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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

基礎教育の大切さを肝に銘じて

第599号 2017年11月10日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月1日から始まった都内の私立小学校の入試も、多くの学校で合格発表があり、残すところ早慶関係の私立小学校のみとなりました。入試を終えた子どもたちからの聞き取り調査も順調に進み、12月3日に行われる「入試結果報告会」では、今年の入試がどのように行われたかを、さまざまな角度からお伝えできると思います。小学校入試が大きく変わりつつある現在、実際の入試の動向をふまえ、どんな能力が求められているかをしっかり把握して、有効な対策をとる必要があります。

現段階で判明している今年の入試の特徴は、

  1. ほとんどの学校で昨年より受験者が増えている
  2. 行動観察での様子がより緻密に評価され、面接とあわせて家庭教育のあり方が問われている
  3. 指示の聞き取り(聞く力)がさまざまな場面でチェックされている
  4. ペーパーは基本問題が多いが、指示がしっかり聞けないと正解できない問題が多い
  5. 予想通り、作業能力を問う問題が難しく、そこで差が出たように思われる
  6. 変化の過程をイメージ化できる能力が求められている
  7. 親子3人で会話する場面を面接で取り入れた学校が多い
  8. 合否判定は、学力の高い順ではないことだけは、はっきりしている
  9. 合否判定に絡み、通学時間を今までより重視する学校も出てきた

ペーパー問題の意図やその難易度に関しては現在分析中です。その結果は、12月3日の入試結果報告会でお伝えしますので、ぜひご参加ください。

さて、休む間もなく新年度の授業が始まりました。合否判定の在り方が変化する中、入試で問われる重要な評価項目が何なのかを常に考えながら、1年後の入試に向けて有効な対策をとっていかなければなりません。合否の結果が出るたびに、私たちは「学力順に合格が決まっていく入試のほうがどれだけ楽か」と、いつも思います。学力があっても合格できない現状はいろいろな見方が可能ですが、認知能力だけでなく非認知能力も大事だといわれている現在、この小学校入試はその典型であるように思います。その意味で、小学校入試は子育ての総決算であるし、教室での学習だけではなく、日ごろの生活体験がどれだけ大事かを気づかせてくれます。教室でのトレーニングですべてが解決すると思ったら、それは大きな間違いです。日頃の子育ての在り方を振り返り、将来の集団学習のレディネスがしっかり身についているかどうかを常に考えていかなければなりません。ペーパー学習ですべてが解決すると思っているとしたら、それは合格には程遠いと言わざるを得ません。

こぐま会の教育には、明確な目標があります。それは、「考える力」を育てることです。この視点を抜きに、小学校の受験対策はあり得ません。また、教育方法は「事物教育」「対話教育」以外にあり得ません。この2つの方法を用いて賢い子どもに育てるためには、時間が必要です。1年間かけてじっくり育てる、そのためには、基礎から応用への道筋をしっかりつけた体系的な指導が必要です。受験のためではなく、幼児期の基礎教育として必要な学習をしっかり積み上げていけば、それが合格への扉を開いてくれるはずです。「過去問対策」「難問トレーニング」といった言葉に踊らされて、基礎がないまま難しい問題に取り組ませることほど無駄な学習はありません。今年の入試問題を分析すれば、私たちが主張してきた基礎教育の大切さがわかるはずです。そのことを肝に銘じて、これから1年間の家庭学習をしっかり積み上げていってください。

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