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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

KUNOメソッド普及の旅に

第367号 2012/12/7(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 12月2日夕方に羽田を立ち、香港とバングラデシュへ向かいました。「KUNOメソッド」の普及のために、香港とダッカで合計5回の講演会を開きました。12月3日は、香港の帝京幼稚園でそこで学ぶ保護者を対象に、日本の幼児教育の現状をお伝えし、日本に帰国しても困らないような学習を幼児期からどのように積み上げていったらよいかをお話ししました。
講演会終了後、多くの方から個別に相談を受けました。それぞれのご家庭の事情は違いますから、そのご家庭が今一番困っていることについて、専門家の立場から助言させていただきました。思考の武器としての言語をどう習得するか、帰国してからの日本の学校とのつなぎをどうするか。また、もし帰国して小学校を受験する場合、今何をやっておけばよいかなど、たくさんの質問を受けました。

12月4日、バングラデシュへ移動しました。3月に来て以来2回目の訪問となりますが、今回は、現地の幼稚園や学校を借りて共同で行う週末の授業について、その学校に通う保護者や担当する先生方に映像を使って詳しく伝えました。渋滞にはまり学校に到着するのが遅くなりましたが、校門から入るや否や、中庭で待っていた100名以上の保護者や子どもたちに拍手で迎えられ、びっくりしました。今年の1月から開校したという新設校ですが、皆さんとても教育熱心で、私の話を最後まで静かに聞いていただきました。この学校の理事長が「KUNOメソッド」に大変興味を持ち、「考える力」教育の重要性をしっかりと受け止めているようでした。

夕方からは、現在幼児教室として「KUNOメソッド」を実践しているカイトアカデミーにおいて、実際に通っている保護者や、これから入会を検討している保護者の方々を対象に、少し具体的に幼児期の教育の内容と方法をお伝えしました。バングラデシュには小学校受験はありませんが、かなり経済的に恵まれた富裕層の方々が、新しい発想の幼児教育に関心を持っているようでした。昔からある詰め込み式の教育では「考える力」は育たないと考えている方々にとっては、「事物教育」や「対話教育」は大変魅力的に映るようでした。3歳になる娘さんのお父さまからは、どのようなステップを踏んで教育していくのかと、具体的な質問を受けました。ラセン形教育プログラムを説明すると、大変納得された様子でした。相変わらずの渋滞で、宿泊ホテルから学校まで10キロもないところを車で1時間以上もかかる車の多さに、あらためて驚きました。

ダッカに来て3日目の12月6日は、イギリスのナショナルカリキュラムで幼児から高校生まで700名が通うというLakehead Grammer School において、幼稚園に通う保護者や校長先生、現場の教師たちに「KUNOメソッド」の内容を紹介しました。話の中でこぐま会で独自に制作した教具や教材を紹介すると、皆さんの目が輝き、講演会終了後、教具やテキストを手にとって、「今すぐに購入できないか」と何人もの保護者から相談されました。この国では、まだ幼児教育の学習素材がほとんど購入できないようで、家庭学習用に大変興味をもたれたようでした。

午後3時からは、BRAC Center Inn において、Institute of Child and Human Development 主催によるセミナーにて講演しました。このセミナーには、バングラデシュの幼児教育界の指導的立場にある大学研究者や実践者、また大きなNPO法人の責任者など錚々たるメンバーが参加していました。そこで1時間ほど「KUNOメソッド」の教育理念や指導内容を紹介しました。特に「教科前基礎教育」「事物教育」「対話教育」の3つの教育理念について関心が高く、多くの方々の賛同を得ることができました。研究者が大勢集まったセミナーでもあったせいか、講演会終了後のOpen Discussionにおいては、多くの質問を受け、白熱した議論が展開しました。私にとっても大変勉強になる討論会でした。講演会終了後参加者の1人から、ともかく私が「考える力教育」の普及のためにわざわざ日本から出向いたことに対し、感謝の言葉をいただきました。これから国家の方針として幼児教育の内容を作り上げていくという時期に、「KUNOメソッド」を紹介できたことは、私にとっても大変光栄なことだと思います。国家を担う人材は、幼児期の教育からしっかりとした方針を持って積み上げていかなくてはならないという、このセミナーの主催者であるマンズール博士の発言に、大変感動しました。40年間の実践で作り上げた「KUNOメソッド」がこの国に根付いてくれたら・・・という思いを胸に、沸騰するバングラデシュを後にし、帰国の途に就きました。


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