ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

正しい学習法で受験対策を

第436号 2014/5/23(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 連休明けから本格的に学校説明会が始まり、来年以降受験する保護者の皆さまも大勢参加されているようです。最近は、2~3年かけて学校情報を集める傾向が続いているようですが、とても良いことだと思います。自ら得た正確な情報をもとに、正しい学校選択をしていただきたいと思います。

今年の受験生は入試まで残り半年を切り、難しい過去問を前にして、毎日大変な努力を重ねている時期だと思います。一方、来年受験する年中児の皆さまは、そろそろ学校を絞り込み、学習方針を決めて、受験勉強をスタートさせようと考えているご家庭が多い時期かと思います。こぐま会でも、毎月行う体験授業では、現在年中児の皆さまの参加が一番多くなっています。これから受験対策をスタートする皆さまに、間違った受験対策で子どもを潰すことがないようしていただきたいと願っています。

間違った受験対策がはびこる最大の原因は、小学校入試に関する情報が開示されていないことです。学校説明会に参加されても、入試に関する説明はほとんどありません。どんな考えで問題が作成されているのか。行動観察で何を見ようとしているのか。どんな準備をしてくればよいのか・・・一番知りたいことについては、何も説明がありません。こんな状況ですから、商業ベースで流される情報の多くが、不安を煽る勧誘のための情報であり、正しく子どもを導く情報ではありません。その上、受験のために何をどう学習してくれば良いのかの教科書もありません。教科書はないけれど、難しい問題は存在する・・・ここに間違った情報が入り込む余地があるのです。「合格のためには、特別な教育をしなければいけない」・・・そんな間違った認識が助長され、挙句の果て、「毎日何十枚ものペーパーをこなさなければ合格できない」と思い込まされてしまうのです。

こうした間違った指導の結果、不適応を起こす子どもたちが増えています。特に最近は、「幼稚園受験」の対策として、年齢にふさわしくない量のペーパーを強制する学習によって、心身に変調をきたす子どもたちが増えているようです。自分の殻に閉じこもり、他者と関わりを持てない子や、ものごとに意欲的に関わろうとしない子が増えています。教室での集団活動でちょっと気になる子がいて、そのことについて保護者の方と話をすると、その原因の多くが、幼稚園受験の際に受けた間違った指導にあるようです。厳しい環境に置かれ、徹底してペーパーのみの指導を受けてきた子にそうした傾向が多いのは、年齢が低ければ低いほど、間違った教育方法の悪影響が出やすいということでしょうか。

そこで今回は、来年以降の受験のために、これから受験対策を始めようと考えている保護者の皆さまに、受験対策のスタートに際し、ぜひ頭に入れておいていただきたい正しい学習方法をお伝えします。
  1. 小学校受験には、特別な教育は必要ありません。正しくまともな幼児教育の結果として受験に臨んでください
  2. 正しい幼児教育とは、子どもたちの発達段階をしっかり踏まえ、理解の道筋にあった方法で行うということです
  3. そのためには、決して最初からペーパーワークのみのトレーニングはしないということです
  4. 子どもたちの生活や遊びの中にある経験を踏まえ、まず体を使った活動を徹底することが大事です
  5. その上で、ものごとに働きかける経験を蓄積するために、事物を使った教育によって試行錯誤する時間をたくさん取ってください
  6. その事物教育で得た経験を踏まえ、同じテーマでペーパーワークに進みます
  7. ペーパーにも難易度がありますから、決して最初から「過去問」に取り組ませるようなことはしてはいけません
  8. 基礎学力がしっかり身についてから、過去問トレーニングに臨みます
  9. 難しい問題であればある程、どのように考えて答えを導き出したのかを言葉で説明させてください
  10. 決して解き方を教え込まないようにし、自分で考えさせてください。そしてもし解決しないなら、何が難しいのか、どんな考えを身につければ解けるのかを、子どもの立場に立って一緒に考えてあげてください
  11. そうでないと、あと少しで正解に至るという子どもの頑張りを無駄にすることになります。「か×か」だけの判断ではなく、どう考えた結果のなのか、×なのかを大人はしっかり把握してあげてください
これだけのことをしっかり踏まえれば、正しい受験対策ができるはずです。子どもがものごとを理解する道筋にあった教育をしていけば、子どもに余分な負担をかけることもなく、楽しい学習になるはずです。この学ぶ順序を飛び越えて、結果だけを早く得ようと最初から過去問トレーニングを行ってしまうような指導では、子どもたちは戸惑うばかりです。その結果、教えられた通りにしかできず、自分で考えようとしない姿勢をつくりだしてしまうことにもなりかねません。これでは、最近の工夫された問題を自分の力で解いていくことはできません。現在の入試では、行動観察を含め、「自分で考え、判断し、行動できる」子を多くの学校が求めています。そうした子どもの自立を阻害するのは、多くの場合受験に熱心な母親であるということも知っておいてください。

PAGE TOP