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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

合格に向けた正しい学習法

第542号 2016/8/12(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 6月から始まった「合格のための室長教育講演会」はすでに2回が終了し、8月6日の第3回目は「合格に向けた正しい学習法」と題して行いました。これまでに入試の現状報告や入試問題の分析等を行ってきましたので、今回の講演会では、これから何をどう実行するかの具体的な学習方法をお伝えし、間違った受験対策で子どもの成長の芽を摘み取ってしまわぬよう強くお願いしました。その内容は以下の通りです。

1. 現在の入試で求められているもの
考える力だけでなく、非認知能力の重要性
 「自分で考え、自分で判断し、行動する自立心」
2. 子どもの考える力は、ものごとに働きかける経験によって育つ
最初からペーパートレーニングの学習では、思考力は育たない
間違った対策の最たるものは、一年前からペーパーのみで過去問に取り組ませること
3. 幼児の思考を育てる3段階学習法とは
体を使い(集団活動)
手を使い(個別課題学習)
頭を使い(ペーパートレーニング)
4. これから入試までの1年余りの学習計画
基礎学習(年中9月~年長4月)
応用学習(年長5月~年長7月)
総合実践トレーニング(年長8月~年長10月)

現在の入試内容が多岐にわたっており、パターン化されたペーパー学習のみの過去問対策では、これからの時代の入試問題には対応できません。それどころか、将来の学習の基礎をつくる大事な幼児期の教育にそぐわない結果を招くばかりです。幼児期の子どもたちの教育に関して専門的な知見をお持ちの方なら誰でも理解できることですが、子どもが物事を考える力を身につけるのは、知識を与えられたからではなく、自ら物事に働きかけ、自分で試行錯誤して獲得していく経験を通して可能になります。ペーパーのみの過去問トレーニングが陥りやすい最大の落とし穴は、そこにあります。教えられてわかったつもりになってしまっているから余計に厄介なのです。頭に刷り込まれた、「小学校受験=ペーパートレーニング」という発想をどこかで捨てないと、これからの時代の入試対策としては、時代遅れのトレーニング法になっていくでしょう。教師にとって一番楽で好都合な方法、つまりペーパーをやらせて答え合わせをし、できなければ「家でわかるまでやってきなさい」・・・では、一体教師の役割は何なのでしょう。子どもたちの考える力を育てるためにどうするか。そこが指導者の役割のはずです。ペーパーを間違える子どもたちを叱りつけて、わかるまで家でやってきなさい・・・というような指導が受験指導だとしたら、子どもたちはいったいどこで救われるのでしょうか。そんな指導から1日でも早く、大切な子どもを救ってあげてください。

これからの時代の教育方法を考えるキーワードは「アクティブラーニング」です。文科省も推奨し、知識だけを与えるこれまでの教育方法を変革しようとしています。教室での授業は、知識を与える授業ではなく、みんなで議論したり新しいものを作り出していくことを通して、物事の理解を深めていこうとする教育方法にならなくてはいけません。幼児期の基礎教育の中で、30年以上も前からこうした考え方で実践しているのが、こぐま会の「事物教育」「対話教育」です。こぐま会は創立以来、ペーパーだけの幼児教育は間違っていることを主張し、その代わりに事物教育・対話教育を実践してきました。今、教育界全体が求めているそうした「知育」のあり方を、いまや小学校受験でも求め始めています。考える力を問うためにどんな問題づくりをしたらよいのか、各学校の入試担当の先生方は、いろいろ苦心して良問をつくっています。特に最近では、指示に基づいた作業能力を見る問題が増えています。物事に働きかけて答えを導き出すような問題ですが、解き方だけを指導されてきた子どもたちにとっては、対応できない厄介な問題のひとつになるでしょう。

まず体を使って経験し、次に意図的に準備された教具を使って試行錯誤し、最後にペーパーワークで理解を定着させていく3段階学習法こそ、幼児のための「アクティブラーニング」です。子どもたちがものごとを理解していく道筋に合った適切なアドバイスをしていくことこそ、指導者の役割のはずです。来年以降受験される方は、これから本格的な準備教育に入ります。その準備教育のあり方が間違った受験対策にならないよう、ぜひこぐま会の3段階学習法を参考にしてください。

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