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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

韓国の幼稚園がKUNOメソッドを導入へ

第354号 2012/9/7(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 8月31日より5日間、韓国を訪問してきました。今回の訪問は、韓国に作った合弁会社「KUNO KOREA」の設立記念講演会と、すでに1年前からKUNOメソッドカリキュラムを導入している幼稚園(ウルサン)での、授業見学と教師たちとの意見交換が主な目的でした。

3月と6月の訪問に続き今年3回目の訪韓でしたが、全国の営業組織を使って、KUNOメソッドのカリキュラムと教材を幼稚園に導入する動きも加速されてきたように感じました。来年3月から変わる小学校の教育課程に合わせて、幼稚園での教育内容も変えなければならない事情が韓国にはあり、これまでのプログラムに代わって導入すべきプログラムの検討に各幼稚園が入っているそうです。伝統的な教え込みの「注入教育」に代わる「考える力」を育てる教育プログラムを各幼稚園が求めているという状況で、その要求に一番応えられるのが、こぐま会で実践してきた「セブンステップスカリキュラム」を生みだしたKUNOメソッドであるということのようです。受験に関係なく、どの子にも必要な幼児期の基礎教育の内容として、私たちの実践が評価されたというわけです。韓国の保護者は、将来の大学受験の事を考え、幼児期から「考える力」を育成する教育を求めており、「計算さえできればそれで算数は安心だ」と考える日本の保護者とは違う視点を持っているようです。ですから、日本で流行る計算能力を高めるだけのプログラムにはほとんど関心を示さないようです。

来年3月から始まる小学校の算数は、「できるだけ生活に根差したテーマを取り上げ、具体物を使った楽しい算数の教科書づくりが基本」であると、教科書の編集委員をされているある大学の教授は話しており、その観点からして、こぐま会のプログラムは素晴らしいという評価を頂きました。その結果、彼と共著の形で、「KUNOメソッド」に関する実践書を韓国で出版することになりました。特に、幼児教育の現場にいる実践者・研究者に読んでもらおうという企画です。

また、1年ほど前から正課で「KUNOメソッド」を導入している、ウルサンのヘナラ幼稚園での授業は、数の構成の授業でした。こぐま会から提供した教材をもとに、我々が教育の方法として考えている3段階学習法、つまり、まず体を使い(集団授業)、次に手を使い(個別授業)そして最後にペーパー学習をするという手順を踏んで、45分の授業を組み立てていました。30名ほどの子どもたちを3人の先生でみるという、かなり厳しい条件での授業でしたが、子どもたちも良く集中し、これまでの授業もきちんと積み上げて来た印象を持ちました。この幼稚園の園長先生はこれまで2回来日し、私の授業を見学したり、懇親会で意見交換をしたりしてきました。特に韓国ではピアジェの理論を学んだ園長先生が多く、こぐま会のプログラムも、ピアジェの理論に相当影響を受けて作られていますのでわかり易いし、受け入れやすいようです。ただ、現場の先生方にとっては、使う教材を手作りしなくてはならないため、相当大変なようです。しかし、講演会に集まった多くの幼稚園の園長先生も、この幼稚園の実践に関心を示しているようで、私たちもこの幼稚園をモデル幼稚園として、韓国全土に「KUNOメソッド」を広めていこうと考えています。ウルサンはプサンの近くにある100万人規模の都市ですが、現代自動車の本拠地でもあり、韓国の中でも平均給与が高い地域のようです。その分、教育に対する期待も高いようで、私たちのプログラムに期待する保護者が多いようです。小学校の受験があるわけではありませんが、将来の大学入試に向けて、しっかりとした学力を身につけておきたいという要求は日本以上に強いようです。

30年かけて作り上げてきた「KUNOメソッド」が、この5年間で、韓国をはじめ、香港、上海、バングラデシュと海を渡り、評価されてきました。日本においても幼稚園や保育園に導入するための準備が始まっています。体力の限界を感じつつ、毎週8コマの授業をこなしながらの普及活動ですが、受験があるなしに関係なくこぐま会の基礎教育が評価されてきたことは、私たちの教育活動が単なる形だけの受験対策教育でなかったということの証であり、今後多くの方々の期待に応えるためにも、実践の場で新しい幼児教育のありかたを考え続けていかなくてはなりません。幼児教育の世界に飛び込んだ私の想いが少しずつですが、やっと実現し始めたように思います。

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