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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏季講習会でみられた、子どもの学力の現状(4)

第351号 2012/8/10(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 今回は、夏季講習会最終日の午前中に行われた「総合力完成講座」の子どもの取り組みの現状と課題を報告します。5日目の学習は次のような内容で行いました。

1. 回転推理
  • 回転テーブル
    回転テーブルを使って、2つのタイプの問題に答える
    (1) バナナがサルのところに来ると、ミカンは誰のところに来ますか?
    (2) ブドウがクマのところに来ると、ウサギのところに来るものは何ですか?


  • 回転位置移動
    小さい部屋に区切られた家を右や左に回した時、中に入っている形がどのようになっていくかを考える

2. ペーパートレーニング
「花子さんが海に行く」という長い話を聞いて、いろいろな問題に答える
(1) 家族関係の呼び方
(2) 数の増減
(3) ものの分け方
(4) 私は誰でしょう
(5) 重さくらべ
(6) 話の順序

3. 暗算トレーニング
数の複合問題を聞き、暗算練習機を使って答える
(例)公園で子どもが4人遊んでいました。そこにまた、3人の子どもが遊びに来ましたが、すぐに2人帰りました。今いる子どもたちに2個ずつ飴をあげたいと思いますが、今7個しかありません。あといくつ買ってくれば良いですか?

今回の授業内容に関し、子どもたちの取り組みの様子や、もう少し家庭で反復練習していただきたい点をお伝えします。

  • 回転テーブルで求められる考え方は、観覧車と全く同じです。進んだ数を数え、同じ方向に同じ数だけ移動させて解く場合と、逆回りに数えて答えを見つけ出す場合と、2つあります。「どこにつきますか」と「何がつきますか」の2つの問いかけの違いをしっかり踏まえ、答えを見つけ出さなくてはなりません。特に逆回りしなくてはならない場合に、なぜ逆回りで解くのか・・・その根拠をしっかりと把握させなくてはなりません。今回は、自分で作った回転盤を使って学習しましたが、観覧車も含め、回転が絡む課題は、実際に回転させてみるという経験に基づいて、考え方をしっかり身につけるようにしてください

  • 回転によって位置が変化する場合の問題は、まだまだ練習が必要です。回転する数にもよりますが、子どもにとって、回転した結果の位置移動は相当難しいようです。また、位置だけでなく、三角等は向きも変わる場合があるため、注意が必要です。最初に描き込む形の位置や向きが違ってしまったのでは、他のものの位置関係にも影響してきますので、まず最初の形を正確に描くことが大切です。そのためには、あるひとつの辺に着目することが重要になってきます。点から線への広がりによって、最初に描く形を正確に書くトレーニングが有効です

  • 長い話を聞いてすべての領域の問題を解く練習は、今回2回目です。「花子さんが海に行く」という話の中で、数の問題、私は誰でしょう、シーソーのつりあいなどの問題を解いていく問題です。従来の話の内容理解とは少し様子が違い、どんな領域からも問題は出てきます。「聞く」力を重んじた出題方法に慣れておく必要はあります

  • 今回のペーパーでは、家族関係の呼び方を質問しましたが、これは口頭試問でもよく出される内容です。「あなたのお母さんのお母さんから見て、あなたは何と言いますか」のような問題が実際に出されていますので、身近な家族関係を踏まえ、どのような呼び方があるか、一度整理しておく必要はあります

  • 置き換えを伴うシーソーのつりあいの問題は、8割方出来てきており、一度何かに置き換えて、関係を考えるという「交換」の問題などは、ぜひ関連付けて練習してください

  • 数に関する暗算は、相当多くの子どもたちが完成に近付いているように思います。今回のように、数の増減と一対多対応のような問題になると、まだまだ難しいところはありますが、数の増減における数の変化は、暗算でも十分対応できるようになりましたので、その後の一対多対応は、「1人分・2人分・・・・」とか「1台分・2台分・・・」というようにペーパー上で考えて答えを出せば、それでよいと思います

4回にわたり、夏季講習会で行った「総合力完成講座」で見られた子どもの学力の現状をお伝えしました。入試まで残りわずかという夏の時期ですから、どうしても問題が難しくなりますが、子どもたちも5日間よくがんばりました。全体としてまだ理解が不十分なところや、個別に理解の不十分なところもありました。しかし、まったく理解できていないのではなく、あと一歩のところで丸がもらえない子が大勢いるのがわかります。そのあと一歩を、この夏にぜひ克服してください。新出問題になればなるほど、設問の意図の聞き取りや問題の理解に大きな差が出ています。問題ごとに解き方を記憶させてしまうような学習では、現在の入試には対応できません。「考える力」の育成は、学習の仕方と大いに関係があります。パターン化した教えこみにならないよう、子どもの成長を信じ、じっくり構えて前進してください。

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