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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

基礎学力をしっかり身につけること

第514号 2016/1/15(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 こぐま会のばらクラスの授業は、年明けから、「ステップ3」の学習に入りました。基礎学習の後半に入ったということになりますが、4月いっぱいまでは、基礎学力の育成に力を注ぎます。1月12日に行った「お母さまゼミ」では、ステップ3の学習内容に関する家庭での学習法についてお伝えしました。今回扱った内容は以下の通りです。

未測量3長さくらべ
位置表象3方眼上の位置および移動
数3等分
図形3同図形発見、点図形
言語3お話づくり
生活 他3観点を変えた分類

この中で、入試に絡む内容を説明しますので、家庭学習の参考にしてください。

1. 個別単位
 単位の考え方は、小学校2年生で学習します。長さであれば、mm・cm・mなどの単位を学びますが、これは「普遍単位」と言って万国共通の単位です。普遍単位の考え方にいくまでに、4つの段階を経ます。その4つとは、「1. 直接比較」「2. 間接比較」「3. 個別単位」「4. 普遍単位」です。小学校入試では、1.~3.までは出題されます。「3.個別単位」とは、あるものを「1」とした時、それがいくつ分あるか・・・という考え方です。たとえば、マッチ棒7本分の長さ、割りばし5本分の長さ、方眼4つ分の長さ・・・など、あるものを基準にしたときそれがいくつあるか・・・その数によって長さが違うという考え方です。入試では、よく方眼紙を使った問題が出され、問題によっては広さくらべも行われる可能性もあります。

2. 方眼上の位置移動
 方眼上を、約束に従って上下左右に移動する問題が最近よく出されています。たとえば出発点を決め、「そこから上に5、左に3、下に4行ったところに青丸を描いてください」というような問題です。口頭での指示だけでなく、音の約束による移動もあります。また最近では、指定の場所に行くまでにどのように動けばよいかを聞く問題も増えています。

3. 量の等分
 等分は将来のわり算の考え方につながる内容です。私たちは、等分するものによって、「量の等分」と「数の等分」に分けて学習しています。量の等分は3等分が、数の等分はあまりのある等分が難しく、試験でもよく出されます。この等分の考え方を事物を使って学習するのが今回の目的です。特に量の3等分は、ペーパーの前に具体物を使って実際に分ける練習をすることが大切です。

4. 数の等分
 数の等分は、2等分~4等分まで良く出されます。また、数の等分は、あまりのある等分と余りのない等分に分けられますが、あまりのある等分のほうが間違いやすく、難しくなります。問題の聞き方も2通りあり、同じに分けた時にもらえる1人分の数を聞かれる場合と、同じに分けた時に何個余るかを聞かれる場合があります。数の等分は、具体物でできてもペーパーになるとできない場合がよく見受けられます。ペーパーを使った数の等分は、解き方をしっかり身につけられるように、十分に行ってください。線結びや囲む作業が機械的にならないよう、作業の意味を理解させながら学習してください。

5. 点図形の応用
 昔から入試問題の定番であった点図形は、今はそのままの形で出されることはほとんどなくなりました。しかし、全く出されなくなったわけではありません。他の領域の課題と組み合わさって出されるケースが増えています。その一つが、重ね図形とセットになった重ね点図形、また、対称図形とセットになった点図形もあります。また、点と点の間を通って曲線を描く問題も出始めています。そこでは、点の位置をしっかり把握する能力があるかどうかが問われています。

6. 原因と結果からお話をつくる
 お話しづくりの基本は、4枚の絵カードを時間的順序に並べ、それに沿ってお話をつくる問題です。しかし、最近の入試問題は、絵カードが4枚ではなく、3枚であったり、2枚であったり、1枚だけであったりと、数が少なくなっています。数が少ないとまとまった話がつくりにくく、子どもにとっては難問になります。特に最近は、人間の表情を読み取り、原因と結果を考えてお話をつくらせるケースが増えています。自分の経験をどこまで盛り込めるかがポイントです。

7. 二重分類
 分類学習の基本は、物事の共通性をどう受け止めるかです。同じものを集めるのが「仲間集め」で、違うものを取りだすのが「仲間はずれ」ですが、基本は「ものごとの同一性」をどう捉えるかです。共通項を探し出すには、ものの属性をどう見るかが問われ、日常生活での経験が大事です。ものを観察する目、比較する視点をしっかり持つことが大事です。その上で、「観点を変えた分類」を繰り返し行ってください。その時必ず「どんな仲間集めをしたか」を言語化させることが大事です。ある観点にこだわると、そこから離れられないのが幼児のものの見方の特徴です。それを打ち破って、いろいろな視点を持つことができるようにすることが、幼児教育の大事な目標の一つです。

最近入試でよく出される「二重分類」は、方眼の性質を利用した仲間集めです。縦3つ・横3つの部屋が交差した真ん中の部屋は、縦の仲間にも入り、横の仲間にも入っています。ということは、交差する真ん中にいれるものは、両方の仲間に入るものを探すということで、2つの観点が必要だということです。

縦に並んでいるもの同士でも、横に並んでいるもの同士でも、同じ仲間になるものを、右のお部屋から選んでをつけてください。(20秒)



以上、ステップ3で学習する内容の中で、入試に絡む問題をお伝えしましたが、今年の秋に受験を迎える子どもたちにとって、今はしっかり基礎を固める時期です。まだ過去問をペーパーでトレーニングする時期ではありません。教え込まれた方法で解くのではなく、自分の力で解いていけるような考える力を、しっかりと身につけることが大事です。最近の工夫された問題は、パターントレーニングによって解決できるほど単純ではありません。指示をしっかり聞き、条件を理解し、作業しながら答えに到達できるような能力が求められています。そうした能力は、「自分で考える」習慣づけをしないと身につきません。基礎が大事だということは、そういうことを意味しています。あせらず、着実に家庭学習に取り組んでください。

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