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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

良好な母子関係を

第298号 2011/6/24(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年11月から始めた連続講座は6月23日で第19回目を迎え、「夏の活用法」と題して夏休みにおける学習法を具体的にお伝えしました。いつもより倍近い60名の会員、一般の方々にお集まりいただきましたが、この「夏の過ごし方」が受験生の皆さんにとって今、最大の関心事であることがわかります。「夏を制する者が受験を制する」とよく言われます。しかし、問題は「どう、制するか」であり、やみくもに勉強漬けにすれば良いというわけではありません。自分の意志というより、どちらかといえば親の意思でコントロールされる幼児の受験ですから、親の認識が間違っていればとんでもなく間違った方向に進んでしまう危険性があります。その意味で夏は飛躍の時期でありながら、実はやり方次第では大きな落とし穴が待ち受けているという認識が必要です。

合格カレンダー連続講座 第19回
「夏休みの活用法」
1. 受験生にとって「夏」の意味
2. 学力点検法
(ア) 基礎学力点検ボードの活用法
(イ) 過去問を使った応用力の点検
3. 領域別学力チェック点検項目
4. 夏の学習計画を立てるにあたって
(ア) 目標を立てて、達成感を伝えることの意味  がんばり表(夏のがんばりじま)の活用法
(イ) 一日の生活表と学習時間を編み出す工夫
5. 夏以降見られる子どものマイナス変化を未然に防ぐ
6. 一番良い状態で入試本番を迎えるために
 入試直前までの学習の組み立て

秋の入試に向けた1年間の準備期間の中で、この夏はどのような意味があるのでしょうか。受験される皆さんは、これまで半年以上にわたって学習を積み上げてきたはずですが、少なくとも現段階で基礎学習は終え、応用段階の学習を進めているはずです。こぐま会の1年間の学習計画では、5月連休前までに「基礎学力」を固め、7月後半の夏休み前までに「応用段階」の学習を終了することになっています。それから迎える夏休みですから、やるべきことはおのずから決まってきます。

  1. 基礎学力がしっかり身についているかどうかをあらゆる観点から確認する
  2. 応用問題、過去問・難問・予想問題など、難しい問題に挑戦する
  3. お泊り保育など夏の特別な経験によって自立心が一段と育つ時期であるため、普段できない経験を積極的に行う
  4. 野外活動などを経験することによって、理科的および社会的常識問題の理解をより深める

これまでの学習の理解度をチェックするとともに、これから入試本番まで続く一番大事な直前対策の学習をスタートさせなくてはなりません。一番良い状態で11月の入試を迎えるために、ひとりひとりの子どもにとって、一番効果的な学習計画を立てなくてはなりません。その際気をつけなくてはならないのは、夏の頑張りが必ずしもプラスに働かない場合があるということです。毎年、9月・10月の入試直前になって、いろいろな問題を抱えこんでしまったり、潜在的にあった問題が顕在化する場合が少なくありません。

(1)学習意欲をなくす
(2)自信をなくし、自分で考えようとしない
(3)完璧さを求め、できない事実を自分で受け入れられない
(4)相当プレッシャーがかかり、特に評価を気にするようになる
(5)その結果、チック症状がみられたり、お手洗いに行く回数が増えたり、これまでなかったおねしょが始まったりする

こうした問題の多くは、学習面における母子関係がうまくいかなかった時に頻繁に起こります。母親がわが子を他人と比較する競争意識が働いて、我が子の成長を見失ったときに起こる現象です。子どもの試験でありながら、親同士の競争に変質した時、さまざまな問題が起こります。その最大の被害者はもちろん子ども自身です。

(1)ペーパーは毎日50枚以上させなくてはだめ
(2)模擬テストで90点以上取らなくては、受験資格がない
(3)Bさんの家では、すでにこんな難しい問題をやっている

あげたらきりがありませんが、わが子を他人と比較する母親の競争意識が、教え込みの学習に走らせ、時間をかけた割には効果が上がらない学習になってしまいます。その結果、論理的に考えなくてはいけない問題や、初めて見る問題に全然手がつかない・・・というような深刻な問題に直面してしまいます。

子どもの成長のテンポはひとりひとり違います。夏の経験は、特に月齢の低いお子さまにとって飛躍のチャンスです。その成長の違いを踏まえない他人との比較は、子どもの教育にとってあまり好ましいことではありません。ゴールに行きつくまでの道のりはひとりひとり違います。その成長のプロセスを温かく見守り、評価してあげる姿勢が母親にあれば、深刻な問題は生まれません。その意味で、小学校入試は母親が試される入試でもあるのです。間違った情報や噂話から子どもを守るのは、お母さん自身であることをしっかり受け止めてください。

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