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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

基礎段階の最後のステップがはじまりました

第473号 2015/2/27(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 2月23日(火)に第3回「お母さまゼミ」を行いました。新しいステップの授業に入るたびに6週分の学習内容について解説し、教室での授業に連動してどのような学習を家庭で行えばよいのかを、具体的な教材を提供して説明するお母さまのための勉強会です。今回は、基礎段階の最後である「ステップ4」(2月23日~)の勉強会でした。昨年9月から始まった「セブンステップスカリキュラム」ですが、ステップ4では以下の内容を学習します。

未測量シーソー、言葉による関係推理
位置表象四方からの観察
一対多対応
図形図形分割
言語話の内容理解、昔話
推理方眼上の移動、回転推理、図形系列
このステップ4に関するテーマが、今入試で一番よく出される問題です。各領域の内容を見ていきましょう。

未測量で扱うシーソーを含めた関係推理の課題は、最近の入試でよく出される問題です。特に、話の内容理解の中で問われることが多く、大人にとっても難しい課題です。三者関係の理解が基本ですが、入試では四者関係の理解が良く出されます。学校によっては、五者関係の理解まで出されます。現時点の子どもたちは、三者関係の理解は問題ありません。また、四者関係も重い順に並べたり、「一番重い」・「一番軽い」を探す問題はよくできますが、「二番目に重い」・「三番目に軽い」というような質問には、出来不出来がはっきりします。こうした問題までわかって本当に理解できたと判断してください。ところで、言葉による関係推理は次のような問題です。

関係推理
下のお部屋を見てください。お父さんとお母さんとみつこさんが、持っている袋の重さをくらべました。
お父さんとお母さんの袋をくらべたら、お父さんの方が重かったです。お父さんとみつこさんの袋をくらべたら、みつこさんの方が軽かったです。
【問題】
  • 1番重い袋を持っている人にをつけてください。

下のお部屋を見てください。キツネさんのお家のクリスマスパーティーのお話です。動物たちみんなでプレゼント交換をしました。
  • キツネさんはタヌキさんにあげました。
  • タヌキさんはネコさんにあげました。
  • ネコさんはイヌさんにあげました。
【問題】
  • キツネさんにプレゼントをあげたのは誰だと思いますか。その動物にをつけてください。

シーソーと違って、話の内容に即した場面はありませんから、話を聞いて関係を考えなくてはなりません。大人にとっても難しい課題ですが、案外子どもたちは正解しています。メモを取ったり、線を引いたり・・・という方法を身につけてしまった大人は、話を聞くだけで関係を把握する能力が退化してしまっているのでしょう。子どもができて大人が間違いやすい問題の一つです。

位置表象の課題は「四方からの観察」です。あるものを違う4つの場所から見た見え方を、その場に行かないで推理する問題です。前後と左右関係の理解が求められますから「前後-左右関係の理解」と呼ぶこともあります。やはりここでも「左右関係の理解」が重要です。もともと、具体的なものを使って問題がつくられていましたが、最近の入試では、半具体物である「つみ木」を使った四方観察が主流です。つみ木を使うと、問題によっては「上から見たら」とか、透明な板に乗せて持ち上げ「下から見たら」も設問として可能になりますので、四方が六方になり、より問題が複雑になります。

四方からの観察
真ん中のつみ木を生き物たちが見ています。
【問題】
  • カエルから見た形に、カタツムリから見た形に、上を飛んでいるハトから見た形に×を右の絵につけてください。

数領域の学習課題は、かけ算の基礎になる「一対多対応」です。1人にあげる数とあげる人数との関係で、全体の数を求めるような問題が基本ですが、自転車・三輪車・自動車のタイヤの数に関する問題もよく出されます。また、たくさんの数の中に指定の物の数の集まりがいくつあるかを問いかける「包含除」の課題も含まれます。数の入試問題の中では、他の操作と組み合わされ、数の複合問題に発展するケースが見られます。九九を暗唱してかけ算として答えを出すのではなく、答えを出す手立てをどのよう工夫するかが大事です。例えばある学校で出された次のような問題です。

一対多対応
【問題】
駐車場に車が3台止まっていました。少し経つと1台でていきましたが、また2台入ってきました。
今止まっている車のタイヤの数は全部でいくつですか。

この場合、車の出入り「3-1+2」は数の増減の問題ですが、4台と答えが出た後、1台あたりのタイヤは4つですから、4×4=16になるはずです。しかし、そのかけ算を暗算する必要はなく、4つずつ丸を描きながら、1台分・2台分・・・とやって4台分で終わり、その結果16がわかればよいのです。実は、この「1台分・2台分・・・」の作業の理解が大事なのです。

