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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

これから入試対策を始める方に

第581号 2017年6月23日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 秋の受験を控えた年長児の皆さまは、基礎段階の学習を終え、過去問に挑戦している時期だと思います。また、最大の山場である夏休みを控え、これまでのテストの結果を分析し、何が弱点かを明確にしなければなりません。ただがむしゃらにペーパートレーニングを行っても意味はありません。どこまで理解できていて、どこから理解できなくなっているのかをしっかり把握し、夏の学習目標を決めなくてはなりません。ところで、最近の入試の特徴は、

  1. 知識に訴える問題は、常識問題以外にはほとんどない
  2. 指示をしっかり聞き、問題の意味を理解し、作業して答えを導き出す課題が増えている。作業して解く問題の典型は、「飛び石移動」「交換」「図形分割」「対称図形」「法則性の理解」である
  3. 聞く力を重視する傾向がみられ、「話の内容理解」「関係推理」の問題数が増えている
  4. 回転の要素が入り込んだ問題が増えている
  5. 数の問題は「一場面における数の総合問題」が主流になり、生活場面を使ってさまざまな設問が用意されている
  6. 図形領域の問題の中心は「図形構成」「図形分割」に替わり、「対称図形」「回転図形」「重ね図形」が増えている
  7. 「一音一文字」の理解に関する問題が、さまざまな形で登場している
こうした傾向に対処するために必要なことは、毎日たくさんのペーパーをこなすことではなく、1枚1枚のペーパーを大事にし、深く学習することです。深く学習するということは、

  1. 解き方を教えるのではなく、時間がかかっても自分で解かせる
  2. 正解でも、不正解でも、必ず理由を説明させる
  3. 問題の聞き取りができていない場合もあるため、どんな質問だったか復唱させる
  4. できれば、お父さまお母さまが生徒になり、子ども自身に問題を考えさせ、質問させる

こうしたやり方で1枚のペーパーを深く学習することで、さまざまな角度からの学習ができ、理解が深まるはずです。ぜひこれを実行してください。

さて、来年受験を迎える年中のお子さまをお持ちのご家庭では、この夏休み前後から対策を始める方が増えてきます。学校選びのために1年前から学校説明会に参加したり、塾選びのために体験授業を受ける方が急に増えてきます。家庭学習の進め方についてのご相談が増えるのもこの時期からです。

ところが、大勢の皆さまのご相談をお受けしていると、あまりにも小学校受験に対する基本理解ができていなかったり、間違った理解をしている方が多いのに驚きます。
一番間違った理解は、「小学校受験はどれだけたくさんの過去問をこなしたかで決まる」と信じて疑わない方々が多いということです。どこでそんな間違った認識を吹き込まれてきたのでしょうか。おそらく幼児教室を通じてだろうと思います。それでしか、今の幼児教室は成立しないからです。カリキュラムがあるわけでもなく、教科書があるわけでもなく、子どもが物事をどう理解していくかの科学的な根拠もなく、ただただ過去問をトレーニングするしか方法がないからです。学校側が出題する問題の意図の分析もしないで、過去問の解き方だけを指導し、いったい何を身に付けさせようというのでしょうか。その過程で、子どもが子ども自身で考え、判断し問題を解決していくチャンスを奪い、教え込まれた受験勉強で、子どもの伸びる芽を確実に摘み取ってしまっているのです。これが、間違いだらけの受験対策です。1年後に解ければいいものを、1年前に前倒ししてやる教育的な意味がいったいどこにあるのでしょう。必要なのは、子どもの理解の道筋や学ぶ内容の系統性を踏まえた、真に教育的な積み上げです。幼児期だからこそなおさらです。

入試対策は最初の一歩が大事です。最初から間違った受験対策のスパイラルに取り込まれないようにしてください。そのためには、現在の入試の状況をしっかり把握することです。情報が少なく、その分意図的な情報操作がしやすい小学校受験ですが、学校側が出題する問題をきちんと分析すれば、どんな学習が必要かはおのずからわかってきます。指導の現場にいる人間にはその分析を行う義務がありますが、科学的な分析がなく、経験だけが幅を利かせているのが現状です。

しかし、これだけ幼児期の教育に関心が集まり、幼小一貫教育の必要性が叫ばれ、アクティブ・ラーニングが必要だ、非認知能力が必要だといわれている時代です。学校側がこうした世の中全体の動きに無関心であるはずはありません。まともな幼児教育を実践することが小学校受験の対策に一番効果的だという「こぐま会」の考え方が、やっと理解していただける時代になったということです。受験対策は子どもの発達を無視した「特別な教育」であってはならないのです。

こうした考えのもと、来年以降受験する方々のために2つのセミナーをご用意いたしました。ぜひご参加ください。

年中から始める正しい受験対策 「第2回 聖心合格のために」

日時
6月27日(火) 10:00~11:30
内容
  1. 聖心受験者が最低限知っておくべき学校の現状
  2. 昨年度の入試から、これからの入試動向を探る
  3. 今から過去問に取り組む間違った学習法
      -過去問分析を通して、求められている能力の質を知る-
  4. 洗練された問題を自分の力で解くために、学習をどう積み上げるか
  5. 行動観察で学校側が求めていること
  6. こぐま会の聖心対策

年中から始める正しい受験対策 「第3回 雙葉合格のために」

日時
7月11日(火) 10:00~11:30
内容
  1. 雙葉小学校の入試の現状
  2. 合否判定に絡むいくつかの疑問とその解消
  3. 難問を解くために、どのように学習を積み上げるか
    -過去問分析に即して-
  4. 行動観察で問われていること
  5. こぐま会の雙葉対策


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