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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

間違った受験対策に陥らないための10のアドバイス

第233号 2010/2/19(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 先日父親を対象に行った「第9回ひまわり会連続講座」において、私がお伝えした「間違った受験対策に陥らないための10のアドバイス」をご紹介します。学校選択・学習法・父親の役割等についてこれまでの指導経験に基づき、大切だと思われる点を述べたものです。

1. 正確な入試情報を集める
小学校入試ほど情報が閉ざされている入試はありません。学校側から情報がほとんど開示されないにもかかわらず、学力のみで合否が決まらないなど不透明な入試です。そこにコネの問題等も絡み、合否判定の方法がわかりにくいのが実態です。私たちはそうした状況の中で、試験を受けた子どもたちや保護者からの聞き取り調査を25年以上にわたって続け、入試の実態を受験生の皆さんにできるだけ正確に伝える努力をしてきました。しかし商業主義に満ちた生徒獲得競争の中で、情報そのものが捏造され、間違った情報、根も葉もない噂話が蔓延しています。合格者数のカウント方法や模擬テストの問題等を見れば明らかです。そうした情報で間違った受験対策に陥らないためにも、「正確な入試情報」が必要です。

2. なぜ小学校受験をさせるのかについて考え方を一致させておく
「なぜ小学校入試をさせるのか」についての明確な答えを持つことが、正しい入試対策の前提になります。近くの学校には行かせたくないという消極的な理由ではなく、どうしてもこの学校で学ばせたいという積極的な意思を持つことが大事です。特に父親と母親の受験に対する考えに隔たりがあると、一貫した受験対策がとれず、落ち着いた環境で学習を徹底することができません。

3. 希望する学校の教育方針をしっかり理解する
それぞれの学校には、明確な教育方針があります。この方針を理解しないで世間的な評価だけで学校を決めてしまうと、入学後に問題が生じます。特にご家庭の方針で、自主性を重んじ、自由でのびのび育ってきた子が女子校の厳しい教育環境に馴染めず、入学後に登校拒否を起こし、相談を受けたことが何回もあります。また、志望する学校の教育方針をしっかり理解しないと、願書や面接試験でもチェックされます。学校の説明会等に足を運び、教育方針をしっかり理解して受験してください。

4. 併願校対策のためにも、基礎をしっかり身につけること
どんなに学力があっても、それだけで合格は保証されません。そこが中学入試以降の試験と違う点です。どの学校でもよいというわけではありませんが、納得のいく学校であれば、複数校受験されるのがよいと思います。その場合、学習方針をどうするかという問題が生じます。それは学校ごとに入試問題の傾向が違うからです。ペーパー試験があるのかないのか、という試験の方法だけでなく、数の問題が中心になる学校もあれば、数の問題がまったく出ない学校もあります。また、基本的な問題のため満点主義の学校もあれば、かなり難しい問題を出す学校もあります。課題が与えられる行動観察なのか、自由遊びが中心の行動観察なのか、学校によって入試傾向がはっきりしています。第1志望の学校と第2・第3志望の学校の入試傾向が違った場合、どうするか。すべての学校の過去問を横並びにして、系統性もなく学習するという考え方では力は付きません。入試における基礎は何か、応用は何かをしっかり把握し、すべての学校に共通する課題をまず学習してから、それぞれの学校の過去問に当たることが大事です。過去問トレーニングだけの学習では、小学校受験に共通する基礎学力が身につきません。入試に出た、出ないで学習内容を決めるのではなく、幼児期の基礎教育をまずしっかり行うことが、遠回りのようでも併願校対策になるのです。その基礎の上にそれぞれの学校の入試傾向を重ね合わせて、学習方針を立てるのが正しい受験法です。教科書のない入試であることが過去問トレーニングだけに偏る「間違った入試対策」に陥る最大の原因です。

5. 学力を高めるだけでは合格できない
「先生、この学力でどこの学校に合格できますか」模擬テストが終わると必ず受ける質問です。入試において学力も大事な要素です。しかし、小学校入試はペーパー試験に象徴される学力だけでは合格はできませんし、点数の高い - 低いで受ける学校を決めるようでは、その時点でもうアウトです。中高入試であれば、模擬テストの点数で受験する学校の割り振りはできますが、小学校入試にはその発想は当てはまりません。願書・面接・行動観察といったように、学力試験以外にも大事な要素がたくさんあります。そうした、視点の違うさまざまなテストにおける総合点で合格が決まっていきます。学力だけ高めればどこにでも合格できるという発想を捨てないと、大事なものを見失ってしまいます。特に集団活動の大切さが最近の入試ではっきりしてきました。実力主義ではあるけれども学力主義ではない、ということをしっかり理解しておく必要があります。

