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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

父親のための受験講座

第611号 2018年2月9日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 2018年最初のお父さまの勉強会「土曜ゼミ」が、2月3日(土)の夜に行われました。今年も50名以上の会員の皆さまにご参加いただき、懇親会も大変盛り上がりました。「お父さまにも正確な入試情報をしっかりお伝えし、夫婦共通理解のうえで冷静な判断をしていただきたい」という想いで、10年間続けてきました。年々参加者が増え、これまでお母さま中心の関心事であった小学校受験にお父さまも積極的に参加されるようになってきたことを強く感じます。

第1回のセミナーでは、1時間半ほど私のほうから入試の現状をお伝えし、その後昨年秋の受験を経験されたOBのお父さまに、「受験における父親の役割」についてお話をしていただきました。セミナー終了後、懇親会に移り、最初の会でしたから恒例の自己紹介をお1人ずつお願いしました。小学校受験に対する意気込みを語ってくださる方もいれば、奥さまにチケットを渡され、渋々参加された方もいらっしゃいましたが、OBの方のお話を聞き、気持ちを改めてがんばらなければ・・・という方もたくさんみられました。はじめて受験される方がほとんどですが、中には2回目、3回目のお父さまもいらっしゃいました。グループごとの懇親会は大いに盛り上がり、父親としての悩みを共有できたことを大変喜ばれていました。渋々参加された方も、また参加したいという気持ちになって帰られたことを大変うれしく思います。

働き盛りのお父さま方にとって一番の悩みは、どんな形で受験準備に参加したらよいのかということのようです。平日はほとんど子どもの顔を見るのも難しい生活の中で、奥さまにだけ任せるのは申し訳ないという思いが強く、それぞれ工夫して子育てに参加されているようです。一方で、「入試は子育ての総決算」という学校側の考えもあり、それにしっかり応えているようです。そうした学校側の要求は、父親に対する面接試験での質問内容が変わってきたことに現れています。これまでは、父親には主に社会的な問題についての質問が中心でしたが、最近では、子育てに関する質問が中心になっています。普段の生活の中で、子育てにどう参加されているかが問われているのです。面接試験が重視されているということは、子どもの能力だけでなく、子どもを取り巻く家庭環境や家庭での子育てのあり方が問われているということでもあるのです。行動観察が重視される背景も、結局のところどのような家庭でどんな考え方で育てられてきたのかを、子どもを通して見たいという学校側の姿勢の表れでもあり、行動観察は子どもの試験というより、親の試験と考えたほうがいいかも知れません。

2018年度の入試において、父親に課せられた面接時の質問を見ると、学校側が何を父親に求めているかがわかります。ある学校の質問例を見てみましょう。

A校の父親向け質問
  1. 仕事内容について(勤務地・勤務時間・休日・帰宅時間・出張や転勤の有無など)
  2. 志望理由をお聞かせください
  3. なぜ公立ではなく、私立小学校を選びましたか
  4. 本校に期待することは何ですか
  5. この学校とお子さまの合っているところはどこだと思いますか
  6. キリスト教教育を受けてよかったことは何ですか
  7. 学校との連携をどのように取ればよいと考えていますか。
  8. ご家庭での教育方針で大切にされていることは何ですか。
    →それをどうお子さまに伝えていますか
  9. 休日はお子さまとどう過ごしていますか。何をして遊びますか
  10. お父さまから見て、どんなお子さまですか
  11. お父さまから見て、お子さまが成長したなと思うところはどこですか
  12. お子さまの名前の由来についてお聞かせください
  13. お子さまが興味を持っていることは何ですか
  14. 将来どんな女性になってほしいと思いますか
  15. 幼稚園(保育園)での運動会の様子をどう聞いていますか
  16. お父さまが小さい頃、どんな遊びをしましたか
  17. 学生時代に熱中したことは何ですか。その経験が今どのように活きていますか

他校でも同じような趣旨の質問が多くみられます。
  1. お子さまがなりたいものをご存知ですか。また、他になりたいと言っているものはありますか
  2. お忙しいと思いますが、お子さまとの時間をどのようにとっていますか
    →子どもに確認
  3. 最近、お子さまががんばっていることをお話しください
    →子どもに確認
  4. 最近奥さまと、お子さまについてお話しされたことは何かありますか
  5. 家事の分担をどのようにされていますか
  6. お子さまがくじけそうになった時どうなさいますか
  7. 家族で大事にしている行事はなんですか
  8. お子さまにどんな苦労をさせたいと思いますか
  9. 今幼稚園でどんな遊びがはやっているか知っていますか
  10. お父さまが子どもの頃よく歌っていた歌をここで歌ってあげてください

普段の生活の中で、どれだけ子どもと関わり、父親としての役割をどう果たしているのかが問われています。想定問答集をやって、答えを頭に刷り込んでいくというような準備では、必ずメッキであることが見抜かれてしまいます。日常生活の中で、本当にどれだけ実践しているかが問われているのです。そうした家庭環境の中で育ってきた子どもを、行動観察で評価し、面接試験での様子とセットでその学校にふさわしいご家庭かどうかを判断しているはずです。行動観察を子どもの試験と勘違いし、徹底して形を教え込むトレーニングを積むのは、こうした学校の求める意図とまったく逆の方向を向いているのです。その証拠に、教え込みの行動観察対策を学校側が明確に批判しています。「入試は子育ての総決算」の意味を、もう一度考えてみる必要がありそうです。

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