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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

小学校入試をめぐる最近の動き

第437号 2014/5/30(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 多くの学校で今年の入試に関する学校説明会が始まり、入試日程も次第に明らかになってきました。今年は、11月2日が日曜日にあたるため、宗教上の理由からその日の試験を避けて、日程を変更する学校があり、昨年度とは若干違った併願パターンが出てきそうです。また、今まではあまり表面化していませんでしたが、11月の本試験は日程がずれていて併願が可能なのに、10月中に行われる面接試験日がぶつかってしまい、3校出願しても1校しか受験できなかったというケースも見られました。以前は、面接日に行けない理由がしっかりしていれば日にちを変更できたものが、いつごろから始まったのか記憶は定かではありませんが、指定した面接日に伺わないと、理由の如何を問わず棄権とみなすということが一般的になったのです。私たちが保護者の皆さまから相談を受けて一番心を痛めたのは、10月に行われる運動会と面接日が重なった時の判断でした。子どもが楽しみにして、1カ月以上かけて練習に励んできた運動会に、面接日が重なって出られないということを子どもにどう伝え、説得したらよいかという類の相談でした。選手宣誓をするはずの子が、運動会に出られなくて悲しい想いをしたということもありました。運動会と重なったら、別の日に面接日を変更できるくらいの思いやりが学校側にあってもよさそうなのに・・・と思ったこともありました。それが、ある学校の募集要項の中に、

面接は志願者と保護者とで行います。10月中旬以降の土曜日・日曜日を予定していますが、日時・場所は、受験票返送時にお知らせいたします。決められた日時の変更はできません。
但し、感染性の病気に罹患した場合、運動会と重なった場合のみ対応いたしますので、お申し出ください。その際、医師による証明書、または運動会のお知らせ等の提出が必要となります。

というように、感染症の病気に罹患した場合と、運動会が重なった場合のみ、変更が可能だというお知らせが出ていました。こうした配慮は受験生にとって朗報だと思いますし、私はこの措置が他校に波及することを願っています。受験生にとって、こうした配慮が学校側から示され始めたことは、歓迎すべきだと思います。「運動会」への参加が、子どもの成長にとってどれほど教育的に意味があるかを考えれば当然の措置だと思いますが、今思えば、それがなされてこなかったこれまでの入試とは一体何だったのでしょうか。当たり前のことが当たり前に行われてこなかった、これまでの「小学校入試」でしたが、受験生の減少や、4月新学期を定員割れを起こしてスタートせざるを得ない学校が出現するなど、小学校受験を取り巻く状況が、学校側にとっても厳しくなった今、受験生に優しい措置が今後とも取られていくことを期待しています。その一つの例が、公開授業のような形で受験生に学校の日常を見せようとする動きであったり、以前は在校生に厳しく禁止していた「学校だより」の外部への公開を、今ではホームページを通して、学校側が積極的に行っています。これからは、時代の流れに合わせて外に向けてオープンになっていくと思いますが、入試に関してはいまだに理解できないことがいくつかあり、こうしたことも改善されていくことを望んでいます。
  1. 入試に関する情報をもっと公開すべきである
  2. 補欠合格者の発表の仕方やその扱いがあまりにも不透明である
  3. 教科書のない入試である以上、何をどう学習すればよいのかのガイドラインは、学校側が示すべきである。そのことによって、子どもに必要以上の負担がかかる間違った受験対策が排除でき、親も子も安心して、まともな幼児教育に専念できる
  4. 異常な受験対策は、入学者を受け入れる学校側にとっても好ましいことではないはずだ。間違った受験対策で、ものごとを自ら考えようとしない子ども、学習意欲を失った子どもを受け入れるのは、学校側にとっても得策ではないと思う
ところで、小学校受験をしようとする子どもたちが、2007年度をピークに減少し始めており、その流れに歯止めがかかっていません。その理由はいくつか考えられます。
  1. 経済的背景
  2. 震災の影響で、遠くの学校に小学校時代から通わせることの是非を考え始めている
  3. 女性の社会進出が当たり前になった今、学校選びにも変化が見られる
  4. 公立校ががんばり始め、私立に行かなくても、良い大学にいける状況が出てきた
受験生が減少し、定員割れが小学校にまで波及している今、小学校受験は大きな曲がり角に来ていると言っても過言ではありません。その結果出される学校側の新しい動きが、受験生や保護者の皆さんにとって好ましいものであるように願っています。関係者が入試で有利になるようなことが噂されないような、思い切った措置が必要だと思います。公平な入試、公正な入試が実現できなければ、小学校受験を目指す子どもたちは、ますます減少していくでしょう。

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