6. 入試終了後にも意味のある、まともな幼児教育を実践する
現在の入試問題は、以前のように「知能テスト」の問題ではありません。ましてやペーパーを20枚も30枚も課すわけではありません。訓練によって身につく力を求めているのではなく、ひとつひとつの問題が工夫され、5~6枚の少ないペーパーで「考える力」が求められています。ですから、過去問を繰り返しトレーニングし、解き方を教え込む方法では今の入試には対応できません。与えられた問題の意図を理解し、自分の頭で解き方を工夫し解決していかなければできない問題が増えています。ペーパー以外にも、行動観察が重視され、集団活動での個人のかかわり方を観察されています。ですから、入試においては年齢にふさわしい発達を遂げているかがあらゆる観点でチェックされているのです。ある小学校の入試案内に「子育ての総決算としての入試を」と書かれていたように、まともな幼児教育の結果として入試に臨むことが大事です。学習についても、受験が終わったらすべて終わりではなく、将来の教科学習の基礎をしっかり身につけるような、まともな内容とまともな方法ですべきです。入試のための勉強の結果、勉強嫌いな子をつくったら、何のための入試かということにもなりかねません。入試対策は特別な訓練ではありません。まともな幼児教育こそがいま、入試で求められているのです。後に続く学習をしなくてはいけません。

7. ペーパーを先行した学習では合格できない
子どもの考える力や論理的思考力は、ぺーパーを先行させた学習では身につきません。そもそも認識能力は物事に働きかける経験があって初めて身につくものです。何の事物経験もないまま、ペーパー学習で教え込まれても、2か月も経てばすぐに忘れてしまいます。現在の入試問題は相当工夫され、単純な訓練で解ける問題はほとんどありません。ですから、ペーパーによる過去問トレーニングでは絶対に合格できません。現在の入試においては、「同じ趣旨の問題」は出ても「同じ問題」が出ることはありません。考える力は、事物に働きかけ試行錯誤を通して身についていくものです。その上でのペーパートレーニングこそ、応用力を身につけるために意味があるのです。

8. 常に答えの根拠を求める
考える力を育てるためには、子ども自ら発見し、理解していくことが大事です。子どもが本当に理解しているかどうかを確かめる簡単な方法は、答えの根拠を説明させることです。そうすると、まったく理解できていないのに、正しい答えを出している場合もあることがわかります。教えられたとおりに解けばできてしまうからです。解らなくてもできてしまう、これが幼児にはよく見られます。記憶力がとても優れた時期ですから、解き方をたたきこめばできてしまうのです。しかし、本当に理解していないと説明はできません。挙句の果て「お母さんがそう教えてくれたから・・・」となってしまうのです。それでは、応用する力は身につきませんし、初めての問題はお手上げです。本当に解ってできてほしい。そのためには、常に答えの根拠を求めることが大事です。できていても、できていなくても同じように聞いてあげてください。不正解の場合も、どこで間違えているかが手に取るようにわかるからです。

9. 父親も子育ての現場に身を置くこと
だいぶ以前の面接は、母親には子育てのこと、父親には世の中で話題になっている社会問題のことを聞くという形式ができ上がっていましたが、現在の面接は違います。父親に対する質問例を見ればわかるとおり、実際に子育てに参加していないと答えられない質問が数多く出題されています。「お父さん、今幼稚園でどんな遊びが流行っているか知っていますか」・・・・・日常子どもと接する機会が少ないお父さんには、「日本の子どもたちの学力が低下しているといわれていますが、その点をどう思いますか」・・・という質問よりむずかしいかもしれません。つまり、子育てにどれだけ参加しているのかを問う問題が増えているのです。入試は家族一丸になって対策を取らないと合格できません。学習面も含めて、お父さん自らが子育ての現場にかかわらないとだめです。昔と違い、母親任せの受験では合格は勝ち取れません。

10. 父親と母親の役割分担をしっかりする
合格した方々の体験談をお聞きすると、父親と母親の役割をしっかり決めて1年間の受験対策にのぞんできたご家庭が多いようです。家族一丸となっての対策といっても、父親のかかわれる時間には限りがあります。そうした状況下で、父親の役割としてまず大事なことは、「母子関係」がうまくいくための調整役を担うということです。母子関係はお互いに感情的になりやすく、時には、子どもが学習そのものを放棄することもあります。だからといって、すべてをお父さんが担うわけにはいきません。問題は、良好な母子関係を築くためにどうするかということです。子どもへの対応だけでなく、お母さんのイライラを解消する手だてを工夫すべきです。多くの場合、噂話で右往左往する母親が目立ちます。ご家庭の方針をしっかり立て、その方針のもとで冷静に、そして自信を持って「我が家の戦略」をつくり上げることです。母親の精神的な安定のためにサポート役を担うこと・・・これが父親の役割として一番大事なことかも知れません。

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