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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

第9回 女子校合格フェアが始まりました

第385号 2013/4/26(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 4月後半の日曜日と、5月の連休を合わせて6日間にわたって行う「女子校合格フェア」が始まりました。今年で9回目のこのフェアには「間違った受験対策にならないように・・・」という、我々の想いが込められています。それは、

  1. 正確な入試情報を持って、冷静な判断をしていただきたい。
  2. 基礎段階の学習を終え、残り半年となった現在の子どもの学力を客観的に把握し、合格に向けたこれからの学習方針を、しっかり持っていただきたい。

この2点が、毎年この時期に「女子校合格フェア」を行う理由です。正確な入試情報の中で、特に大事な点は、学校側が作る入試問題の意図と、それに伴う評価の在り方をしっかり分析し、何をどこまで学習したら良いのかを明確にすることです。必要以上に難しい問題を与えて、子どもを追いこんでいる場合が多く見受けられるからです。また、これからは実際に出された過去問に取り組む時期ですが、その取り組み方を間違えると、自信をなくしたり、機械的な教え込みでパターン練習に陥ったりする場合が少なくありません。「考える力」を身につけるためには、どれだけの量のペーパーをこなしたかではなく、1枚のペーパーをどれだけ深く理解したかということが大事です。そのために、

1. 学校側の問題の意図をしっかり把握する
2. 子どもはどこでつまずくか、また何が難しいかを実際の学習を通してみてあげる
3. ぶつかっている壁を乗り越えるために、どんな練習をすれば効果的かを考え、実行する

こうした取り組みが必要です。ひとつひとつの学習で確実に力をつけるには、できてもできなくても、「なぜそのような答えになったのか」を、子ども自身に説明させることです。仮に正解していても、そのやり方では応用できないとか、間違ってはいるけど、あと一歩で正解にたどり着くところまできていて、決して間違った取り組み方ではない・・・といったような分析ができるはずです。その点を考えれば、1日何十枚というペーパーができるはずはありません。量をこなす学習から、思考の質を問う学習に転換しなければ、今の時代の工夫された入試問題には対応できません。

そんな想いを持ちながら、21日午前中の代表セミナーでは、以下のようなお話をさせていただきました。

「女子校合格に向けた正しいガイドライン」
- 何から始めてどこまですべきか -
1. 難関女子校10校の入試の現状
試験日・倍率・試験方法・合否判定・補欠合格者の動き

2. 女子校受験を考える場合の考慮すべき視点
A) 実力主義だが学力主義ではない
B) ペーパーだけでなく、行動観察も重視されている
C) 各学校の傾向だけでなく、全体として何が求められているかをしっかり把握するその意味で、雙葉・聖心の問題は必ず学習課題にすること
D) 併願対策で大事なことは、どんな学習方針を打ち立てるかである

3. 最近の入試問題の傾向
   どんな能力が求められているか
昨年度出された問題を分析することを通して、傾向を知る

4. 行動観察の課題
   行動観察で何が評価されているのか
A) 2013年度入試 10校の行動観察の内容
B) 慶應義塾横浜初等部 準備室長のメッセージをどう読むか

5. 合格に向けたこれからの学習対策
   過去問にどう取り組むか
典型的な問題を使っての具体的指導

この中で今回特に時間をかけてお伝えしたのは、昨年女子校10校で出された入試問題を、各校2~3問ずつ紹介し、学校側はどんな意図で出題したのか、それは過去出されていた問題とどのように関係があるのか、また子どもにとって何が難しいのか、それを解決するために、どのような学習を積めばよいのか・・・そうしたことを現場指導者の立場から解説し、家庭学習の取り組み方をお伝えしました。また、どの学校でも重視している「行動観察」の意図と内容を紹介し、教え込みの対策にならないよう、経験値を高めていくために何をすべきかをお伝えしました。その際、昨年秋に初めて入試を行った、慶應義塾横浜初等部の願書配布の際に配られた「横浜初等部の入学試験にあたって」の中で、子どもの個性を奪っている、今の受験産業の在り方に対する警告ともいえる大変貴重なメッセージも紹介し、ともかく「型」を教え込む受験対策になってはいけないことを強調しました。

「〔前略〕
 また、人間には様々な性格と個性があります。そして、それぞれに応じた行動様式があります。どうか子供のそれを大切にして欲しいと思います。例えば、一見、活発で、真っ先に行動する子供はその積極性は望ましいのですが、時に、じっくり考えたり、根気強く取り組む習性に乏しい場合があります。一方で、一見、積極性に欠けて反応が遅いと思われる子供の中にも、一人で一つのことに時間をかけて黙々と取り組む力を持った子供がいます。学校は、様々な性格と個性、そして行動様式の生徒が混在してこそ、魅力的な教育環境が作られると考えています。全てが同じような行動様式の生徒である学校ほど気味の悪いものはありません。子供一人一人が、その性格や個性が大切に育まれ、それに基づく行動が良い方向に発揮されるようになることが大切なのです。その意味からも、入学試験で望ましいとされる表現型を指導されているうちに、その子らしさを摘みとってしまい、不自然な接ぎ木のようにならないよう、心に留めて頂きたいと思います。」
(慶應義塾横浜初等部 2013年度学校説明会 配布資料『横浜初等部の入学試験に当たって』)


そして最後に、過去問を使って実際の学習の仕方をお伝えし、くれぐれも「間違った受験対策」にならないようお願いしました。

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