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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

物まねは、オリジナルなものを超えられない

第245号 2010/5/28(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 教科書もなく、入試情報が開示されない「小学校受験」において合格を勝ち取るためには、正確な入試情報をどのように得るのかがまず問題です。私たちは過去25年以上にわたり、毎年受験した子どもたちから聞き取り調査をし、入試の実態を明らかにしてきました。聞き取り調査したものを「入試資料集」としてまとめ、出版してきました。今年は家庭学習での使いやすさも考慮し、「教室指導者からのメッセージ」(「合格対策2011年度」)として、新しい形の資料集としてまとめました。また、それと連動させた10年間の過去問をペーパー化し(「過去問とっくん」)、正確な入試情報をもとにした過去問作りに徹してきました。こうした仕事ができるのも「入試情報センター」と「教材開発部」を組織として抱えているからです。また、そこに在籍する職員の多くが現場指導にも携わった経験を持っています。子どもが物事をどのように理解していくかを現場指導での経験で熟知した者が、入試問題を分析したり、聞き取った問題をペーパーに再現しているのです。こぐま会は入試資料や教材の出版が多いため、地方の方々は「こぐま会」を出版社と勘違いしているようですが、実態はそうではありません。こぐま会は教室運営を軸とし、現場指導を大切にする発想で、資料作りも問題集作りも行ってきました。「入試対策であっても、教育の原則だけは曲げない」という強い信念で取り組んできました。

こうして生み出してきたこぐま会の財産を、簡単に盗みとろうとしている人たちが日本にも大勢いるということを知って、少しびっくりしています。まあ当然といえば当然かも知れませんが・・・・。例えば、ひとりでとっくんシリーズをまねた問題集。私はそうした問題集がどのように作られているのか知っています。また、私たちが現場で積み上げてきた教育理念を、さも自分が開発したかのように書物等で語っている者もいます。今は、市民権を得た「事物教育」の実践も、当初は「そんな簡単なもので入試対策になるのか」と言われたほどです。しかしどうでしょう。今や「ペーパーを先行させた訓練をやっています」・・・と言っているところはどこにもありません。それだけ浸透したといえばその通りで、子どもたちの立場に立つとうれしいことですが・・・。また、私たちが開発した教材をコピーし、体裁を整えて「自分が開発した」と言って、教室に通う生徒に販売した有名な塾もあります。こうした情報が私のところになぜか自然に入ってくるということも不思議なことで、知的財産を簡単に盗む者を許さない「正義の味方」がいるということも、また事実です。

しかし、どんなにノウハウを簡単に盗もうと、コストがかかっていないだけにオリジナルなものを超える理論や教具・教材が現れないのもまた真実です。教育現場に密着したモノづくりでないだけに、新しい物が生まれてくるはずもありません。物まねは物まねで終わり、オリジナルなものにはなりえないのです。指導の現場を大事にし、長い時間をかけて開発したものを簡単に盗み取り、それで商売をしようとしている者がこのお受験業界にたくさんいる、ということを知っておいてください。何が本物で何が偽物か、それを見抜くのもご両親の責任だと思います。

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