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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏休みの大事な2つの課題

第586号 2017年7月28日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 先週から始まった夏季講習会は連日朝から夕方まで行われ、教室は子どもたちの元気な声であふれています。秋に受験を控えた年長の子どもたちは、お弁当持ちの講習会でがんばっています。午前中は学力向上のための学習、午後は行動観察の対策として、踊りや劇遊びの練習を重ね、最終日に保護者の前で発表をするという流れになっています。
この大事な時期になぜ、学力を高める学習トレーニングと同じくらいの時間を、ペーパー以外の活動に当てるのか。それには大事な理由があります。行動観察の対策という以上に、年長のこの時期のこうした集団活動は、学習への取り組みにとっても大変意味のある、大事な経験なのです。普段の授業では学力を高める学習がほとんどで、1時間時半の時間内で自由に振る舞えるのは休み時間ぐらいしかありません。そのような環境では、自分らしさを発揮するチャンスもあまりありません。特に、人の前での発表になると尻込みをしてしまう子も見られ、教師と子どもとの関係も、子ども同士の関係も固定されてしまう場合が少なくありません。学習場面における他者との関係が固定されてしまうと、教える教師も「こんな感じの子かな」と受け止めてしまいます。特に、お話づくりの発表のように、人前で話すことを極端に嫌う子の場合には、性格的なものも反映しているのではないかと考えざるを得ません。

こうした人間関係の中で夏休みを迎え、お弁当持ちの5日間の講座に毎日参加すると、学習場面では見せなかった「その子らしさ」を発揮し、それまではほとんど口を開かなかった子が、踊りや劇遊びの時間になると見違えるように主体性を発揮し、まったく違った振る舞いをする子も少なくありません。普段から子どもを見ている教師にとっては驚きの連続です。「普段は、あんなに元気で積極的な子なんだ」と、これまでの認識を改めなくては・・・と思うこともしばしばです。5日間と短い時間ではありますが、そこでの経験によって、子ども同士や教師との関係に変化がみられ、9月以降の通常クラスの中で、積極的に学習に取り組む子どもへと変化していくのがよく見られます。

その意味で、子どもが変わることを期待するとすれば、午前の学習場面ではなく、午後の集団活動においてです。いろいろな経験を重ねる中で、普段のその子らしさを発揮し、学習場面においても自信を持って主体的に物事にかかわるようになり、自分で考え、自分で判断し、自分で行動できるようになっていきます。今盛んに言われている「非認知能力」は、こうした活動の中でこそ身につき、そのことがまた学習場面にもいい影響を与える結果になると確信しています。

さて、残り3カ月となった受験生にとって、この夏のがんばりが合否に大きく影響してきます。夏の大事な課題は2つあります。

  1. 1. 基礎学力が本当に身についているかどうかを、さまざまな角度からチェックする
  2. 2. できるだけ多くの過去問に取り組み、自分の力で解くことができるかどうかをチェックする。間違いの多い問題は、基礎まで戻ってトレーニングする

1つ目の課題である、基礎学力を系統的にチェックできるようにするために、ばらクラス会員の皆さまには、夏休みに入る前に「基礎学力点検ボード」をお渡ししました。これは、各領域の基礎的な課題を使いやすく90枚のボードにまとめ、1枚ごとにさまざまな角度から質問し、練習できるようにしてあります。このボードの中から苦手項目を抜き出し、それを徹底して学習することが大事です。そしてこの90枚を、入試直前2週間前くらいから繰り返し行うことで、基礎学力の総点検ができ、自信を持って試験場に向かうことができるはずです。

「基礎学力点検ボード」目次

未測量
1. 量の相対化・系列化
2. 順対応
3. 逆対応
4. 量の等分
5. シーソー
6. つりあい
7. 三者関係の理解
8. 言葉による関係推理
9. 量の保存
位置表象
10. 位置の対応
11. 右手・左手
12. 方眼上の位置
13. 方眼上の位置と移動
14. 地図上の移動
15. 四方からの観察 A
16. 上から見たもの
17. 四方からの観察 B
18. 観覧車
19. 二者の異同
20. 二重分類
21. 観点を変えた分類
22. 仲間はずれ
23. 分類計数
24. 同数発見
25. 一対一対応
26. 数の多少
27. 数の構成 A(7の構成)
28. 数の構成 B(10の構成)
29. 迷路を使った数の構成
30. 一対多対応
31. 一対多対応の応用
32. 数の等分
33. 包含除
34. 数の増減 A
35. 数の増減 B
36. 数のやりとり
37. 数の変化(魔法の箱)
38. 数の総合問題 A
39. 数の総合問題 B
40. 数の総合問題 C
図形
41. 同図形発見 A
42. 同図形発見 B
43. 線の模写
44. 図形模写
45. 形を利用した描画
46. 三角形を使った構成 A
47. 三角形を使った構成 B
48. 図形構成 A
49. 図形構成 B
50. 図形分割 A
51. 図形分割 B
52. 立体構成
53. 展開図
54. 対称図形 A
55. 対称図形 B
56. 対称図形 C
57. 重ね図形 A
58. 重ね図形 B
59. 図形系列
60. 回転図形
61. 方眼を使った系列
言語
62. 一音一文字
63. 同頭音
64. 同尾音
65. しりとり
66. 反対ことば
67. ようすことば
68. 動詞の理解
69. 短文づくり
70. 時系列
71. ものの説明
72. お話づくり A
73. お話づくり B
74. お話づくり C
75. お話づくり D
76. 話の内容理解 A
77. 話の内容理解 B
78. 話の内容理解 C
79. 話の内容理解 D
80. 昔話
その他
81. 聞き取りの練習 A
82. 聞き取りの練習 B
83. 聞き取りの練習 C
84. 聞き取りの練習 D
85. 短文復唱
86. 私は誰でしょう
87. 具体物の記憶
88. ひも通し
89. 鏡映像
90. 季節

2つ目の課題である過去問トレーニングは、この夏にこそ徹底して行うことです。難しい課題は、この夏を含め9月いっぱいで終了させておかなければなりません。その意味で、この夏は大事な時期です。もちろん第1志望で受験する学校の過去問に当たることが先決ですが、ゆとりがあれば、受験する・しないに関係なく、「雙葉小学校」「聖心女子学院初等科」「慶應義塾横浜初等部」「筑波大学附属小学校」、この4校に関しては必ず取り組んでください。今、入試問題の作成において入試全体をリードする学校です。この4校で出された問題が、他校に波及することが多くなってきているからです。また、どこまで難しい問題をやっておけばいいかという答えにもなるはずです。根拠のない難しい模擬テストの問題に振り回されることなく、実際に入試に出された根拠のある難問に挑戦してください。

ところで、ペーパートレーニングに取り組む際、この夏にぜひやっていただきたいことがあります。それはどんな問題でも、間違えていても合っていても、答えの根拠を説明させることです。話す力を育成するだけでなく、言葉を通して論理的思考力を育成するためには、どうしてもやっておきたいことです。また、本当に理解できたかどうかをチェックするには、大変よい方法だからです。そうすると、どこで間違えたかも確認できますし、間違えていても、あと一歩のところまで理解は進んでいたということも分かります。
私は普段の授業でも、基礎段階が終わった5月以降の授業では、できる限り答えの理由説明をみんなの前でさせます。間違えていても合っていてもです。最初は、幼児の授業でそれができるかどうか半信半疑でしたが、年長児でも前に出て、ホワイトボードやカードを使って、自分の考えを説明できるということについて、確信を持てるようになりました。こうした理由説明を、ぜひ家庭学習の場でも実行してください。

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