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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

理念なき受験教育は子どもの成長を阻害する

第357号 2012/9/28(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 年中児の皆さんが来年秋の受験に向けた準備をスタートする時期になりました。体験授業や入会相談が、この9月に入って急に増えています。大小含め、首都圏に500以上あるといわれる幼児教室の中から、1年間学び続ける教室を探さなくてはならないのですから、慎重にならざるをえません。その上で納得のいく教育機関を探したら、迷わず1年間通い続けることが大事です。途中で転塾するようなことがないように、最初の段階でしっかりと判断することが大事です。なぜなら、どの教育機関も主宰者の考えがあり、その方針に沿って頂点を目指す教育が行われているからです。合格という頂点に立つために、いろいろな登り方があってもかまわないと思いますが、残念ながら、2つの道を同時に登ることはできません。そんなことをすれば、子ども自身が何を信じて良いか迷うばかりです。小学校入試は唯一教科書のない入試ですから、カリキュラムも指導法もさまざまです。2つの道を登ることなど、到底できないはずです。しかし現実は、親の不安の表れなのか、方針の違う塾を2つも3つも掛け持ちすることが当たり前のようになっているようです。また、一方でその不安に便乗した商法がまかり通っているのも事実です。その手段に、模擬テストが使われているとしたら皆さんは驚くかもしれません。子どもの理解度を測り、日々の指導に反映されるはずの模擬テストが、親の不安をあおる道具に利用されているとしたら、言語道断だと言わざるをえません。会員には同じ問題を徹底して訓練し、成績上位に来るように仕組み、初めて受験する外部生にはとても太刀打ちできない難しい問題に映るようにし、その結果を踏まえて「こんな成績では合格できません。うちの講習会にいらっしゃい」というような霊感商法にも似た手口が、受験指導の世界で、それも幼児を対象とした教育機関で行われているとしたら、決して許すことはできません。模擬テストを1回受けただけで、合格者数にカウントしてしまうような・・・そんな常識外れの神経で、まともな教育などできるはずはありません。

私は、40年間受験指導の現場に立ってきましたが、最近の生徒獲得競争には、教育の論理を逸脱した、大変危険な兆候が見られます。こうした風潮が助長される背景には、残念ながら、入試の実態や子どもの成長発達に関して無関心な人たちが、「受験教育は特別な教育だ」と思わされている実態があるからです。しかし、小学校受験は特別な教育が必要なのではなく、幼稚園や保育園で、まともな教育がなされていないために、意図的な教育が特別な教育に映るだけです。小学校側が入試で求めている学力は、諸外国の幼稚園や保育園では、当たり前のように行われている基礎教育の中身です。私が、まともな教育でこそ入試対策をすべきだと繰り返し主張しているのは、理念なき教育は、時に子どもの成長を阻害することになると考えているからです。親も子どもも必死に取り組む受験教育だからこそ、しっかりとした理念に基づいた教育が必要です。合格と引き換えに失うものがあまりにも多い受験にならないよう、スタートの段階でしっかりとした判断をしてください。

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