか?」

1.の方も2.の方も、おそらく日本から入ってきた教育に期待して実際にやってみたり検討してみた結果、形を教え込まれるばかりで、こんな教育でいいのかと考えさせられたのだと思います。フラッシュカードや計算だけを早いうちからさせる教育に、疑問を持たれていたのでしょう。こうした声は、中国のみならずシンガポールでもベトナムでもタイでも、お隣の韓国でも耳にしました。日本の教育に期待しながらも裏切られた感を持っている海外の方々が多いのは残念なことですが、これから海外に広げていきたいと考えているわたしたちは、その現実をしっかり受け止めなくてはなりません。ビジネス先行の教育は、どこかにごまかしがあるのでしょう。しかし、それを見抜く力は日本人以上に持っているはずです。

こぐま会は現在、海外6カ国(韓国・中国・ベトナム・タイ・シンガポール・インドネシア)で提携教室を展開しています。世界中で幼児教育がブームになっている今、さまざまな国のメソッドが、中国を始め東アジアや東南アジアの国々に導入されています。そうした状況の中で、こぐま会の「KUNOメソッド」がどのように評価されていくのか、不安と期待が交錯し複雑な想いですが、現場で構築し実証してきたメソッドですから、必ずや現地の方の支持を得られると期待しています。

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