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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

受験勉強で子どもの成長を阻害しないように

第516号 2016/1/29(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 小学校受験を目指す子どもたちの指導にあたっていると、「子どものことが心配で・・・」と相談を受けることが良くあります。それは、学力面というより、行動面においてです。保護者の皆さまは、入学後の集団生活を考えた時、本当にみんなと一緒にやっていけるのかどうかを心配しているのです。確かに、教室で集団指導をしていると、普通では考えられない行動をとったり、こちらからの働きかけに全く反応を示さない子がみられます。会話そのものが成り立たない場合も良くあります。自分を主張しすぎる子もいれば、ほとんど自分を表現しない子もみられます。それが個性だと言ってしまえば間違いありませんが、保護者の皆さまといろいろお話ししていくうちに、そうした行動の背景にいくつかの原因があることが解ってきます。その原因を取り除く努力をしてもらったり、子どもを見る視点や子育ての在り方を話し合い、家庭と教室とが協力して環境(関係)の改善に取り組むと、多くの場合解決していきます。そうした問題行動を取る子どもたちの中には、幼稚園受験のためや、将来の小学校受験のために、小さいころから有無を言わさずぺーパートレーニングを強要されてきた子どもたちが多いということに驚いています。2歳ごろからペーパーを使った徹底した教え込みの指導によって、子どもたちの心の成長が阻害され、集団行動の中で異常と思われる行動を起こす子が増えているのではないかと思います。その当時は顕在化しなかった問題行動が、成長のある段階で表面化するのではないか。そのように考えてくると、小学校受験のための間違った対策によって、受験期には表面化しなかった問題行動が、ひょっとしたら小学校入学後に表面化することがあるのではないかということです。

1. 勉強に興味を示さない。やる気を示さない
2. 人の話を聞けない
3. 自分を表現できない
4. 友だちとうまく関われない
5. 自立した行動がとれない

こうしたことの原因の一つが、間違った受験勉強にあるとしたら、これは大変な問題です。

私は、43年間の受験指導を通じ、ことある度に「正確な情報を公開していただきたい」と学校側にお願いしてきました。その想いは、まだ十分受け止められているとは言えませんが、それでも、20年前には考えられなかった、学校と幼児教室との良好な関係が構築され、情報公開に関しては好ましい方向に向いていることは事実です。今年もすでに塾向けの学校説明会も始まっており、幼児教室を通して学校側の考えが保護者に伝わっていく仕組みができ上がりつつあるようです。学校説明会の持ち方も学校側の工夫で相当変わり、保護者のみなさまにも学校の様子が良くわかるようになってきたと思います。

しかし私は、もう一つやらなければならないことがあると思っています。それは、幼児教室で一体どんな教育がおこなわれているのか、学校の先生方はご存じなのだろうかということです。また、幼児期の子どもたちはものごとをどう考え、どう解決していくのかを、本当に理解されているのかどうか・・・毎年出される入試問題を分析していくと、どうも幼児のことをあまり理解しないで、問題をつくっているのではないのかと思わざるを得ない場合が良く見受けられます。

先日ある集まりで、私立小学校の先生方とお会いする機会がありました。いろいろお話しさせていただいた後、「ぜひ、こぐま会で私が行っている授業を見学に来てください」とお願いしました。私たちがどんな基礎教育を実践し、どんな想いで子どもたちを小学校に送っているのかを知っていただきたい。そして、小学校受験は特別な教育が必要なのではなく、基礎教育をしっかり積み上げていけば、十分対応できることを学校側からのメッセージとして送っていただくためにも、幼児教室でどんな教育を行っているのかをぜひ知っていただきたいと思っているからです。小学校を受験するために毎日何十枚とペーパーをこなすような特別な訓練は必要ないこと、家庭でのまともな子育てが一番大事だということ・・・そうしたメッセージが広く伝わり、小学校受験を目指す子どもたちが増えていかないと、私立小学校が定員割れを起こすことにもなりかねません。

幼児教室と小学校との良い関係づくりを通して、子どもたちを送り出す幼児教室側と迎える学校側が、同じ考え方に立って幼小一貫の教育をしていけば、小学校受験は、幼児期の基礎教育の最大の動機づけになると考えています。合格のためならば、どんなやり方も許されるような時代は終わりました。それは、学校側の入試問題の工夫と行動観察重視の流れを見れば明らかです。6歳までの経験が人の一生を左右するとするならば、幼少期の間違った教育で、心の成長を阻害してはなりません。大事な幼児教育に携わる大人は、そのことを肝に銘じておかなければなりません。

3~4歳ごろから、小学校入試のためにと過去問に取り組ませる指導は、裏返せば何を基礎教育としてやればよいのかがわからない指導者の苦肉の策です。年長の11月に求められる学力や判断力を、1~2年も前から訓練するということなど、幼児の発達に関して専門的な理解がある者ならば、絶対にできないはずです。それを「合格のために」と行っているとすれば、幼児期の教育に全くの素人が受験指導に携わっているとしか言いようがありません。その教育、そこでの指導法で傷ついていく子がいるとすれば、それは大変罪深いことです。子どもたちのためにこうした教育を排除するためにも、学校側からのメッセージがどうしても必要なのです。教科書のない入試ですから、結局「過去問」に頼らざるを得ないのは理解できますが、それは、年長の秋までに完成させなければならない学力・判断力であり、決して1~2年も前倒しで行う教育内容・教育方法ではありません。発達を無視した指導が、子どもの学力や心の成長を阻害しているのです。


小学校の先生方へ
幼児教室でどんな指導を行っているか、ぜひこぐま会の授業を見学にいらしてください
幼児がものごとにどのように取り組み、どのように解決していくのか。1時間半の授業を見ていただければ、良くわかっていただけるはずです。正解できた子どもたちも、その解決の過程はそれぞれ違います。また、間違えた子にも、必ず間違いの理由があります。そうした、子どもたちのものごとに取り組む姿勢、問題解決のプロセスをぜひご覧いただきたいと思います。

見学を希望される方は、メールもしくはお電話にてご連絡ください。

【E-Mail】koguma@kogumakai.co.jp
【TEL】 03-5489-1630 (恵比寿本校 担当:廣瀬)
※授業が行われている時間帯は電話に出られない場合がございます。何卒ご了承ください。

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