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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

年中からの望ましい受験対策

第576号 2017年5月19日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 5月に入り、学校説明会が始まりました。6月にかけて多くの学校で第1回目の説明会があります。この説明会には、今年受験される年長の保護者さまだけでなく、来年受験される年中の保護者さまも大勢参加されます。それと並行して、年中児の受験に向けた教室通いが始まります。こぐま会でも、これからは年中児向けの体験授業に大勢の皆さまが参加されるはずです。

5月連休に行った「女子校合格フェア」のセミナーに引き続き、これからは、年中向けの準備セミナーを数回行う予定ですが、その皮切りとして5月16日(火)の午前中に「年中からの正しい受験対策」と題したセミナーを行いました。会員の皆さまだけでなく、これから通塾をお考えの方々も大勢参加されました。当日は以下のようなお話をさせていただきました。

年中から始める正しい受験対策

1. 入試の現状
2. どんな問題が出されるのか
最近の入試に見られる新傾向の問題
3. 合否判定は何が決め手か
学力だけでは合格できない
なぜ、行動観察が重視されているのか
4. 間違った受験対策にならないために
ペーパー主義の準備教育を学校側は受け入れない
5. こぐま会の受験対策の方法について
教科前基礎教育
事物教育
対話教育

初めて受験される方に「小学校受験に関する基礎知識」があまりにもないのには驚きますが、それは当然と言えば当然です。学校説明会で出される受験情報は、きわめて事務的なものが多く、試験の内容や評価について学校側からのメッセージはほとんどありません。ですから受験をお考えの方は、出版物や塾の説明会に行ってそこから情報を得るのですが、塾の情報がすべて正しいといえるかというと、それは疑問です。塾側が生徒集めに都合の良いように、実際とは違った情報を意図的に流す場合も少なくありません。また、多くの間違った噂話が飛び交うのもこの世界独特の出来事のようにも思います。そもそも学校側から入試に関する必要な情報が提供されないことが、受験準備の教育をゆがめている最大の原因です。この点に学校側が気付いていないのが問題です。ですから、私も機会があるたびに、学校側に対して入試情報を詳しく出していただけるようにお願いしてきました。特に、入試問題がどのような意図でつくられ、それを子どもたちはどのように解決していくのかという道筋が明らかになっていません。1年以上もかけて入試に向けた学習をするのに、最初から過去問を解かせるような、まったく子どもの発達や理解度を無視した教育が、平然と行われているのが実態です。これでは、子どもたちの考える力を正当に育てることはできません。私たちがセミナーを何回も主催し、そこで具体的な問題を詳しく解説するのは、一つの問題にこめられた出題意図の中に、学校が求める「学力観」が必ず隠されていると考えているからです。こうした地道な作業を続けることによってしか、受験のための教育を幼児期の基礎教育とつなげることはできません。

これから入試対策を始められる年中児の保護者の皆さまにぜひお伝えしたかったのは、最近の入試で求められている学力は、知識の量ではなく、考える力だということです。自ら考え・判断し・行動できる子になってほしい。そのために必要なのは、自ら物事に働きかけ、試行錯誤して身につけていく力であり、決して1年も前から過去問に取り組み、答え方を形で教え込んでいく教育ではありません。アクティブ・ラーニングの言葉に象徴される主体的な学びは、今小学校入試で一番求められている力です。また、行動観察が重視される背景は、その子がどのような育ちをしてきたか、その結果これからの学校生活をどのように送っていくことができるのかを見ようとしているもので、決して「~ができる・できない」で評価しているわけではありません。行動観察を子どもの試験だと思ったら、それは大間違いです。家庭での子育ての在り方、特にお母さまの子育てが問われているのです。形を教え込む教育を排除するようなメッセージを学校側から出している現状は、それだけ塾で行われている教育指導を好ましくないと思っているということです。内部進級が決まった子どもに対し、受験塾には行かないようにと通達しているのは、学校側が今の受験指導の在り方に疑問を抱いている何よりの証拠です。私たちが入試情報を正しくお伝えしたいと考え、こぐま会の設立当初から問題分析のセミナーを行ってきているのは、子どもたちを受験の弊害から守りたいと考えてきたからにほかなりません。

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