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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

5月からの難問対策

第435号 2014/5/16(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 こぐま会年長クラスは4月一杯で基礎段階の学習を終え、連休明けからは応用段階の学習に進んでいます。これから夏休み前まで、難しい問題への挑戦が続きます。この過程で、基礎的な事項の理解が本物かどうか問われてきます。基礎があいまいのままで過去問トレーニングを繰り返しても、効果は期待できません。その意味でも、基礎の点検はどうしてもやっておかなければなりません。今回の女子校合格フェアでは、5月3日にセミナー「基礎学力単元別チェック法」を行い、普段の教室でみられた子どもたちの理解度を踏まえて、もう一度確認しておかなければならない課題を30枚のペーパーにまとめ、基礎学力を点検する方法をお伝えしました。その上で、5月5日には「5月からの難問対策」をお伝えしました。ここでは、これから挑戦する難問への取り組み方を示しましたが、まず大事なことは、難問と言われる問題の出題意図をしっかりつかんでおくことです。

そうした眼で過去問を見ていくと、予想問題を考える上で大変重要な次の点に気付きます。

(1) その学校で出された問題を30年ぐらいさかのぼってみていくと、基本問題がどのように進化して、難問化してきたかが分かる

(2) ある学校で出された難問が、他校に波及していることが良く分かる。その波及速度は、以前は3~4年かかったが、今では次の年に他校で出されるほど早くなっている

(3) 難しく工夫された問題の多くが、小学校高学年で取り組む「文章題」の基本概念がベースになっている。難しい概念を、子どもたちの生活や遊びにテーマを求め、形を変えて幼児向けに作り直している

(4) 在校生の学力の現状を分析し、今の子どもたちに欠けていると思われる点を、幼児向けに作り直して問いかけている

以上のような点を踏まえると、有効な難問対策が可能となります。逆に、こうした分析をしないままやみくもに過去問を解かせても、ばらばらなトレーニングになってしまい、効果的ではありません。特に(2)のような状況が出てくると、受験する学校の過去問対策だけでは不十分です。今まで出たこともない難問が、突然出てきてもおかしくありません。しかしその問題は、最近多くの学校で取り上げている、話題の新傾向の問題だったという場合も少なくありません。一つ具体例をあげてみましょう。

2011年度に行われた聖心女子学院初等科の入試で、次のような問題が出されました。

2011年度入試 聖心女子学院初等科 「言葉つなぎ」
 まず練習をしてみましょう。ここにかいてあるものの名前の最後から2番目の音ではじまる言葉を探しましょう。エンピツの最後から2番目は「ぴ」ですね。「ぴ」から始まる言葉はピアノなので、エンピツとピアノを線結びしてください。次にピアノの最後から2番目は「あ」なので、アヒルと線結び・・・というようにつなげていきます。
  • 右のお部屋にあるものを今練習したお約束で、できるだけ長くつないで、青で線結びしてください。はじまりはわかりません。使わないものもあります。

この問題が出てきた背景には、この学校では昔から「しりとり」をよく出していたということがあります。この問題は、その発展形だと考えられます。学校側も、子どもたちが「しりとり」と勘違いするかもしれないと懸念し、わざわざ練習問題をさせて問題の意図を伝えています。しかし、結果は予想した通り、「しりとり」と勘違いしてしまった子が大勢いたことが、その後の聞き取り調査でわかりました。それでも、翌年も必ず出されるだろうと考え、学校別の対策講座では、上から2番目でつなぐ練習や、真ん中の音でつなぐ練習を徹底して行いました。なぜなら、この学校は新しい問題が出されると必ず2~3年形を変えて同じ趣旨の問題が続けて出されているからです。しかしその予想は外れ、2012年度の入試では、また「しりとり」に戻ってしまいました。きっと、子どもたちが下から2番目の音で始まる言葉つなぎをしりとりと勘違いし、正解率が低かったからでしょう。しかし驚いたことに、私が予想し繰り返し練習した「上から2番目の音でつなぐ」問題や、「真ん中の音でつなぐ」問題が、他校で出されたのです。この波及の早さには、さすがに私も驚きました。この問題はその後も発展を続け、最初の音でつなぐ従来の「言葉づくり」にも発展形が現れ、真ん中の音をつなげた言葉づくりや、一番最後の音をつないで新しい言葉をつくる問題も出されています。

2013年度入試 光塩女子学院初等科 「言葉づくり」
  • 1番上のお部屋を見てください。右にかいてあるものの名前を、左にあるもののはじめの音を組み合わせて作ります。どれを使えばできますか。使うものにをつけてください。
  • 真ん中のお部屋を見てください。右にかいてあるものの名前を、左にあるものの真ん中の音を組み合わせて作ります。どれを使えばできますか。使うものにをつけてください。
  • 1番下のお部屋を見てください。右にかいてあるものの名前を、左にあるものの終わりの音を組み合わせて作ります。どれを使えばできますか。使うものにをつけてください。

2014年度入試 立教女学院小学校 「一音一文字」
  • 「とけい」とはじめの音が同じものを左から探して、をつけてください。
  • 「だるま」と終わりの音が同じものを左から探して、をつけてください。
  • 「トランプ」と3番目の音が同じものを左から探して、×をつけてください。
  • 「カマキリ」とはじめと終わりの音が同じものを左から探して、◎をつけてください。

こうして発展を続ける問題も、その基礎と言えば、私たちが小学校入試で取り上げられるずっと以前から幼児期の基礎的学習課題としてきた「一音一文字」の考え方に他なりません。「いくつの音でできているか」「どこに何の音がつくか」といった、基礎的事項の応用問題が最近たくさん出されているということです。

今回は「一音一文字」の考え方を使った工夫された問題を紹介しましたが、このような事例はまだたくさんあります。こうした分析を何もしないで、ただがむしゃらにペーパーをこなすトレーニングがいかに無駄なトレーニングか、お分かりいただけたと思います。毎日何十枚のペーパーをこなすことでなく、1枚1枚のペーパーを深く学習することで、まったく見たこともないペーパーが出されても、それまでの学習で身に付けた考え方を使って、自分の力で解いていくことができるのです。

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