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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試速報(1) 「考える力をどう身につけるか」

第315号 2011/11/11(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 都内の私立小学校の合格発表もほとんど終わり、国立の入試を待つばかりとなりました。「今年の入試がどのように行われたか」をさまざまな観点から分析し、来期の受験指導に生かしていかなくてはなりません。情報が何も開示されない小学校入試の実態を明らかにするために、10月下旬に行われた面接試験を皮切りに、試験問題の聞き取り調査を集中的に行ってきました。その結果、ほとんどの学校の入試問題を把握できました。今年も学校によっては大きな変化が見られましたが、その変化の具体的中味は、これから行うさまざまなセミナーにおいてお伝えすることにします。

今年の入試の最大関心事は、震災後の最初の入試であることを踏まえ、出願者数がどのように変化するか、また合否判定において、通学時間がどれだけ重視されるかということでした。実際3月11日の震災当日、帰宅できず学校に留まらざるを得なかった子どもたちも少なからずいたようです。学校説明会の際に、「緊急時すぐに迎えに来ることができないご家庭〈お母さんが仕事を持っている場合〉はご遠慮していただきたい」というような趣旨の発言をした学校もあったようです。そして、出願する保護者の間にも、あまり遠くには通わせたくないという考えが広がっていたのも事実です。その結果として、それぞれの学校の出願者数は昨年と比べ、軒並み減少しているようです。しかし、これは必ずしも震災の影響だけではありません。2007年度をピークに私立小学校の志願者が減っていましたが、今回の震災がその流れをより加速した感じです。前年対比で100名以上出願者が減った学校もあるようです。また、出願はしたものの2校3校の試験日が重なり、欠席者が目立つ学校も多かったようです。名目上の倍率が下がり、なおかつ試験当日欠席者が目立ったとなると、一体実質倍率はどれくらいになったのか。学校側にとっても深刻な数字であったのではないかと思われます。

さて、実際に出された問題を見ての第一印象は「全体的に易しくなった」ということです。また、ペーパー試験の結果だけで合否が決まらない小学校入試の現実を改めて強く感じた年でもありました。その意味で、合否判定がどうなされたか・・・その不鮮明さはますます助長されたように思います。一方で工夫された問題が多く見られたのも今年の特徴かもしれません。問題の傾向は私たちが予想したとおりですが、学校側が如何に工夫した問題を出しているのかがよくわかります。例えば次の問題を見てください。

1. 「言葉つなぎ」
絵にかいてあるものの真ん中の音を使って、しりとりのように青い線でつないでください。

2. 「図形構成」
4枚の真四角のパズルをマスの中に置いて、上のような形を作りました。これからこの4枚のパズルを使って、別の形を作ろうと思います。ただしパズルは、必ず線のところをぴったりくっつけて置きます。角をくっつける置き方はしないでください。
  • どのような置き方が考えられますか。下のマスの中にその形をかいてください。

- 解答例 -
※鏡映、回転を含んでいません。

1.の問題は昨年、聖心女子学院初等科で出された次の問題と類似しています。

「言葉つなぎ」 (2011年度入試 聖心女子学院初等科)
<練習問題>
 まず練習をしてみましょう。ここにかいてあるものの名前の最後から2番目の音ではじまる言葉を探しましょう。エンピツの最後から2番目は「ぴ」ですね。「ぴ」から始まる言葉はピアノなので、エンピツとピアノを線結びしてください。次にピアノの最後から2番目は「あ」なので、アヒルと線結び・・・というようにつなげていきます。

  • 右のお部屋にあるものを今練習したお約束で、できるだけ長くつないで、青で線結びしてください。はじまりはわかりません。使わないものもあります。


2.の問題は、小学校算数でよく出てくる「テトロミノ」という問題です。

「テトロミノ」をつくろう
正方形を4つ辺どうしつなげた形をテトロミノと呼んでいます。
テトロミノは全部で何種類ありますか。さがしてみましょう。

- 解答 -
全部で5種類

細水保宏(2006) 「頭スッキリ!算数脳トレーニング (赤版)」
東洋館出版社 pp.93-94

ある学校で出された問題が他校に波及し、違う形で出されたり、小学校算数で扱う問題がそのまま出されたり・・・・と、最近の問題は機械的なトレーニングでは決してできない問題が数多く出されています。要するに一言で言えば、「考える力」を求めているのです。こんな時代に、教え込みの教育がどれほど意味を持つのか、誰が見ても明らかです。どれだけたくさんの量のペーパーをこなしたかではなく、どれだけ深く理解したかということが重視される入試になったということです。それは同時に、まったく初めての問題に接した時、問題の意図をどれだけ正確にキャッチできるかどうかということでもあります。教え込まれ、訓練された能力では、決して解決できない問題が増えているという事をしっかり把握し、そのためにどのような学習を心がけたらよいのかを考えるべき時です。私たちが幼児期の基礎教育として実践してきた「事物教育」と「対話教育」が、実は入試対策でも一番有効な方法であるということが、証明された入試でもありました。過去問を何の実体験もないまま、ペーパーでやらせるという方法が、いかに現在の入試対策として不適切か・・・・その点をまずしっかりと肝に銘じておいてください。

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