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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試結果報告会で伝えたこと

第603号 2017年12月8日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 今年度の都内の入試も、筑波大学附属小学校の試験を残すだけとなりました。今年度の私立小学校の入試を総括するセミナーを、12月3日に午前と午後の2回にわたって行いました。1月から始まる学校別入試分析セミナーに先立ち、今年の私立小学校の入試がどのように行われたのかをさまざまな視点で分析し、来年以降受験される皆さまに正確な情報をお伝えする会です。今年は、以下のような内容でお伝えしました。

私立小学校入試全体の総括
2018年度「入試結果報告会」
1. 2018年度入試はどのように行われたか
a. 入試日程
b. 問題傾向
c. 合否判定
d. 補欠合格者の動き
2. 学力テストの傾向
a. どんな領域から多くの問題が出されているか
b. 典型的な入試問題の紹介と分析
3. これからの入試問題を予想する
a. 入試に臨む学校側の基本姿勢
b. 今年の入試問題から見えるこれからの出題傾向
b-1. 基本問題が形を変え、工夫されて出題されている
b-2. 予想通り、作業を伴う課題が多い
b-3. 聞く力が重視される背景
b-4. 詰め込み式の受験対策は学校側が一番嫌い、警告を発している
4. 行動観察の傾向と対策
a. 総括  テーマは「人の話を聞く」「チームワーク」
b. 学校別出題内容の紹介と全体の傾向
c. 学校が求めている子ども
d. 家庭での留意点

2018年度入試の特徴をまとめると、次のようになります。
  1. 入試日程については大きな変化は見られないが、志願者が増えたため試験日を1日から2日に増やした学校もある
  2. ほとんどの学校で志願者が増え、昨年と比べ競争率が高くなっている
  3. 問題は大きく変化した。全体として易しくなったが、一つ一つの問題を見ると、学校側の工夫が随所に見られる
  4. しかし、単純なトレーニングで解ける問題ではなく、どの問題においても「考える力」が求められている。また、作業して答えを導き出す流れは継続している
  5. 「話の内容理解」に象徴される「聞く力」が、さまざまな領域で重視されている
  6. 図形領域の出題傾向が変わり、図形感覚だけでなく論理性が求められている
  7. 「法則性の理解」に関する問題も、例年より増えている
  8. 数領域は、予想したとおり「数の総合問題」として出され、相当の集中力・作業力が求められている
  9. 一部の学校を除き、実力主義の合否判定であるが学力主義ではない。ペーパー試験でどんなに高得点をとっても、行動観察での評価によって左右される。ペーパー試験の内容が易しくなれば平均点が上がり、その分、行動観察・面接試験の比重が高まっている
  10. 合否判定の基準に。通学時間や距離が考慮された可能性がある。特に神奈川県内の学校では、これまで都内の受験者の合格辞退が相次いだためか、今年は都内からの受験者には厳しい結果になった
  11. 行動観察は、子どもだけの試験ではなく、実は親の試験でもある。これまでの子育ての結果としての子どもの行動を願書・面接で裏付け、評価している。その意味で、行動観察は、何ができたか・できなかったかの試験ではない
  12. どれくらいの数の水増し合格があったのかは分からないが、補欠の繰上げ合格が昨年よりも多く見られる。国立の発表があればさらに加速される
  13. 難易度は別として、今年出題数の多かった問題、特徴的な問題は
    話の内容理解 / 回転図形 / 図形系列 / 対称図形 / 数の総合問題
    であり、特に「回転図形」「対称図形」が多かったのも予想した通りであった
  14. 行動観察では、今はやりの「非認知能力」が求められ、集団教育のレディネスとして「協力関係」がもっとも重視されている

働く母親に寄り添った学校改革が進む中、これまで小学校受験では不利だと考えられていた「ワーキングマザー」の受験が増えたことが、受験者を増やすひとつの原因となっていることは間違いありません。また小学校入試に限らず、教育界全体を覆う「テストのやり方」に関する疑問が、問題づくりにも影響していることが予想されます。テスト問題をつくる先生方の世代交代もあるでしょう。多くの要因が重なって、今年の入試問題は大きく変わりました。その流れをしっかり把握し、無理のない基礎教育の積み上げの結果として小学入試を受け止めないと、受験の名において、子どもの成長する芽を摘み取ってしまうことにもなりかねません。入試の現状をしっかり受けとめ、商業主義の間違った宣伝に踊らされないようにしていただきたいと思います。子どもの成長にとって大事なものを「間違った受験対策」によって失うことが無いよう、心がけていただきたいと思います。

毎年、この入試結果報告会の日から公表してきた、今年のこぐま会の合格実績をここに掲げます。この合格者数は、こぐま会において4カ月以上継続して学習してきた子どもたちの結果です。1回のテストを受けただけで会員扱いにし、合格者の数にカウントする塾もあると聞きます。教育活動の結果として合格者の数をカウントできないとなれば、それはまともな教育機関とはいえません。そうしたことが続く限り、この業界は1人前の教育機関として認知されない、つらい時代が続くでしょう。そうしたことがなくなることを願っています。

今年度入試の合格実績は、こちらのページをご覧ください。
「2018年度入試 合格者数」

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