一対多対応が、他の数の操作とセットになって複合化されるだけでなく、その考え方を応用して解く難しい問題があります。その一つは「シーソーのつり合い」であり、もう一つは「交換」の問題です。1に対して2以上のものが対応する典型的な問題で、コラムでよく話題にするハンバーガーの問題はこれにあたります。

交換
動物村のパン屋さんは次のようにパンを取り替えてくれます。
  • メロンパン1個はドーナツ2個と換えてもらえます。
  • 食パン1斤はメロンパン2個と換えてもらえます。
  • ハンバーガー1個は、メロンパン1個とドーナツ1個と換えてもらえます。
【問題】
(1) ドーナツ4個は、メロンパン何個と換えてもらえますか。
(2) 食パン2斤は、ドーナツ何個と換えてもらえますか。
(3) ハンバーガー4個は、食パン何斤と換えてもらえますか。

この問題は、かけ算とわり算の包含除の考え方が同時に求められています。特に最後のハンバーガー4個が食パンいくつと換えてもらえるかという問題は、「置き換え」の考え方ができるかどうかがポイントです。つりあいの問題も同様です。A=2B, B=3Cの時、2A=Cなのか、また、12C=Aなのかを解くためにも、この「一対多対応」の考え方が必要になってくるのです。

図形に関しては、「図形分割」をテーマに、折り紙を分割したり図形構成と関係づけながら、三角パズルの分割を学習します。幼児の図形教育は、折り紙を使うといろいろな課題が学習できます。指示した形に分割させ、それを再構成させるという学習は、真四角の分割をイメージするにはとても良い経験になります。最近の入試問題では、「図形構成 - 図形分割」の問題は全体として減少傾向にありますが、三角パズルはどうしても経験させておかなければならない課題です。特に、大きさの違う三角パズル(正方形を半分にした三角形と、4等分した直角二等辺三角形)を使った構成はしっかりやっておかなければなりません。大きな三角をどこに使うかが決め手になります。これは、分割においても同様で、大きな形をどこに取るか・・・が重要です。ペーパーで課せられる「図形分割」の問題は、実は図形構成能力が問われているわけで、こうした実際の三角パズルの経験が生きてきます。

言語領域の学習では、話を聞いてその場面に合うように絵の足りないところを描き足したり、話の続きがどうなるかを判断したりする課題に取り組みます。最近の傾向である「話の内容理解」の多様な問いかけに対する練習を、こうした問題を通して行います。また今回は、昔話を取り上げます。昔話に関する入試問題の多くが、登場人物をテーマとした問題ですが、今回は話の内容理解との兼ね合いを考え、昔話の典型的な一節をテープで聞かせ、その話が何という昔話かを判断させながら、登場人物等に関して話し合いをするという授業になっています。最終的には、自分でその昔話を語れるくらいまで理解を深めておく必要があります。

基礎学習最後の第24週は、法則性の理解として、並び方の法則性(いわゆる図形系列)や、つみ木を使った回転推理を学習します。並び方の法則性の中味は図形が基本ですが、図形だけではありません。位置の変化、方向の変化、数の変化等、いろいろなものが規則的にならび、空欄に何を入れたらよいのかを判断する問題です。昔からあるこの問題は、口ずさんでやる方法と指送りする方法がありますが、最近の問題の中には、そのどちらも使えない問題も出始めています。変化に対して敏感になり、その変化に約束があることをつかみ取らなければなりません。以下の問題がその一つです。

法則性の理解
【問題】
  • マスの中の形が、あるお約束で動きます。どんなお約束で動いているか考えてください。1番右のお部屋ではどうなりますか。マスの中に形をかいてください。(1分)

回転推理の問題には、観覧車や回転図形の問題がありますが、今回扱う課題は、つみ木を使った回転推理です。6つの面に色や形が描いてあり、それを右に3回回したら何色が上の面にくるか、また、左に2回、手前に2回回すと何色の面がでてくるか等を考えさせる問題です。立方体つみ木を使いますから、左右の回転では右(左)に4回回せば元に戻ってきます。その際、上の面に表れる色や形に順序性があり、それをつかむことが大事です。左右の回転に前後の回転が加わると、この課題は相当複雑な課題になりますが、入試で実際に出されているから驚いてしまいます。

以上ご紹介した通り、ステップ4の課題は入試問題になるケースが多く、重要です。「基礎段階の学習がしっかりできていれば、入試問題の8割は解ける」と言ってきたのは、そうした理由によるものです。ですから、5月連休明けからは相当量の過去問が解決可能です。いよいよこれからがペーパートレーニングが意味をなす時期になってくるのです。

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