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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

gacco通信講座 第1週の講義が始まりました

第522号 2016/3/11(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 3月9日より、「gacco(ガッコ)」にて、オンライン講座「幼児教育に新しい風を」が始まりました。 毎週水曜日に6~8回分の講座が配信されます。第1週目では、次のような内容で「KUNOメソッド」をつくりあげてきた背景と、3つの教育理念について詳しく述べています。

第1週
1-1. 今幼児教育が注目されている
1-2. KUNOメソッド 3つの教育理念
1-3. 教科前基礎教育とは何か
1-4. 事物教育はなぜ必要か
1-5. 対話教育のめざすもの
1-6. 6領域指導の内容

3つの教育理念のうち、私が一番こだわったのは教育方法としての「事物教育」でした。もちろん何を学ぶのかも大事ですが、それは、小学校の学習内容に繋げるという点で考えれば、自ずから明らかになってきます。しかし、幼児の発達を考えた時、「教科書」と「ノート」という発想は成り立たないし、ワークブックを使ったペーパートレーニングで、子どもたちの認識能力が育つはずはないと考えました。そこに、ピアジェが主張している「ものごとへの働きかけ」の重要さを加味していけば、身近な生活用品をまず使うという発想が生まれます。しかし、生活用品がすべてかというと、それだけでは不十分です。教育の意図を最大限伝えるためには、意図的に作られた「教具・教材」が必要です。また、人との関わりの中で、さまざまなことを学んでいく事実を踏まえると、やはり幼児期の基礎教育は、「事物教育」を基本とすべきだという結論に到達しました。しかも、日常行われる授業の現場で、子どものものごとへの取り組みを見ていくと、「試行錯誤する時間」がどれだけ大事かを痛感します。

もう一つの教育方法である「対話教育」は、最初から掲げていたわけではありません。子どもたちの考える力をどう育てようかと授業で悪戦苦闘している時、子どもの説明の仕方にいろいろな違いがあることに気づきました。答えが正解でも、説明させると必ずしも同じでないことに気づいたとき、結果だけを見ていてはだめだと考えました。「どうしてそうなったのか」をことばで説明させることができるのではないかと思い、「言語化」に力を入れました。すると、難しいと思っていた説明が、不十分ながら子どもたちにもできることがわかり、これを、幼児期の教育方法の一つにすべきだと考えました。答えが合っている時だけではなく、間違っている時も説明させるようになると、驚く場面に出くわしました。ある日の授業の中で、間違った答えを出した子に、どうしてそうなったのかを説明させている時でした。説明している途中で、その子が突然「先生、僕、間違っていた」と自分の答えの間違いに気づきはじめ修正したのです。言語化することを通して、子ども自身が自分の答えの間違いに気づいていった瞬間でした。それ以来、こうした言語化を中心に「対話教育」を重要な教育方法として実践してきました。現在はまだ、教師と子どもの対話が中心ですが、これからの課題は、あるひとつの問題をめぐって「子ども同士が考え方をぶつけ、議論することができないか」・・・、今はそれを模索しています。教師と子どもだけでなく、子ども同士が意見を述べ合う授業ができれば・・・と試行錯誤しています。

こぐま会の通常クラスでは、このKUNOメソッドに基づいた基礎教育を行い、受験対策としてのトレーニングは、その基礎の上に積み上げて反復練習しています。こうした基礎教育を踏まえた受験対策に対し、外部から反対意見も聞こえてきます。そんなまわりくどい教育をしないで、手っとり早く最初からペーパートレーニングをやればよいのに・・・という意見に代表されるように、事物教育などやらないで、パターン練習だけをやれば効率が良いと考えている受験生が意外に多いのに驚いています。昔のようにパターン化された知能検査のような問題であれば、それで解決できたかもしれませんが、今の時代は、多くの場合「考える力」を求める問題に変わっています。決してペーパートレーニングのみで解決できる問題ではありません。こうした考え方の受験対策では、仮に合格できたとしても、それと引き換えに、子どもの考える芽を摘み取ってしまうことにもなりかねません。こうしたペーパー主義の受験対策が、間違った受験対策の典型です。私たちは、基礎教育の充実の上に、受験対策を考えています。合格を目指すだけでなく、将来の学習の基礎をしっかりつくっておくことが必要です。ペーパー主義の教育がなぜだめなのか、第2週以降の講座の中で明らかになっていくと思います。幼児期の基礎教育の充実のためにも、30回の講座を最後までぜひお聞きください。


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