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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

教え込みの教育では合格できない

第459号 2014/11/14(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 首都圏の入試も一段落し、試験を終えた保護者の皆さまから合否の結果が届いています。11月25日の慶應義塾横浜初等部の発表が済み次第集計し、ホームページ上で発表させていただきます。

現在聞き取り調査を終えた入試問題の内容や、合否判定の方法等の分析をしていますが、今年も多くの学校で変更点があったようです。その結果は、12月7日(日)に実施する「入試結果報告会」時にまとめてお伝えしたいと思っています。はたして受験者数の減少に歯止めがかかったのかどうか、一番関心があるところです。これまでの報告を見る限り、増えたところもあり、減ったところもあるようです。ただ、名目上の倍率だけでなく、実質の倍率を見ていく必要があります。受験した子どもたちからも「お休みした子が大勢いた」という報告も受けていますから、重なることを承知で出願したご家庭も相当あったはずです。また、10月に行われた面接試験で時間が重なってしまい、3校のうち1校しか受験できなかったというケースも報告されています。募集要項だけ見ていたのではわからない、そうした細かな点もしっかり把握し、来年の受験に備えていただきたいと思います。

また、小学校入試独特の合否判定の方法に関しても、しっかり把握しておく必要があります。先日行われた「第1回お母さまゼミ」の冒頭でもお伝えしましたが、小学校入試の合否判定は実力主義になってきましたが、決して「学力主義」ではないということだけは明確です。この点の認識を誤ると、「ペーパー学習を徹底すれば合格できる」という間違った入試対策になってしまいます。これまで判明した結果を見ても、その点は強く感じます。

  1. 学力はなければならないが、学力が高い子から合格しているわけではない
  2. 子どもの学力試験・行動観察・面接の3つの観点から合否が決まるということは、だれが見ても明確であるが、その中でもやはり最後の決め手は「行動観察」だという印象は、今年も強く持った
  3. 学力がありながら、合格できなかった子には一つの傾向があるようだ。集団活動の中で、初めて会った子に自ら声をかけていくことができない子、問いかけられても元気に答えられない子は、やはりうまくいっていない。これは毎年のことで、「コミュニケーション能力」と言ってしまえばそれまでだが、それは他者とどのように関わるのかということの指標であり、入学後の集団活動を想定した「行動観察」の中で、学校側が重視するのは当然のことと言える

今年は、入試直前の10月に入って、「集中力がなくなった」「テストの結果が急に悪くなった」「家庭で勉強をやりたくないと言いはじめた」・・・こんな相談が特に目立ちました。実際、10月に入って行ったまとめの授業時にも、「どうしてこんな問題ができなくなってしまったのか」と感じた時もありました。こうした子どもたちの多くは、受験対策のスタート時は成績もよく、本当によく頑張り優秀だった子どもたちです。その子どもたちがなぜ一番大事な時期に失速してしまったのでしょうか。その原因のひとつは、お母さまの頑張り過ぎに子どもの気持ちがついていけなかったということです。塾をかけもちし、一番大事な家庭学習の時間すらとることが難しかった子どもたちです。また、教え込みの指導が一番良いと考え、そうしたやり方でペーパーを毎日たくさん行った結果、子どもの気持ちが持続せず、「問題指示の聞き取り」に必要な集中力を欠いてしまったのでしょう。事物教育をコツコツ積み上げ、教室の方針に従って積み上げてきた子どもたちは、興味関心を持続でき、一番良い状態で入試を迎えられたはずです。母親主導の入試対策が、子どもの視点を欠落しないで進んでいく限りは問題ないのですが、ペーパートレーニングをがんばりすぎた結果、子どもの気持ちがついて行けなくなり、「逃げたい」という気持ちになってしまったのでしょう。逃げたいと思った瞬間、指示の聞き取りに関する集中力が途切れるのは目に見えています。それまでできていた問題ができなくなるのは、決して理解力の問題ではなく、「指示の聞き取り」に集中できていないからなのです。

今続々と集まっている今年の入試問題を見ても、一見易しそうに見える問題も、指示の聞き取り部分で差が出るだろうなと思われる問題が数多く見られます。入試本番でどれだけ集中力が発揮できるかどうか・・・そのためにどのような方法で学習を積み上げ、子どもの気持ちを高めていくべきか。受験勉強をスタートする今の時期からしっかりと考え、決して教え込みの教育はしないということを念頭において取り組んでいただきたいと思います。

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