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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

ものごとを理解する順序性を踏まえた学習を

第444号 2014/7/18(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 夏季講習会が始まりました。受験生の皆さまは多くの課題を抱えながら、「合格」への想いをこの夏の頑張りにかけています。7月14日から始まったお弁当持ちの講習会に、子どもたちは毎日笑顔で通い、ペーパーワークだけでなく、踊りや劇づくりといった集団活動の中で、普段できないさまざまな経験を積んで入試に備えています。子どもたち同士で何かを作り上げていく経験は、週1回の授業では不可能ですが、5日間毎日通うことによって可能になります。役作りをし、セリフを覚え、保護者の皆さまの前で発表する・・・この一連の経験の中で、毎年多くの子どもたちに変化が見られ、好ましい成長を遂げていきます。

一方、現在年中児の皆さまは、来年秋の入試に向け、毎年この時期から受験対策を始めようと動き出すご家庭が多いように思います。こぐま会もここ3年ほど、入試対策を年中9月から開始し、少しゆとりを持ったカリキュラム構成で受験を目指してきました。今年は、ゆりクラス(年中児クラス)への入会が例年より多く見られ、2007年度から始まった、私立小学校の受験生の減少に歯止めがかかってきたのかもしれません。今年の学校説明会はどの学校も盛況のようで、ある学校では入学案内がなくなってしまい、増刷されているようです。

ゆりクラスに入会される多くのみなさまは、幼稚園受験を経験された方が多く、また、こぐま会が書店で販売している問題集等を使い、ご家庭である程度学習されてきた方のようです。中には、年長児向けに作った「ひとりでとっくん365日を2回りしたのですが、今後何を素材に勉強したらよいでしょうか」と相談される方もあります。しかし、そうした場合こそ、一度子どもの学力を疑ってみてください。「本当に理解しているかどうか」は、同じ内容を実物を使って質問した際、きちんと解く過程を説明できるかどうかでわかります。ペーパーでできても、具体物やカードで操作させるとできない子が大勢いるようです。つまり本当に理解していなくても、訓練によってペーパーはある程度できてしまうということです。こんな力は、実際の入試では何の役にも立ちません。なぜなら同じ問題は出ないからです。同じ趣旨の問題は数多く出されますが、そっくり同じペーパーは出ません。20年以上前の知能テストの問題とは違うからです。

本当に理解させるにはどうするか。それは、子どもたちがものごとをどのように理解し、認識として定着していくのか・・・その順序に合わせてあげればよいのです。その順序は、

1. 体を使った活動
2. 手を使ったものごとへの働きかけ(事物教育)
3. 頭を使った抽象化への橋渡し(ペーパーワーク)

となります。受験は詰め込み教育で良いと考えている人たちにとって、こぐま会のこのやり方はとても遠回りで効率がよくないと映るでしょう。しかし、子どもがものごとを本当に理解していくには、この方法しかないのです。私たちは、この方法を「3段階教授法」と呼んでいますが、多くの受験対策がペーパーを使った訓練のみに終始しているのです。これでは、正しい意味で「認識能力」は身につきませんし、入試が終われば全て忘れてしまうという、きわめて非効率な教育なのです。

年中児の皆さまには、来年秋までまだ十分時間があります。今から「過去問」に取り組ませるようなことはしないでください。今はものごとに触れ、働きかけ、試行錯誤しながらひとつひとつの「ものの原理」や、「ものごとの関係」を学んでいく大事な時期です。こぐま会が掲げた「事物教育」「対話教育」が一番大事な時期です。余りにも意気込んで入試対策を始めると、どうしても目に見えるペーパートレーニングに行きがちですが、子どもの認識能力を本当に高めるためには、がんばり過ぎの気持ちを少し抑え、子どもがものごとをどのように理解していくのか、冷静にしっかり見守ってください。子どもの指導の現場に立てば、この「三段階教授法」が、子どもがものごとを理解していく順序性にいかに合っているかがわかるはずです。家庭での学習においても、ぜひこの方法を取り入れ、子どもの理解の道筋にあった受験対策に取り組んでください。

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