ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

ホーチミンで「KUNOメソッド」の授業が始まります

第415号 2013/12/6(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月14日から6日間、ホーチミンを訪問してきました。4月・6月に引き続き、今年3回目の訪越になります。今回は、来年1月から本格的に始まる授業に先駆けて、発達診断テスト、模擬授業、教育セミナーを行ってきました。前回のレポートで紹介した「サイゴンアカデミー」と、日本人向け幼稚園である「みらい幼稚園」で行ってきました。特に今回は、みらい幼稚園の園長先生のご厚意により、15時以降の教室を使用させていただくことになり、みらい幼稚園でも、日本人を対象に「KUNOメソッド」による授業をさせていただくことになりました。

サイゴンアカデミーでは、1日目に約25名の子どもたちの発達診断テストを行い、2日目にその結果を説明するセミナーと、12名の年長児を対象としたモデル授業を行いました。保護者の方にも見学していただく形の公開授業です。1カ月間の研修を終えた、日本語を話すベトナム人教師による授業でした。子どもたちも保護者も初めての経験で、大変興味深く参加していただき、我々の考える教育内容と方法はしっかりと伝わったのではないかと思います。

また、11月17日の日曜日には、みらい幼稚園に、ベトナム在住で年中児および年長児を持つ保護者と子どもたちに集まっていただき、発達診断テストと「幼児期の基礎教育の在り方」についての講演会を行いました。40組ほどの親子によるテストとセミナーでした。日本人向けセミナーでは、日本の教育の現状と絡めて、なぜ幼児教育が大事かを具体的に伝えましたが、セミナー終了後、個別にたくさんの質問を受けました。その中には、「帰国したら小学校受験をしたいがどうすればよいか」、また「いずれは日本に帰るので、日本の子どもたちと一緒に学んでいける力をこちらでどのようにつけたらよいのか」などの相談があり、最後には、小学生クラスも開講してほしいと強く要望されました。国の成り立ちが違うため、日本人対象といえども許認可が必要で、日本のように民間の教育機関が自由に活動できるわけではないので、実現までには多くの課題をクリアしなければなりません。

これまで私は、香港・上海・韓国・バングラデシュなど、アジア諸国で、「KUNOメソッドによる幼児教育」の普及活動を行ってきましたが、それぞれの国の事情が異なるため、乗り越えなくてはならない課題がたくさんあることも事実です。ただ、こぐま会の実践が高く評価されていることは事実であり、来年は、ベトナムとインドで本格的な教室運営事業が始まる予定です。さまざまな国に行き、セミナーを通して現地の人々や教育の専門家と議論していく中で、日本の教育制度や、教育内容を外から眺める機会を与えられ、私自身にとっても良い勉強の機会になっています。その中で、「ガラパゴス化した日本の教育」を痛感し、それを一日も早く改革していかないと、アジア諸国からも後れを取ってしまうという危機感を持ち始めています。最近よく聞く「教育におけるグローバルスタンダード」。そのために、英語教育に力を入れようという動きがあり、その結果全て英語による授業を行うことなどが議論されていますが、どうも日本では、英語の授業を受けられるようになることが目的化されてしまっていて、中身の議論がされていません。しかし、海外の人たちはそうは考えていません。英語が使えるのは大前提であり、今必要なのは、「自分の考えを論理的にまとめあげる力や、他人の意見を聞いて議論できる力」だということです。そのために、幼児期から「教育投資」という考え方がしっかりできていて、受験があるから勉強させるのではなく、大学および卒業後の職業選択も含めた「生きる力」を身につけるために、幼児期からしっかりとした考えで教育を受けさせなくてはいけないと考えているようです。幼児期にしかできないこと、幼児期に行うからこそ意味のあることがあるはずだと考え、論理的な思考力を育てるために「KUNOメソッド」は有効だと捉えているようです。小学校受験があるわけでもないのに、なぜアジアの人たちが私たちの実践を評価し、熱い視線を送ってくれるのか。それは、20年後の社会を見据えた人材育成の在り方に対する考え方が、日本人とは全く違うということです。彼らの子どもに対する夢は、将来世界で通用する人間になってほしい、そしてそのために、海外の大学、とりわけアメリカやイギリスの有名大学に進学させたいということです。

日本の場合、高校は大学受験の予備校だと考え、大学は有名な日本企業に就職するために予備校化しています。その教育の現状を変えない限り、幼児期の意図的な教育は必要ないし、遊び保育で十分だという考え方は、多分変わっていかないでしょう。日本は成熟した社会だからこれでいいんだと考えているとすれば、教育においては、発展途上国からも後れを取っていくことだけは確かです。「ガラパゴス化した日本の教育」、とりわけ、考え方から根本的に変えていかなければならない幼児教育界において、私たちが果たさなければならない役割は、まだまだたくさんあるように思います。




PAGE TOP