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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

韓国の幼児教育事情を視察して

第56号 2006/05/11(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 連休を利用して、韓国の幼児教育事情を視察してきました。今回の目的は、07年から義務化が予定されている韓国の幼稚園を見学したいこと。そして、3月から80近くの幼稚園や保育園に導入されはじめた「こぐま会の教材」を使って指導している韓国の現場の教師と会って話をしたかったこと。また、6月から始まる「KUNOメソッド」の幼児教室の開設準備に立ち会うことなどでした。

 韓国の金浦空港から、ホテルに向かう車の中から見たソウルの風景に、まずびっくりしました。車が多いこと。川を挟んで向こう側にもこちら側にも上下線があり、そのうえ片側4~5車線ある道路に車がびっしり。東京の渋滞になれた私でもびっくりするほどの車の量でした。その上、マンション群がいたるところに林立し、建築中のビルやマンションもたくさんありました。国全体が大きく発展している、躍動感を肌で感じました。

 ソウル近郊の新都市に開設する「KUNOメソッド」幼児教室に、韓国各地から現場の先生たち15人ほどが集まり「こぐま会の教材」を使って指導した経験を踏まえ、意見交換をしました。現場の先生方の一番の悩みは、テキストを使った授業で、回数を重ねれば重ねるほど理解力に差が出てしまい、わからない子にどのように教えたらいいのか・・・ということでした。子どもに接する先生方の気持ちとしては当然のことだと思います。

 そういう時にこそ、「事物教育」が意味を持つこと。繰り返しの試行錯誤の中でしか、子どもたちの能力は育たないこと。教え込みによっては何も解決しないこと。子供の間違いには必ず理由があるからそれをしっかり把握すること。対話教育によって子供たちの理解しているレベルを教師がしっかりおさえておくこと・・・そうした幼児教育の指導の原則のようなものを、具体的な学習内容に即してお話したところ、参加者の皆さんは真剣に聞いてくれました。

 小学校受験もない韓国で、日本以上に幼児教育が熱心なのは、優秀な子供に育て、いい大学に入学してほしいという親の願いがあるからだと思いますが、その前提として、私が見学した幼稚園の設備を見る限り、幼児教育に対する考え方が実にしっかりしているということです。算数を学ぶ教室、音楽を学ぶ教室、造形を学ぶ教室、理科の実験をする教室・・・・・と日常の幼児教育が、日本と比べまったく違った発想で行われているのです。幼児教育に対する親や保育者の考え方が、日本とはまったく違うことを痛感しました。日本の遊び保育中心の幼稚園教育は、どこかで大転換しないと、将来とんでもないことになると主張してきた私の考え方は、韓国の実情を見て、誤りでなかったことを再確認しました。

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