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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

自分で考え、自分で問題を解決する力を

第388号 2013/5/17(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 秋の入試まで、残り半年足らずとなりました。こぐま会でも4月一杯で基礎段階の学習を終え、連休期間中に行った基礎学力の点検を踏まえて、5月から応用段階の学習に進んでいます。受験最大のヤマ場である「夏休み」の学習で最大限の効果が上がるよう、これから3カ月間、応用段階の学習を積み上げていきます。

昨年9月から開始した「セブンステップスカリキュラム」は、各領域ごとに、易しい課題から難しい課題へと螺旋型に内容を構成していますが、学ぶ内容の順序性だけでなく、学習方法にも、子どもの理解の道筋に合わせていろいろな工夫を凝らしてきました。なぜなら、最初からペーパーを使った教え込みの学習では、子どもに「考える力」は身につかないからです。それに代わり私たちは、考える力を育てる「3段階学習法」を実施してきました。それは、

1. 体を使った経験を通して日常体験を思い出させ、学習課題を意識させるとともに行動を通して問題を解決する方法を身につけさせる
2. 教具やカード教材を用意し、手を使った物事への働きかけを通して、答えに到達するまで試行錯誤させる。その経験を通して、考える力の基礎を養う
3. 身につけた思考法をチェックしたり、より発展させるために、ペーパーを使った学習を強化する

以上3つの段階を経験させることによって、学力の基礎をしっかり身につけさせます。現在は2の段階から3の段階に移行する時期ではありますが、理解できていない問題によっては、1の段階まで戻って学習する必要があります。

これまで行ってきている「診断テスト」の結果、4月以降学力が伸びている子がいる一方で、成績が落ちたり伸び悩んでいる子の多くは、家庭学習において、1と2の段階を飛び越して、3のペーパー学習だけに専念してきた子どもたちです。

つまり、自分で考え答えを導きだすことが必要な2の思考錯誤させる段階を飛び越して、ペーパー学習だけで問題の解き方を教え込んでも、考える力は身につきません。なぜなら、それは子どもが物事を理解していく道筋に合わないからです。子どもたちは、物事に働きかけて認識を深めていきます。自分で考えなければ何も解決しない状況に身を置くことによって、物事への働きかけが始まるのです。教え込まれた知識は、いずれ忘れていくことになります。ペーパー学習を中心とした教育法は、自分で考えるチャンスを与えず解き方のみを教え込んでいく方法に違いありません。これでは、論理的思考力など身につくはずもありません。受験対策は多くの場合、そうした指導で効果が上がると考えられている面がありますが、それは「メッキ教育」の典型であり事実に反しています。「自分で考えること」をしなかったら、新しい課題に対する解決手段を身につける事はできません。そこに、学校側が問題を工夫しようとする動機があり、本当に力のある子を求めている学校側が、新出問題を出してくる背景があるのです。これは、単に学力試験だけでなく、行動観察でも同じことです。初めての子どもたちの集まりの中で起こるさまざまな出来事に対し、問題解決のためには、自分で考え自分で行動しなければなりません。行動観察の対策講座に意味があるとすれば、その経験値を高めていくことにほかなりませんが、現在行われている対策の多くは、「こういう場合にはこうしなさい」「こういう課題が出たらこう対処しなさい」と解決法を徹底して教えこんでいく方法です。しかし、そんな機械的は問題解決法では、学校側にすぐに見抜かれてしまいます。だからこそ、「大人が好ましいと思う表現「型」を教え込むことだけは、絶対にしないでください」と受け入れる学校側が保護者にメッセージを送り続けているのです。

単純なことですが、「自分で考え、自分で問題を解決する」経験を学習においても、集団行動においても積ませ、自立した子どもを育てていかないと、入試だけでなく入学後に始まる教科学習においても問題が生じてくると思います。

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