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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

海を渡るKUNOメソッド

第499号 2015/9/18(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 8月後半の夏休みを使って、ベトナム・ダナンに行ってきました。ホーチミンやハノイは何度か訪問しましたが、ダナンは今回が初めてです。ベトナム反戦運動が盛んだった学生時代、よく「ダナン」の名前は聞きました。そのダナンが、今ベトナムの成長の象徴のように言われ、2015年8月25日付の日本経済新聞 夕刊  にも紹介されていました。シンガポールのような都市を目指しているということです。道路等インフラは整備され、ビルの建設も盛んにおこなわれています。ダナンからホイアンまでの海岸線には、多くのリゾートホテルが立ち並び、ベトナムのリゾート地としていま注目を集めているようです。

そのダナンにある「たんぽぽ幼稚園」の園長先生はベトナム人ですが、学生時代に日本で保育の教育を受け、現地の幼稚園で「日本式」保育の実践を目指しているようです。日本人スタッフの方も3名ほどいらっしゃいました。ホーチミンとハノイでこぐま会の教育が展開されていることを知り、ぜひ一度幼稚園の保護者に話をしてほしいという要請を受けました。そこで、8月17日の夕方、たんぽぽ幼稚園を訪問し、「KUNOメソッド」による基礎教育の方法をお伝えしました。仕事を持つ母親が多く、セミナーの開始は17時半からでしたが、仕事帰りの母親・父親が大勢集まり、私の話を聞いてくださいました。「教科前基礎教育」「事物教育」「対話教育」の3つの基本理念を話し、6領域の学習内容と、「体を使い・手を使い・頭を使って学習する」、三段階教授法も伝えました。映像を使った話に大変興味を持たれたようで、皆さま熱心にメモを取られていました。このたんぽぽ幼稚園にどのような形でKUNOメソッドを導入するかについては、現地スタッフが今後も話し合いを続けていく予定です。

また、ダナンから日本に帰国する際、ハノイに寄って「グリーンスクール」という幼稚園のオーナー・園長先生にお会いし、KUNOメソッドの考え方を説明しました。開園間もない幼稚園ですが、5階建てのビルには贅沢すぎるほど広い教室をたくさん持ち、これからベトナムの子どもたちに良い教育を実践したいと考えているようです。ベトナムこぐま会の実践を通じて私の開発したメソッドに注目していただき、今回の訪問につながりました。この幼稚園でも「日本式」の教育を導入したいということで、私の話を聞いてくださいました。ベトナムはどこに行っても親日家が多く、教育においても「日本式」を望んでいます。彼らの言う「日本式」の中味が何なのか、良く調べておかないといけないと思いますが、端的にいえば「他者の気持ちや立場を理解しあえる教育」なのではないかと思います。集団活動における日本教育の良さは、このように海外に出てはじめて自覚できるものです。このグリーンスクールにおいても、メソッドを提供するという方向で話し合いが進んでいます。

また、9月2日から4日まで、韓国清州市に講演会に行ってきました。もともと6月に行く予定でしたが、MERS(マーズ)が一番深刻な時期であったため、延期して今回の訪問になりました。ソウルからKTXに乗って1時間弱、そこから車で30分ほど行ったところですが、ベッドタウンのようで、マンションが林立していました。朝10時半から12時まで、近郊の幼稚園の園長先生が80名ほど集まり、私の話に耳を傾けてくださいました。ベトナムでもそうでしたが、やはり韓国においても「ロジカルシンキング」の育成、つまり「考える力」教育を目指しています。そのためのメソッドが世界中どこを探してもない・・・というのが、KUNOメソッドに期待を寄せてくださる理由だろうと思います。幼児期の基礎教育は教え込みの教育ではいけないことは分かっていても、何をどう実践したら良いのかわからない。そうした状況の中で、「教科前基礎教育」「事物教育」「対話教育」を掲げ、具体的なプログラムと教具・教材を持っていることに魅力を感じていただいたのかもしれません。映像を使った1時間近い話を、熱心にお聞きいただき、終了後も多くの質問を受けました。韓国では、幼稚園単位で導入してもらっていますが、1万人をめざして今後も講演会活動を続けて行くつもりです。10月には釜山を訪問し、近郊幼稚園の園長先生方にお集まりいただいて、KUNOメソッドによる教育内容と方法をお伝えしてくるつもりです。

今、世界中で幼児教育の重要さが認識され、さまざまな取り組みが行われています。日本も例外ではありません。しかし、幼児教育の重要さが叫ばれても、何をやったらよいのかという議論はほとんど聞こえてきません。挙げ句の果て、小学校低学年の教育内容を薄めて下ろし、早いうちから「読み・書き・計算」をやればよいなどという暴論がまかり通っています。理念なき教育改革は、混乱を招くばかりです。知識を一方的に伝達する教育ではダメだということがはっきりした以上、その流れに沿った幼児教育の改革が必要です。40年間の実践に裏付けられたKUNOメソッドこそ、そうした新しい幼児教育の要請に応えうるものだと確信しています。

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