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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

新ブランド「100てんキッズ」立ち上げに込めた想い

第343号 2012/6/15(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 こぐま会は、このたび(株)幻冬舎エデュケーションと共同で、新ブランド「100てんキッズ」を立ち上げ、6月7日に記者発表を行いました。当面は、受験に絡まない質の高い幼児教材を共同で開発し、販売していく予定です。「100てんキッズ」を通し、私自身が40年間実践の現場で培ってきた幼児期における基礎教育の在り方を、教材・教具に結晶させ、1人でも多くの子どもたちが楽しく学習できる環境を整えていきたいと考えています。

来年4月で創立30周年を迎える「こぐま会」は、設立当初から「教科前基礎教育」「事物教育」「対話教育」の理念を掲げ、幼児期の基礎教育の在り方を実践を通して追究してきました。民間の教育機関が成り立っていくためには、そこに通う「保護者」の皆さんの教育要求に応えていくことが要求され、現実的な課題として「幼稚園受験」や「小学校受験」の準備教育にも応えてきました。しかし、受験の準備教育のためだけに設立した教室ではありませんので、基礎教育と受験教育の在り方をめぐり、葛藤した時代もありました。それは、入試で出される問題が「知能検査的」な問題、もっと言えば、トレーニングによって片付く問題が主流になっていた時代です。基礎教育と受験教育のギャップに現場の我々も相当悩みました。ですから、その当時は「基礎教育」と「受験教育」の二本柱でしのいできました。しかし幸いなことに、過度な準備教育に不適応を起こす子どもたちが増え、臨床心理の現場から警告が発せられると、小学校側も出題する問題を工夫しはじめ、今では、私たちが幼児期のうちにどうしても解決しておかなければならないと考える課題の多くを、小学校受験で問う傾向が強まってきました。ですから、「基礎教育」を徹底することが、即「受験準備の教育」になってきています。その結果、受験準備のための教育も、幼児期の基礎教育も、同じ考え方で取り組むことができるようになりました。まともな幼児教育で「考える力」を身につけることが受験にとっても大事であることは、入試問題を分析すれば誰にでもわかることです。

教室で使うオリジナル教材と家庭用教材を開発して使用していたところ、多くの受験生から家庭用教材を譲ってくれという要求があり、狭い受付で直接手渡して販売していた時代がありました。その後口コミで広まり、渋谷の大盛堂書店の担当者の方が私のところにみえ、「どうしても、学参でこぐま会の教材を扱いたい」と相談を受けました。何度もお断りしたのですが、「こぐま会の教材を大勢の皆さんに使ってもらいたい」と語るその熱心さに心を動かされ、大盛堂書店に「直接取引」で扱ってもらうことにしました。これが、こぐま会が問題集や出版物を外に出すきっかけになった最初の取引です。今や全国176店舗の書店の棚にこぐま会の教材が並んでいますが、すべて直取引で行っており、出版物の取引の新しい形として評価されています。

こうして、教室に通う子どもたちだけでなく、全国の子どもたちに幼児期の学習教材として使用していただいていますが、その中でも私が考案した「100冊の単元別問題集」(ひとりでとっくんシリーズ)が大ヒットし、今では幼児教育の教科書代わりになっています。このシリーズの制作に18年間を要したのは、1枚1枚実践の現場で検証し、修正を繰り返して作ってきたからに他なりません。ただ、受験に絡む教材ですから、どうしても年長中心の教材開発になりがちでしたが、今後は、3歳から小学校2年生までを対象とした「幼小一貫教育」の理念に基づいた教材が必要だと考えています。受験のあるなしに関係なく、幼児期の基礎教育としてすべての子どもたちに使っていただきたい教材を、今回新しく立ちあげた新ブランド「100てんキッズ」でシリーズ化していこうと考えています。

従来のワークブックや通信教材と違うのは、到達目標を明確に持った教室での実践活動をベースに開発する教材だということです。子どもたちの反応や理解度も確かめないで作られている教材が何と多いことでしょう。それは、教え込めば良いと考えているからに他なりません。幼児期の教育であればある程、教え込みの教育では何も身につきません。遊びや生活を土台に、思考の道筋にあった教材でなければなりません。幸い私たちは、教室での実践活動がその土台にあり、子どもの目線に立って、何が難しいのか、どうすれば高い壁が乗り越えられるのか、それが手に取るようにわかる場所に身をおいています。そうした私たちだからこそはじめてできる「教材・教具」の開発があるはずだ・・・そう考えて共同で立ち上げたのが、「100てんキッズ」です。これから、私自身の40年間の実践を総括して作成する「幼小一貫教材」をお届けしますので、ぜひご期待ください。

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